17 / 69
どっさりクッキー5
しおりを挟む
おろおろするばかりの僕も慌てて彼に倣って追いかける。
「また喧嘩しているのか」
ナオくんたちの元に駆けつけた晴人は弟の目線に合わせてしゃがみ込むと開口一番こう言った。
「この前もうしないって約束したよな?」
なるほど、初めてのことではないってことか。
それなら晴人の手慣れた対応にも頷ける。
気配を消しつつ、周囲に耳を傾けて得た情報によると、どうやらナオくんは同い年の少年――大志くんと犬猿の仲らしい。
二人は別々の小学校に通っていて、たまに児童館で一緒になる言わば学年のリーダー同士。
それぞれの学区の子を率いて遊ぶことが多いから、自然と他の同級生たちのトラブルに駆り出されるようになり、気づけばいつもライバルみたいな扱いをされるようになったのだとか。
加えてどちらも活発なタイプで運動も勉強も得意なため、そうでなくとも競い合っている、と。
まるで派閥って……子供の力関係にもいろいろあるんだなあ。
転校続きで学校生活に碌に馴染めなかった僕には縁遠い話だ。
そんな感心をしている間にも、晴人の仲裁を挟んでナオくんと大志くんはますますヒートアップしている。
今はどちらが間違っているかをそれぞれ晴人に主張している段階に突入したところ。
「だから大志くんが悪いんだよ! ミミちゃんのペン取ったんだもん!」
「はあ!? だからそれは貸してって言ったつーの!」
「ミミちゃんは貸してないって!」
これはもうミミちゃんとやらに真偽を確かめないと埒が明かないのではないだろうか。
実際のところは大志くんの「貸して」にミミちゃん逆らえなかったんだろうな、と陰キャマインドで推測してみるけれど、決めつけはよくない。
しかし、当のミミちゃんはすでにお迎えが来てしまい帰宅した後のようで、それがますます事態の混乱を招いていた。
そんな悲惨な状況でも晴人の手腕は大したもので、
「でも、ミミちゃん嫌そうだったもん! いいよって言ってないって」
駄々っ子のように訴えるナオくんに、
「だけど貸したのはミミちゃんだろ? 大志くんもちゃんと貸してって頼んだみたいだし。確かに大志くんは身体が大きいからミミちゃんは怖かったのかもしれないけど、それでも貸すって決めたのはミミちゃん自身なんだから」
落ち着いた様子で教えを説いている。
「冷たく聞こえるかもしれないけど、ミミちゃんから直接頼まれたわけじゃないんなら、それは直人がミミちゃんの代わりにダメってする理由にならないよ」
晴人の言うことはもっともだった。
親切も行き過ぎると余計なお世話になってしまう。
今のままミミちゃんみたいな子をナオくんが守り続けると、ミミちゃんはきっと自分じゃ何も言えない子になってしまうだろうし、ナオくんだってお節介だと疎まれたり、要らぬトラブルを抱え込むようになったりしてしまう。
注意を受けてしょんぼりするナオくんには悪いけど、僕も晴人の意見に賛成だ。
「大志くんも、人から物を借りる時はちゃんと返事を待ってからね。嫌だって思っても言えない子もいるから」
僕の出る幕なんてなく、空気に徹している間に晴人は大志くんにも軽くお灸を据えて、あっという間に両成敗に導いた。兄は強し。
しかし、子供の感情論は理論を上回るらしい。
「ほら、お互いにごめんなさいしな」
晴人が二人の頭を掴んで改めて向き合わせて仲直りを促すも、ナオくんたちは互いにそっぽを向いてしまう。
自分たちにそれぞれ落ち度があったことを正しく理解しているからか、気まずそうなのは可愛げがあるのだが、これじゃあ埒が明かない。
両者とも素直に自分の非を認められないんじゃなくて、相手に対して意地を張っているのだろう。
ここで謝ったら他のみんなに示しがつかないといったところか。
その証拠にナオくんも大志くんも肩を竦ませながらではあるものの、晴人には「ごめんなさい」の言葉を口にしている。
「俺に謝っても仕方ないんだけどなあ」
これには複雑なライバル関係をよく知っている晴人もこれには頭を掻く始末。
困っている晴人の力になりたい。なんとか助け船を出せないかな。
そんな思いで救いを求めるように周囲を見渡すと――目に入ったのは児童館を彩るカボチャや魔女の飾りつけ。
さきほどまで余裕がなくて見えていなかっただけで、壁一面に画用紙で作ったらしき「今月の行事」にまつわる装飾の数々が配置されていた。
これだ!
ピンッときて深く考える間もなく、気づいたら晴人の後ろから子供たちに声をかけていた。
「クッキー好き?」
「また喧嘩しているのか」
ナオくんたちの元に駆けつけた晴人は弟の目線に合わせてしゃがみ込むと開口一番こう言った。
「この前もうしないって約束したよな?」
なるほど、初めてのことではないってことか。
それなら晴人の手慣れた対応にも頷ける。
気配を消しつつ、周囲に耳を傾けて得た情報によると、どうやらナオくんは同い年の少年――大志くんと犬猿の仲らしい。
二人は別々の小学校に通っていて、たまに児童館で一緒になる言わば学年のリーダー同士。
それぞれの学区の子を率いて遊ぶことが多いから、自然と他の同級生たちのトラブルに駆り出されるようになり、気づけばいつもライバルみたいな扱いをされるようになったのだとか。
加えてどちらも活発なタイプで運動も勉強も得意なため、そうでなくとも競い合っている、と。
まるで派閥って……子供の力関係にもいろいろあるんだなあ。
転校続きで学校生活に碌に馴染めなかった僕には縁遠い話だ。
そんな感心をしている間にも、晴人の仲裁を挟んでナオくんと大志くんはますますヒートアップしている。
今はどちらが間違っているかをそれぞれ晴人に主張している段階に突入したところ。
「だから大志くんが悪いんだよ! ミミちゃんのペン取ったんだもん!」
「はあ!? だからそれは貸してって言ったつーの!」
「ミミちゃんは貸してないって!」
これはもうミミちゃんとやらに真偽を確かめないと埒が明かないのではないだろうか。
実際のところは大志くんの「貸して」にミミちゃん逆らえなかったんだろうな、と陰キャマインドで推測してみるけれど、決めつけはよくない。
しかし、当のミミちゃんはすでにお迎えが来てしまい帰宅した後のようで、それがますます事態の混乱を招いていた。
そんな悲惨な状況でも晴人の手腕は大したもので、
「でも、ミミちゃん嫌そうだったもん! いいよって言ってないって」
駄々っ子のように訴えるナオくんに、
「だけど貸したのはミミちゃんだろ? 大志くんもちゃんと貸してって頼んだみたいだし。確かに大志くんは身体が大きいからミミちゃんは怖かったのかもしれないけど、それでも貸すって決めたのはミミちゃん自身なんだから」
落ち着いた様子で教えを説いている。
「冷たく聞こえるかもしれないけど、ミミちゃんから直接頼まれたわけじゃないんなら、それは直人がミミちゃんの代わりにダメってする理由にならないよ」
晴人の言うことはもっともだった。
親切も行き過ぎると余計なお世話になってしまう。
今のままミミちゃんみたいな子をナオくんが守り続けると、ミミちゃんはきっと自分じゃ何も言えない子になってしまうだろうし、ナオくんだってお節介だと疎まれたり、要らぬトラブルを抱え込むようになったりしてしまう。
注意を受けてしょんぼりするナオくんには悪いけど、僕も晴人の意見に賛成だ。
「大志くんも、人から物を借りる時はちゃんと返事を待ってからね。嫌だって思っても言えない子もいるから」
僕の出る幕なんてなく、空気に徹している間に晴人は大志くんにも軽くお灸を据えて、あっという間に両成敗に導いた。兄は強し。
しかし、子供の感情論は理論を上回るらしい。
「ほら、お互いにごめんなさいしな」
晴人が二人の頭を掴んで改めて向き合わせて仲直りを促すも、ナオくんたちは互いにそっぽを向いてしまう。
自分たちにそれぞれ落ち度があったことを正しく理解しているからか、気まずそうなのは可愛げがあるのだが、これじゃあ埒が明かない。
両者とも素直に自分の非を認められないんじゃなくて、相手に対して意地を張っているのだろう。
ここで謝ったら他のみんなに示しがつかないといったところか。
その証拠にナオくんも大志くんも肩を竦ませながらではあるものの、晴人には「ごめんなさい」の言葉を口にしている。
「俺に謝っても仕方ないんだけどなあ」
これには複雑なライバル関係をよく知っている晴人もこれには頭を掻く始末。
困っている晴人の力になりたい。なんとか助け船を出せないかな。
そんな思いで救いを求めるように周囲を見渡すと――目に入ったのは児童館を彩るカボチャや魔女の飾りつけ。
さきほどまで余裕がなくて見えていなかっただけで、壁一面に画用紙で作ったらしき「今月の行事」にまつわる装飾の数々が配置されていた。
これだ!
ピンッときて深く考える間もなく、気づいたら晴人の後ろから子供たちに声をかけていた。
「クッキー好き?」
0
あなたにおすすめの小説
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら
たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生
海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。
そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…?
※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。
※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる