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ずんぐりスイートポテト5
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お昼にナオくんは持参したお弁当を食べ、僕は余った卵黄を再び卵白に混ぜて焼いたスクランブルエッグとおにぎりをいただき、それから宿題をしたりテレビを見たりして過ごした。
その間、僕らは話に花を咲かせることも忘れない。
ナオくん主導で繰り広げられる会話は年の差をあまり意識せずに楽しめるから不思議だ。
家でもお兄さんとこんな風にしているのかなと想像してみるけれど、イメージの中の晴人はナオくんのトークを捉えどころのないペラリとした笑みで受け流していた。
あっ、でも兄としての晴人なら弟としっかり目線を合わせて「うん、うん」頷いているのかも。そっちの方がずっと素敵だ。
またもや思考を結城兄弟に飛ばしていると、
「シオちゃん、聞いてるー?」
僕がぼぅっとしていることを察したナオくんに咎められてしまう。
「ごめん、ごめん。何だったけ?」
慌てて意識を現実に引き戻す。
「もうっ、お兄ちゃんがシオちゃんのプリンまた食べたいって言っていた話!」
そうだった。先週一緒に制作したたっぷりプリンが好評だって褒めてくれていたところだった。
晴人本人からも言ってもらったことだけど、二人にとっての初の爆盛りスイーツはかなり印象深いらしく、あれから一週間経ってもいまだ話題になるのだとか。
もし本当にそうならこんなに嬉しいってことはない。
「あーあ、お兄ちゃんばっかりずるいなあ」
ソファからはみ出した足をプラプラさせて、ナオくんが頬を膨らませる。
「ずるいって、何が?」
確か前回のプリン、晴人とナオくんは同じだけ食べていたはず。そうなると、もう心当たりなんて全然なくて頭に疑問符が何個か浮かんだ。
しかし、当の本人には核心があるようでそんな僕を他所にプリプリしている。
「何って決まってるじゃん。お兄ちゃんいっつもシオちゃんと同じ学校なんだって自慢してくるんだよ!」
「えっ、えっ?」
そうなの!? いやいや、まさか。ナオくんが大げさに言っているだけでしょ。
でも、もし本当のことなら………どうしよう。
顔がすっごく熱い。心臓がドクドクして、頬っぺたの血管なんて膨張しているんじゃないだろうかってくらいヒリヒリしている。
ナニコレ。たまんない。
いつにない期待が背筋を走った。
僕なんて教室の隅っこで静かに息を潜めているだけの存在なのに、人気者の晴人が気にかけてくれているなんて。これが優越感? って踊らされすぎ?
にわかには信じがたい事象にあたふたしていると、ナオくんがさらに追い打ちをかけてくる。
「クラスも同じで、体操も一緒にやったって言ってたもん」
「それは……」
心当たりがある。
だけど、それは晴人がボッチな僕を憐れんで誘ってくれただけ。
「他に組んでくれる人がいなかったから」
事実を声に出すとまるで言い訳のようだが本当のことだ。
しかし、そんな状況をいまいち理解できていないのか、
「みんな絶対シオちゃんと運動したいのに、きっとお兄ちゃんが邪魔したんだ」
なんてナオくんはありもしない妄想を熱心に語ってみせた。
端からの除け者がいるという発想がないあたりナオくんらしいが、高校生にもなると僕みたいな協調性の欠片もないやつはクラスに馴染めないんですよー、と教えてあげるべきなのか。
それでも、現実を突きつけるにはちょっと早い気がして一旦は晴人の名誉だけ回復させて置くことにした。
「僕は晴人やナオくんみたいに人気者じゃないから一人になっちゃうこともあるんだよ」
……いつもだけど。
「だから、晴人は余った僕を助けてくれただけだからね」
……情けないことに。
「きっとナオくんが僕のお話をいっぱいしてくれたから、お兄ちゃんもナオくんに僕のことを話しただけなんじゃないかな」
……今までの流れ的に絶対そうだ。
そんなに深い理由があるわけじゃないってアピールしておいてグサグサと心にダメージを負うのはさっきとの落差のせいなのか。これを自滅と言わずして何と言う。
やっぱりナオくんの話を僕が拡大解釈しすぎていただけで、晴人にとってどこから見ても僕は単なるクラスメイト。彼は誰にでも優しいからたまたま弟の世話をしてくれた僕を構ってくれただけなんだ。
そんなネガティブな方面に突っ走る思考を止めたのは、またしてもナオくんの一撃。
「えーシオちゃん可愛いのに」
かわいい? 僕が? それこそあり得ない!
どういう因果関係でその単語が飛び出たのかも不可解だが、まずは僕のことを「可愛い」だなんていうその感性を危ぶまずしてどうする。
「ナオくん、僕は可愛くないと思うよ? 可愛いっていうのはね、ウサギさんとかネコさんに使う言葉であって、僕みたいな男の子にはあんまり当てはまらないんじゃないかな」
もちろん中には可愛い男の子もいるのだろうけど、今はそんなことに配慮している場合ではない。
とにかくナオくんの認識を改めさせないと………! 万が一にでも晴人に変な風に伝わったら困る!
せっかくの友情が壊れてしまうんじゃないか、とアタフタするけれど、
「シオちゃんは可愛いの!」
ナオくんはどこ吹く風。まさに暖簾に腕押し状態である。
彼の言い分をまったく否定してしまうのはかわいそうだが、子供の言うことだからと流してしまえるほど僕は大人ではない。
だけど、表現力に乏しい僕は上手く言い返せなくて、
「勘弁してよ~」
情けない声を上げながら半泣きで机に突っ伏せるしかなかった。
その間、僕らは話に花を咲かせることも忘れない。
ナオくん主導で繰り広げられる会話は年の差をあまり意識せずに楽しめるから不思議だ。
家でもお兄さんとこんな風にしているのかなと想像してみるけれど、イメージの中の晴人はナオくんのトークを捉えどころのないペラリとした笑みで受け流していた。
あっ、でも兄としての晴人なら弟としっかり目線を合わせて「うん、うん」頷いているのかも。そっちの方がずっと素敵だ。
またもや思考を結城兄弟に飛ばしていると、
「シオちゃん、聞いてるー?」
僕がぼぅっとしていることを察したナオくんに咎められてしまう。
「ごめん、ごめん。何だったけ?」
慌てて意識を現実に引き戻す。
「もうっ、お兄ちゃんがシオちゃんのプリンまた食べたいって言っていた話!」
そうだった。先週一緒に制作したたっぷりプリンが好評だって褒めてくれていたところだった。
晴人本人からも言ってもらったことだけど、二人にとっての初の爆盛りスイーツはかなり印象深いらしく、あれから一週間経ってもいまだ話題になるのだとか。
もし本当にそうならこんなに嬉しいってことはない。
「あーあ、お兄ちゃんばっかりずるいなあ」
ソファからはみ出した足をプラプラさせて、ナオくんが頬を膨らませる。
「ずるいって、何が?」
確か前回のプリン、晴人とナオくんは同じだけ食べていたはず。そうなると、もう心当たりなんて全然なくて頭に疑問符が何個か浮かんだ。
しかし、当の本人には核心があるようでそんな僕を他所にプリプリしている。
「何って決まってるじゃん。お兄ちゃんいっつもシオちゃんと同じ学校なんだって自慢してくるんだよ!」
「えっ、えっ?」
そうなの!? いやいや、まさか。ナオくんが大げさに言っているだけでしょ。
でも、もし本当のことなら………どうしよう。
顔がすっごく熱い。心臓がドクドクして、頬っぺたの血管なんて膨張しているんじゃないだろうかってくらいヒリヒリしている。
ナニコレ。たまんない。
いつにない期待が背筋を走った。
僕なんて教室の隅っこで静かに息を潜めているだけの存在なのに、人気者の晴人が気にかけてくれているなんて。これが優越感? って踊らされすぎ?
にわかには信じがたい事象にあたふたしていると、ナオくんがさらに追い打ちをかけてくる。
「クラスも同じで、体操も一緒にやったって言ってたもん」
「それは……」
心当たりがある。
だけど、それは晴人がボッチな僕を憐れんで誘ってくれただけ。
「他に組んでくれる人がいなかったから」
事実を声に出すとまるで言い訳のようだが本当のことだ。
しかし、そんな状況をいまいち理解できていないのか、
「みんな絶対シオちゃんと運動したいのに、きっとお兄ちゃんが邪魔したんだ」
なんてナオくんはありもしない妄想を熱心に語ってみせた。
端からの除け者がいるという発想がないあたりナオくんらしいが、高校生にもなると僕みたいな協調性の欠片もないやつはクラスに馴染めないんですよー、と教えてあげるべきなのか。
それでも、現実を突きつけるにはちょっと早い気がして一旦は晴人の名誉だけ回復させて置くことにした。
「僕は晴人やナオくんみたいに人気者じゃないから一人になっちゃうこともあるんだよ」
……いつもだけど。
「だから、晴人は余った僕を助けてくれただけだからね」
……情けないことに。
「きっとナオくんが僕のお話をいっぱいしてくれたから、お兄ちゃんもナオくんに僕のことを話しただけなんじゃないかな」
……今までの流れ的に絶対そうだ。
そんなに深い理由があるわけじゃないってアピールしておいてグサグサと心にダメージを負うのはさっきとの落差のせいなのか。これを自滅と言わずして何と言う。
やっぱりナオくんの話を僕が拡大解釈しすぎていただけで、晴人にとってどこから見ても僕は単なるクラスメイト。彼は誰にでも優しいからたまたま弟の世話をしてくれた僕を構ってくれただけなんだ。
そんなネガティブな方面に突っ走る思考を止めたのは、またしてもナオくんの一撃。
「えーシオちゃん可愛いのに」
かわいい? 僕が? それこそあり得ない!
どういう因果関係でその単語が飛び出たのかも不可解だが、まずは僕のことを「可愛い」だなんていうその感性を危ぶまずしてどうする。
「ナオくん、僕は可愛くないと思うよ? 可愛いっていうのはね、ウサギさんとかネコさんに使う言葉であって、僕みたいな男の子にはあんまり当てはまらないんじゃないかな」
もちろん中には可愛い男の子もいるのだろうけど、今はそんなことに配慮している場合ではない。
とにかくナオくんの認識を改めさせないと………! 万が一にでも晴人に変な風に伝わったら困る!
せっかくの友情が壊れてしまうんじゃないか、とアタフタするけれど、
「シオちゃんは可愛いの!」
ナオくんはどこ吹く風。まさに暖簾に腕押し状態である。
彼の言い分をまったく否定してしまうのはかわいそうだが、子供の言うことだからと流してしまえるほど僕は大人ではない。
だけど、表現力に乏しい僕は上手く言い返せなくて、
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