【本編完結済】爆盛りスイーツから始まる恋のレシピ~陰キャ男子はお菓子作りでボッチ回避に成功しました~

ぷかり

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こんもりムースタルト8

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「待っている間にムース作っちゃおう」

 偉そうに宣言してみたけど、実は一瞬で完成してしまうくらい簡単だったりする。

「じゃーん、これを使います」

 ここで秘密兵器の登場。
 まあ、公式でも公開しているレシピをアレンジしただけだから実際は秘密でもなんでもない。
 ただ、あまり知られていない活用法だから、晴人たちには新鮮なはず。
 だけど、それはあくまでも通常と違う使い方をした場合。

 パッケージを見せただけでは、

「美味しいやつだ!」
「なーんだ、ぷるぷるのやつじゃん」

 お馴染みの商品すぎて驚きの声は得られない。

 それもそのはず。
 僕が掲げたのは、牛乳と混ぜるだけで果物のパンナコッタ的な、ババロア的な、ヨーグルト的なものができるあれである。
 商品自体はかなり有名だし、二人も食べたことがあるなんて想定の範囲内。

 我が家でも牛乳が余ったらいつもこれで消費するくらいだし。
 でも、今日は違う。
 なんたってクリスマスイブなんだから。もっと贅沢にいかないと。
 普通に作ってもムースにはならないからね。

「パーティーだから特別ね」

 まずはボウルに今回の素となる液体を入れる。
 ナオくんがイチゴのケーキと言っていたから、ちゃんとイチゴ味をチョイスした。
 さらに、そこに生クリーム二〇〇ミリリットルを追加。
 晴人に頼んで冷蔵庫に置かせてもらっていたんだ。

 ホームページには「牛乳と生クリームを半量ずつ」と載っていたけれど、中途半端に余らせても困るから、牛乳はあえて使わず、代わりにクリームだけ一パック丸ごと投入する。量るのも面倒だしね。
 ちなみに乳脂肪三十五パーセントか四十五パーセントが良いらしいので、とりあえず低い方にしておいた。

「ほら、混ぜてみて」

 ナオくんにゴムベラを渡していつも通りに材料を馴染ませてもらう。
 すると、みるみるうちに液体は固さを持ち始める。

「あれ? なんかぷるぷるしないよ」

 いつもより滑らかなことにナオくんが目をパチクリさせていると、

「俺もやりたい!」

 横から大志くんの手が伸びてくる。
 クッキーを焼いた時みたいに一人が支えて、一人が混ぜて。
 そう時間の経たないうちにボウルの中はムース状の物体で満たされた。

「もうできちゃった!」
「すげー」

 さすがレトルト。このお手軽感は企業にしか出せない。

 これには晴人も感心して、

「へぇ、面白いね。ペクチンとカルシウムで固まるのは知ってたけど、クリームでもできるんだ」

 と謎に頭の良いことを呟いている。

 そんなの普通は調べないと出てこないって。
 小学生組みたいにもっとわかりやすい驚きを期待していただけに、上手い返しが思いつかない。

 たぶんこういうところもサッカー部の連中の癪に障ったんだろうな。
 勉強になるから僕は一向に構わないけれど。知的なところもかっこいいし。
 そもそも僕は昔からリアクションが苦手だった。

「さっきのタルトに乗せて完成?」
「うん、その後ちょっと冷やしてから型を外してトッピングかな」

 説明しながら生地にムースを流し込んでいると、晴人と僕の会話に反応してか、ナオくんがその場でピョンピョン跳ねた。

「もうすぐ食べれる?」
「全部揃ってからね」
「腹減った~」

 大志くんも食べる気満々だけど、ちょっとお預け。
 その前にお昼ごはんを用意しないと。ちょうど炊飯器が「美味しく炊けました」の合図を送っている。

 晴人がファストフード店で入手したポテトと冷凍の唐揚げを温めている間に、僕らは手分けしておにぎりをこしらえた。
 具材を入れるのは手間だから簡単にふりかけをお米に混ぜて、ラップの上から握るだけ。
 本当は野菜もあった方が良いんだけど、コストを考えて省いた。
 そうして出来上がったものをテーブルに並べて、最後にタルトの仕上げに取り掛かる。

 チョコレートクッキーで作った土台にイチゴのムース。
 そこに絞るだけのホイップクリームと、ヘタを取って洗ったイチゴで飾りつけ、アラザンを散りばめれば、市販品で作ったとは思えないほど綺麗なスイーツが完成した。

 器用なナオくんと大志くんに任せたので、出来栄えは心配していなかったが、ほぼすべてのものを「丸ごと」使ったからか、爆盛りにするつもりはなかったにも関わらず、かなりこんもりしてしまった。
 だけど、ここには食べ盛りしかいない。

「食べ応えありそう」
「もうペコペコだよ~」
「早く早く!」

 晴人をはじめ、皆お腹を空かしている。

 準備は完璧。
 さあ、いよいよパーティーの開幕だ!
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