ホームズとワトソン

砕田みつを

文字の大きさ
5 / 8

聴取

しおりを挟む
「それにしても、きれいな庭ですね~」

「あら、ありがとうございます。毎日手入れを欠かさない職人たちも喜びますわ。名探偵の助手ともなるとこれくらいのものは見慣れているかと思っていましたわ。」

「いやいや、そんなことないですよ。うちのホームズさんは案外貧乏性なので。・・・ところで、実際のところ維持するためにはどのくらいの費用がかかるんですか?」

「経理担当はわたくしではないので、はっきりと申し上げることはできませんが・・・500は難くないかと・・・」

「ほー、500ですか。それまた大層な金額ですねぇ。」

「あぁ、すみません、来客を前にして決して自慢をしたいというわけではないのですが。」

「構いませんよ、婦人。僕から聞いたことですし。それに、これだけの豪邸に住まわれている時点で自慢だとかそんな次元ではないですからね。」

「はは・・・」

「ただ・・・」

「ただ・・・?」

「それほどの金額がどこからわいて来ているのか、については疑問がありますね。」

「わたくしの夫が稼いだお金で」

「旦那さんは5年前に他界されていらっしゃいますが旦那さんの遺産だけでここまでのモノを維持、開発出来るのでしょうか?」

「そ、それは・・・」

「更に、この庭が増築され、華やかになったのは昨年のことです。資産は減る一方のはずなのにより多くのお金を『この庭』にかけることが出来るのはやや不自然じゃありませんかね?」

「・・・」

「サントス邸がここまで豪華で尚且つそれを維持できている理由はもっと別の所にあると僕は推測しているのですが、いかがでしょう?

そうですね・・・例えば、遺産の虚偽申告とか。 」

「なっっっっっ」


「旦那さんの遺産を少なく申告すれば税として納めなければならない金額は比例して少なくなります。そうなればより多くの金額を自由に動かせる。恐らく、昨年迄は申告した金額に見合うように少ない資産運用を行っていたようですが、もうばれないだろうと一気に使った結果が昨年の増築だった、といったところでしょう。」

「そ、そんなデタラメなことおっしゃらないでください!!!いくらなんでも酷すぎます!」

「デタラメなことだなんて強く出ますねぇサントス婦人。
僕は知ってますよ?この家にはまだまだ眠っている資産があることを・・」

「!?」

「ここ最近のサントス邸の使用人たちに話を聞きました。婦人がやけに気にしている邸宅内部の安全管理、婦人と親しい関係にある使用人の突然の解雇、その他もろもろ内部の悪事も。」

「・・・なんてこと・・・」

「安心してください婦人。まだこの件は警察に話していません。」 

「え?」

「言ったでしょう?僕は婦人の話を聞きに来ただけですって。」

「そ、それはおっしゃっていましたけど・・・」


「そもそも、僕の仕事じゃないんですよね、これ。ホントは名探偵ホームズが解決するのが筋ですから。」

「は、はぁ・・・」

「だからまあもう少しお話しましょう。婦人。この家に眠ってる資産について、とか正しい生き方についてとか。」

「それはできません!」

「強情だなぁ。まあいいですよ。時間はまだありますから。ほら、お茶いれるんで座っててください。」

「いや、わたくしの家で何を」

「まあまあそういわずに、これでも僕、お茶をいれるのには自信があるんですよ?」

「僕の正義を婦人に見せて差し上げます。」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

処理中です...