死にたがりな悪役令嬢

白湯

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〜*第2話-6*〜

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 それからは本当に仕事では今までと変わりない対応で、先輩・後輩として過ごした。
 ただ定期的にご飯に行く回数が増え、その度に可愛い、や、好きだと伝えてくれるようになった。

 いつかは諦めてくれるだろうと思っていたが、そんな日々がなんと2年も続いたのだ。今日はまたいつもの居酒屋で、定期的な二人きりの食事をする日。

*

*

「今日も神崎は可愛いねぇ、好きだよ」
 ほろ酔いの神谷さんに、いつものように告白される。

 いや、もうこれはほぼ口癖なのでは

 最初こそ戸惑いはしたが、言われる度に私の心にどんどん蓄積されて、幸せだと思うようになった。ーーこれだけ想われて、、絆されない人間なんてきっといないだろう。

「……神谷さん」
「んー?どうしたぁ?」

 ニコニコしながらツマミを食べる姿すら、可愛く思えてきた私もきっと末期だ。

「私も…神谷さんが好きですよ」
「…………は??」

 私のその言葉に、食べようとしたつまみを皿に落とす
 そして石のように固まってしまった。

「神谷さんの事が私も好きなんです。私と付き合ってくれませんか?…駄目ですか?」

 好きだと、言ってくれたがやっぱり待たせすぎたのでは?と若干心配になり、あれこれ考え込んで居ると、目の前の人物がポロポロと涙を流し始める。

「……あ、これは夢か…そうだよな…告白してこの間2年経ったし…ついこんな妄想を…」
「ちょっ、神谷さん!夢じゃないです。妄想でもないです!現実です!……夢にしないで下さい」

 その言葉に、もう完璧に酔いが覚めたのか、立ち上がったと思うと私の隣に移動して来た。

「本当…なのか?」

 その泣き顔に、胸がギュウッと締め付けられる。
 ハンカチを取り出し隣に座る神谷さんの涙を拭う。

「…こんな嘘吐くわけないじゃないですか」

 その言葉に私に腕を伸ばすが、急いで引っ込める。ーーどうしたのだろうか?

「神崎…抱き締めても良いか?」

 あぁ、この人はどこまでも私を優先してくれる

「勿論ですよ」

 私から神谷さんを抱き締め、その後苦しいくらいに抱き締め返される。

「本当に夢みたいだ…神崎…愛してる」
「私もです…。愛してます」

 もうこの人には、触れられる事に嫌悪感なんてなかった。
 陽だまりに包まれているような、そんな多幸感から私からも涙が頬を伝う


 それからは普通の恋人のように時間をみつけてはデートを重ねていった。そして数ヶ月後、付き合って居れば必ず訪れる、夜の営みの時間。今までも手を繋いだりキスをしたり、まったく嫌悪感なく受け入れられた。
 奏汰となら…とデート終わりに彼の自宅に向かう。


ーーだけど、そんな甘い考えは一瞬でひっくり返された

 服を脱がされようとした瞬間に、一瞬であの光景がフラッシュバックしてきてガタガタと身体が震える。そんな異変に気付いたのか、手を止め子供をあやす様に抱き締められる。

 こんなに好きなのに、奏汰とならと思えるのに心がどうしても拒絶してしまう。
 ……あの事実を知られて軽蔑されたら?付き合ってからはそんな事ばかり考える。


「菜々美、大丈夫だ、急がなくていいよ。付き合うまで何年でも待つつもりだったんだ。こうやって側にいて、抱き締められるだけでも幸せだよ」
「……ッッ、好き…なのに」

 奏汰の服に子供のようにしがみつく。実際きっと何年でも待ってくれるだろう。
 ……でもこれはフェアじゃない。抱いたあと知られて後悔されるより、今伝えた方がいいのではないか?

 振られたら、また1人に戻るだけだ

「……奏汰…貴方に話したい事があるの」



 それからは嗚咽混じりだったと思うけど、今までの経緯を話した。どうして人間不信に、主に男性不信になったのか…義弟の事、学校の事、全て話し終えた。

ーー捨てられるかな、気持ち悪いって言われるかな

 振り払われたら悲しくなるから、しがみつく手を緩めると、離れさせないようにかキツく抱きしめられた。

「…ありがとう。話してくれて…」

 奏汰の声が震えている。顔は見えないが泣いているのが分かる。

「そんな怖い思いしたのに、、馬鹿だな。身体の繋がりなんて些細な事だよ。本当にしたいと思えた時教えてくれたらいいから」
「うん…うん…ありがとう」

 親に縋り付く子供のように、その温もりを感じ大泣きしながら眠りについた。

*

*

 それから更に1年の月日が流れた。
 少しずつ、少しずつ恐怖を上書きするように、触れ合う時間を作っていった。

 最初こそ、ガタガタ震えて直ぐに終わっていたが今では震える事は無くなった。優しく、まるで宝物に、ガラス細工に触るように、私が壊れないように毎回優しく触れてくれた。

「んっ、奏汰…」

 奏汰の首に腕をまわし、ピタッと密着しながらキスを交わす。ーー気持ちいい
 手が服の中に侵入してくるが、全く怖くない

「……奏汰…好き…大好き。抱いて欲しい」

 もう恐怖は全くない。この行為は怖くないと、愛おしい事なのだと、身体が覚えていった。
 そう伝えると、優しくベッドに横にされる。

「……本当に?大丈夫なのか?」
「うん、待たせてごめんね…ありがとう」

 奏汰の頬を包み込み、顔を引き寄せキスをする

「あっ……ぁん、奏汰ぁ」
頭、胸、下半身、キスをされたり愛撫されるたび切なくなる。

「…っ、菜々美。ごめん、怖かったら言ってよ。ちゃんと止めるから」

 そうは言ってくれるが、私の恥部に腰を擦り付け何とか我慢しているようだ。

「ううん、大丈夫…抱いて」
 ギュッと手を握り締め合い、奏汰の腕に頬を擦り寄せる

 それからは、頭が飛びそうになるほどの快感が身体を支配していった。
 あの嫌悪の象徴だった、出入りする度グチュグチュとなる水音さえ、今は快感に繋がる

「ッ…菜々美…ありがとう。愛してる」

 そう言って私に口付けをすると、奏汰が幸せそうに泣くから、私も涙が止まらなくなってしまった。

「うん、私も愛してる」

 その後今までの分を取り返すかのように、互いが果てるまで何度も何度も求め合った。この瞬間までは、こんな幸せがずっと一生続いていくんだと…そう信じて疑わなかった。

 そう、あの日までは──……。
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