【本編完結済】爆盛りスイーツから始まる恋のレシピ~陰キャ男子はお菓子作りでボッチ回避に成功しました~

ぷかり

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ぽってりマカロン2

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 一緒に歩くとやっぱり歩幅が合わなくて、前回に引き続き手を繋ぐ運びになった。

 先週と違うのは、校門に差し掛かったところで立ち止まった晴人が、

「ん」

 と手を僕の方に差し出してくれたところだろうか。

 その手をそっと取ると、ぎゅっと丸め込まれて、

「やっぱり志音って温かい」

 熱をじんわり奪い取られた。

 おかしな距離感だというのはわかっている。

 さすがの僕でも女子ならまだしも、男同士しかも単なる友達相手に手を繋ぐというのはおかしな話だって、誰かに見られたらまずいって自覚はある。
 それなのに、絡む指先にドキドキして、時折触れる肩が制服越しにくすぐったくて、妙な気になってくるのは、僕の交友関係への経験値が浅すぎるからだろうか。

 その夜は気づいたら自室のベッドにいて、確かに食べたはずの夕飯の味も、浴びたシャワーの温度も忘れて、ただぼぅっと晴人のことだけを考えて過ごした。

 完璧すぎるあまりチームメイトから妬まれている晴人。
 空気が悪くならないように気を遣ってくれたのか、放課後のあの一瞬を除いては普段通りに振舞っていた。
 ボッチの僕が言えたことではないが、児童館への道のりも、ナオくんのお迎えも、なんてことない風にこなしていて、それが健気で憐れだった。

 僕だったら耐えられない。
 友達に、例えば晴人に影で嫌いと思われていたら……そう想像するだけで涙が出そうなほど。

「明日も晴人はあの人たちと仲良くするのかな」

 やめればいいのに。

 ひどい連中とわかっていて、なんであんな奴らとつるむんだろう。
 僕なら晴人の悪口なんて絶対に言わないし、悲しませたりしないのに。

「学校でつらい思いをするのなら、晴人は僕とだけ話せば良い」

 布団に転がって枕を抱きしめながら、この時の僕は本気でそう思っていた。

*
 誰に見られていたのか、翌日学校に行くと僕と晴人が手を繋いで下校したことがクラス中に知れ渡っていた。

 このことでダメージを受けたのは晴人だけで、元々友達のいない僕への直接的な被害はないけれど、迷惑をかけてしまったという事実に心臓がギュッと絞めつけられる想いだった。

 なんであんなこと考えちゃったんだろう。

 昨夜は晴人とみんなの仲を疎んでいたはずなのに、いざそれが現実となると、戸惑いとか申し訳なさで胸が塞がりそうになる。

 呼吸ってどうやってするんだっけ? 上手く酸素を肺に運べない。苦しい。

 そんなことばかりが脳裏をよぎるのに、窒息していないってことは結局人間は本能で生かされているということなのだろう。

 なんか、全部ままならないな。

 もっと暗いところから手を繋げば良かったとか、僕の足が遅いから晴人が気を回してくれたと弁解した方がいいのかなとか、いろいろ思うところはあるけれど、僕にはそんなことを気軽に話せる友達もいないので、噂の真相を伝える手立てもなく、こうなったらもうどうしようもなかった。

 そもそも、通学路で僕らを目撃したという人物も、

「晴人が小柄な男と手を繋いで歩いてた!」

 という情報しか握っておらず、その相手は暗くてよく見えなかったと言っているのだから信憑性からして疑ってかかっていいはずなのに、なぜだかクラスのお調子者たちはみんな晴人が男と付き合っていることにしたいらしい。

 そんな曖昧さの中で、なぜ僕に白羽の矢が立ったのか。
 それは ひとえに近頃晴人と親しいことと身長の低さゆえのこと。
 はっきりと確かめたわけじゃないから、とあくまでも推測の域を越えていないとは言うものの、すでに確定事項っぽくなりつつある。

 意外と単純だが、それもまあ、あながち間違っていないどころか、途中まではむしろ正解というのが、この件の恐ろしいところ。
 一周回って浮いていただけの可能性もあるが、教室内でも空気扱いの僕のことなんか誰も認識すらしていないと思っていたのに、人の観察眼というのは鋭いもののようだと再認識させられるばかりである。

 ただ、だからといって急に話かけられたり、揶揄われたりするわけでもなかった。あくまでも彼らは晴人をイジリたいだけらしい。
 絡みのない、しかも普段ほとんど誰とも会話をしない僕を、そういったものの対象にできないだけかもしれないけれど、そのおかげか噂話の際に目線を送られるくらいで済んだ。

 大変なのは言うまでもなく晴人の方で、朝から休憩の度に気の毒なほど下品な冷やかしを受けている。

「やっぱホモなんじゃん」
「どこまでヤッた?」

 晴人を庇いたい。だけど、助け舟を出すことで誤解が広まり火に油を注ぐ結果になってしまったら……むしろ迷惑になりかねない。

 そっと騒ぎの中心を盗み見る。
 僕より遥かに処世術に長けた彼は今も一人で戦っていた。

 自分だって辛いはずなのに、誰かを傷つけることのないように、

「見間違えじゃない?」

 曖昧に微笑んで、懸命に口撃を躱そうとするその様子が痛々しくて、今すぐにでも晴人の元に駆け寄りたいのに、彼を壁のように取り巻くクラスメイトの姿に逡巡してしまう。

 ごめん。

 心の中で何度も謝っても伝わらないってわかっている。
 それでも、意気地なしの僕は密かに謝罪を繰り返すことしかできなくて。
 こんな自分に嫌気が差して、だけど勇気が出なくて、初めのうちはただ息を殺して傍観することしかできなかった。

 が、いつまでも続く、見るに耐えかねるいじめのような所業に、いい加減気の弱い僕も段々と怒りが湧いてきて、

「晴人、こっち!」

 とうとう昼休みも半分を過ぎた頃、僕は机を一軍男子に囲まれた彼の手を取って教室から飛び出してしまった。
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