【本編完結済】爆盛りスイーツから始まる恋のレシピ~陰キャ男子はお菓子作りでボッチ回避に成功しました~

ぷかり

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どっさりクッキー5

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 おろおろするばかりの僕も慌てて彼に倣って追いかける。

「また喧嘩しているのか」

 ナオくんたちの元に駆けつけた晴人は弟の目線に合わせてしゃがみ込むと開口一番こう言った。

「この前もうしないって約束したよな?」

 なるほど、初めてのことではないってことか。
 それなら晴人の手慣れた対応にも頷ける。

 気配を消しつつ、周囲に耳を傾けて得た情報によると、どうやらナオくんは同い年の少年――大志くんと犬猿の仲らしい。

 二人は別々の小学校に通っていて、たまに児童館で一緒になる言わば学年のリーダー同士。
 それぞれの学区の子を率いて遊ぶことが多いから、自然と他の同級生たちのトラブルに駆り出されるようになり、気づけばいつもライバルみたいな扱いをされるようになったのだとか。
 加えてどちらも活発なタイプで運動も勉強も得意なため、そうでなくとも競い合っている、と。

 まるで派閥って……子供の力関係にもいろいろあるんだなあ。
 転校続きで学校生活に碌に馴染めなかった僕には縁遠い話だ。

 そんな感心をしている間にも、晴人の仲裁を挟んでナオくんと大志くんはますますヒートアップしている。
 今はどちらが間違っているかをそれぞれ晴人に主張している段階に突入したところ。

「だから大志くんが悪いんだよ! ミミちゃんのペン取ったんだもん!」
「はあ!? だからそれは貸してって言ったつーの!」
「ミミちゃんは貸してないって!」

 これはもうミミちゃんとやらに真偽を確かめないと埒が明かないのではないだろうか。

 実際のところは大志くんの「貸して」にミミちゃん逆らえなかったんだろうな、と陰キャマインドで推測してみるけれど、決めつけはよくない。
 しかし、当のミミちゃんはすでにお迎えが来てしまい帰宅した後のようで、それがますます事態の混乱を招いていた。

 そんな悲惨な状況でも晴人の手腕は大したもので、

「でも、ミミちゃん嫌そうだったもん! いいよって言ってないって」

 駄々っ子のように訴えるナオくんに、

「だけど貸したのはミミちゃんだろ? 大志くんもちゃんと貸してって頼んだみたいだし。確かに大志くんは身体が大きいからミミちゃんは怖かったのかもしれないけど、それでも貸すって決めたのはミミちゃん自身なんだから」

 落ち着いた様子で教えを説いている。

「冷たく聞こえるかもしれないけど、ミミちゃんから直接頼まれたわけじゃないんなら、それは直人がミミちゃんの代わりにダメってする理由にならないよ」

 晴人の言うことはもっともだった。
 親切も行き過ぎると余計なお世話になってしまう。

 今のままミミちゃんみたいな子をナオくんが守り続けると、ミミちゃんはきっと自分じゃ何も言えない子になってしまうだろうし、ナオくんだってお節介だと疎まれたり、要らぬトラブルを抱え込むようになったりしてしまう。

 注意を受けてしょんぼりするナオくんには悪いけど、僕も晴人の意見に賛成だ。

「大志くんも、人から物を借りる時はちゃんと返事を待ってからね。嫌だって思っても言えない子もいるから」

 僕の出る幕なんてなく、空気に徹している間に晴人は大志くんにも軽くお灸を据えて、あっという間に両成敗に導いた。兄は強し。
 しかし、子供の感情論は理論を上回るらしい。

「ほら、お互いにごめんなさいしな」

 晴人が二人の頭を掴んで改めて向き合わせて仲直りを促すも、ナオくんたちは互いにそっぽを向いてしまう。
 自分たちにそれぞれ落ち度があったことを正しく理解しているからか、気まずそうなのは可愛げがあるのだが、これじゃあ埒が明かない。

 両者とも素直に自分の非を認められないんじゃなくて、相手に対して意地を張っているのだろう。
 ここで謝ったら他のみんなに示しがつかないといったところか。
 その証拠にナオくんも大志くんも肩を竦ませながらではあるものの、晴人には「ごめんなさい」の言葉を口にしている。

「俺に謝っても仕方ないんだけどなあ」

 これには複雑なライバル関係をよく知っている晴人もこれには頭を掻く始末。

 困っている晴人の力になりたい。なんとか助け船を出せないかな。

 そんな思いで救いを求めるように周囲を見渡すと――目に入ったのは児童館を彩るカボチャや魔女の飾りつけ。
 さきほどまで余裕がなくて見えていなかっただけで、壁一面に画用紙で作ったらしき「今月の行事」にまつわる装飾の数々が配置されていた。

 これだ!

 ピンッときて深く考える間もなく、気づいたら晴人の後ろから子供たちに声をかけていた。

「クッキー好き?」
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