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こんもりムースタルト9
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「すごーい!」
「これ全部食べていいの?」
ほとんどが出来合いの寄せ集めなのに、食卓に並んだ料理はどれも万人受けするものだからか、やたら豪華に見え、席につく前から子供たちは大はしゃぎ。
かくいう僕もテンションが上がっている自覚はあるので、人のことを言えない。
「ほら、座って」
晴人がクリスマス仕様の紙コップに注いでくれたジュースで、
「メリークリスマス!」
乾杯すると、僕らは早速食事を始めた。
普段だったら「ケーキは後で」がデフォルトだろうけど、今日は大人のいないパーティー。
この際、順番なんて気にせず好きなものから皿に取り分けて良いルールにした。
そして、ありがたいことにここでの一番人気はタルトだった。
他のおかずを摘まむより前にまずは試しにと皆で突く。
「美味しい!」
真っ先に頬っぺたを押さえたのはナオくん。
続いて大志くんが、
「なかなかいけるじゃん」
と目を見開く。
「まさかクリームでこんな風になるなんてね」
晴人も気に入ってくれたようで、さっきから甘いものばかり口に運んでいる。
普通に作ってもこうはならないから、最初は半信半疑だったっけ。
僕もムースにスプーンを入れる。
ブルーベリー味で挑戦した時も同じことを思ったけど、ちょっとチーズケーキっぽい風味。
濃厚滑らかなのに、さっぱり食べられるのが良い。
「うん、美味しい」
後からくる酸味が頬を緩ませていると、いつの間にか口元についたらしいクッキーの欠片を晴人が指で拭ってくれた。
「美味しいね」
「だからってそんなのまで食べなくても……」
さっきまでそんな甘い雰囲気じゃなかったはずなのに、いったいどこに隠していたんだ。
思わず顔を赤くなる。
そして、その様子を眺めていた無邪気なナオくんが、
「シオちゃん子供みたい」
珍しいものを発見したように笑って、大志くんはそんなナオくんに、
「お前も人のこと言えねえから」
と唇に付着したケチャップを指摘している。
体の中から言いようもない、甘い余韻がじわじわ湧いてきていけない。
胸の奥がキュッと疼くのは、ナオくんたちに子供っぽいところ見られたせいか、それとも晴人のスキンシップが過剰なせいか。
それとも多幸感、というのだろうか。あんまり満ち足りているから、形を失ってこの空間に溶けちゃいそう。
信頼できる仲間と楽しい会話で盛り上がりながら、大好きなスイーツを頬張る幸せを、昨年の今頃はまだ想像すらしていなかった。
もう皆で味わう心地良さを知ってしまったから、友達のいない寂しさを大きなお菓子で紛らわせていただけのあの日々にもう戻れそうもない。
「雪合戦したい!」
外では雪が降り始めたらしく、ナオくんたちがマフラーを掴んで部屋を飛び出す。
「ここじゃ積もらないよ」
彼らにはもう晴人の忠告も届いていない。
「二人きりになっちゃったね」
「ナオくんも大志くんも元気だね」
子供は風の子ってこういうことなのかも。
でも、僕があの年の頃はあんなに活発じゃなかったような気がする。
「志音、寒くない?」
暖房の設定温度は変っていないはずなのに、雪と聞くとどうしても身体が震える。
「ちょっと冷えるかも」
素直に頷けば、肩にブラケットが掛けられた。
「ありがとう」
「これはおまけね」
おまけって何だろう?
上目遣いで晴人を見つめていると、今度は首元に赤い毛糸が巻かれていった。先端には白いポンポンがついている。
「直人が児童館で習ってきて一緒に作ったから」
「うわー懐かしい」
指編みのマフラーは僕もよくやっていた。
「大きい手のほうが大きいのができるって言うから俺は手を貸しただけなんだけどね」
「文字通り?」
「そういうこと」
言葉遊びにふふっと笑い合う。
「大事にするね」
これは特別なクリスマスプレゼントだって思っていいのかな。
指だけで作ったマフラーに防寒性なんてきっとないのに、僕の手をすっぽり包み込めちゃうほど大きな手のひらと長い指を感じて、体温が急上昇した気がした。
「ねえ! すぐ溶けちゃうよ」
そんな熱い空気を逃すように、玄関の扉が開いた音がして、バタバタと小学生組が戻ってくる。
「これじゃ勝負にもならねえよ」
どうやら積もるほどじゃないと諦めたらしい。
外はよほど凍えたのか、どちらも僕のブランケットが目に入るなり、一緒に包まろうと飛びついてくる。
「あっ! シオちゃん、僕の作ったマフラーしてる!」
「ナオくん、ありがとうね」
「このポンポンは大志くんが教えてくれたの!」
「そうなんだ、大志くんもありがとう」
温かい。
皆のおかげで心までホッカホッカだ。
願わくは来年も、その先も一緒にクリスマスパーティーができますように。
枕元へ来なくなって久しいサンタさんに向けてそっと祈った。
「これ全部食べていいの?」
ほとんどが出来合いの寄せ集めなのに、食卓に並んだ料理はどれも万人受けするものだからか、やたら豪華に見え、席につく前から子供たちは大はしゃぎ。
かくいう僕もテンションが上がっている自覚はあるので、人のことを言えない。
「ほら、座って」
晴人がクリスマス仕様の紙コップに注いでくれたジュースで、
「メリークリスマス!」
乾杯すると、僕らは早速食事を始めた。
普段だったら「ケーキは後で」がデフォルトだろうけど、今日は大人のいないパーティー。
この際、順番なんて気にせず好きなものから皿に取り分けて良いルールにした。
そして、ありがたいことにここでの一番人気はタルトだった。
他のおかずを摘まむより前にまずは試しにと皆で突く。
「美味しい!」
真っ先に頬っぺたを押さえたのはナオくん。
続いて大志くんが、
「なかなかいけるじゃん」
と目を見開く。
「まさかクリームでこんな風になるなんてね」
晴人も気に入ってくれたようで、さっきから甘いものばかり口に運んでいる。
普通に作ってもこうはならないから、最初は半信半疑だったっけ。
僕もムースにスプーンを入れる。
ブルーベリー味で挑戦した時も同じことを思ったけど、ちょっとチーズケーキっぽい風味。
濃厚滑らかなのに、さっぱり食べられるのが良い。
「うん、美味しい」
後からくる酸味が頬を緩ませていると、いつの間にか口元についたらしいクッキーの欠片を晴人が指で拭ってくれた。
「美味しいね」
「だからってそんなのまで食べなくても……」
さっきまでそんな甘い雰囲気じゃなかったはずなのに、いったいどこに隠していたんだ。
思わず顔を赤くなる。
そして、その様子を眺めていた無邪気なナオくんが、
「シオちゃん子供みたい」
珍しいものを発見したように笑って、大志くんはそんなナオくんに、
「お前も人のこと言えねえから」
と唇に付着したケチャップを指摘している。
体の中から言いようもない、甘い余韻がじわじわ湧いてきていけない。
胸の奥がキュッと疼くのは、ナオくんたちに子供っぽいところ見られたせいか、それとも晴人のスキンシップが過剰なせいか。
それとも多幸感、というのだろうか。あんまり満ち足りているから、形を失ってこの空間に溶けちゃいそう。
信頼できる仲間と楽しい会話で盛り上がりながら、大好きなスイーツを頬張る幸せを、昨年の今頃はまだ想像すらしていなかった。
もう皆で味わう心地良さを知ってしまったから、友達のいない寂しさを大きなお菓子で紛らわせていただけのあの日々にもう戻れそうもない。
「雪合戦したい!」
外では雪が降り始めたらしく、ナオくんたちがマフラーを掴んで部屋を飛び出す。
「ここじゃ積もらないよ」
彼らにはもう晴人の忠告も届いていない。
「二人きりになっちゃったね」
「ナオくんも大志くんも元気だね」
子供は風の子ってこういうことなのかも。
でも、僕があの年の頃はあんなに活発じゃなかったような気がする。
「志音、寒くない?」
暖房の設定温度は変っていないはずなのに、雪と聞くとどうしても身体が震える。
「ちょっと冷えるかも」
素直に頷けば、肩にブラケットが掛けられた。
「ありがとう」
「これはおまけね」
おまけって何だろう?
上目遣いで晴人を見つめていると、今度は首元に赤い毛糸が巻かれていった。先端には白いポンポンがついている。
「直人が児童館で習ってきて一緒に作ったから」
「うわー懐かしい」
指編みのマフラーは僕もよくやっていた。
「大きい手のほうが大きいのができるって言うから俺は手を貸しただけなんだけどね」
「文字通り?」
「そういうこと」
言葉遊びにふふっと笑い合う。
「大事にするね」
これは特別なクリスマスプレゼントだって思っていいのかな。
指だけで作ったマフラーに防寒性なんてきっとないのに、僕の手をすっぽり包み込めちゃうほど大きな手のひらと長い指を感じて、体温が急上昇した気がした。
「ねえ! すぐ溶けちゃうよ」
そんな熱い空気を逃すように、玄関の扉が開いた音がして、バタバタと小学生組が戻ってくる。
「これじゃ勝負にもならねえよ」
どうやら積もるほどじゃないと諦めたらしい。
外はよほど凍えたのか、どちらも僕のブランケットが目に入るなり、一緒に包まろうと飛びついてくる。
「あっ! シオちゃん、僕の作ったマフラーしてる!」
「ナオくん、ありがとうね」
「このポンポンは大志くんが教えてくれたの!」
「そうなんだ、大志くんもありがとう」
温かい。
皆のおかげで心までホッカホッカだ。
願わくは来年も、その先も一緒にクリスマスパーティーができますように。
枕元へ来なくなって久しいサンタさんに向けてそっと祈った。
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