【本編完結済】爆盛りスイーツから始まる恋のレシピ~陰キャ男子はお菓子作りでボッチ回避に成功しました~

ぷかり

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ひんやり水羊羹5

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 くよくよしても仕方がないからストレス発散に爆盛りスイーツ。
 特に鬱憤が溜まっているわけではないけれど、それでも多少なりとも思うところはあるもので。
 相変わらず以前と同様のコミュニケーションを求めてくる晴人に僕はどきまぎさせられていた。

 晴人も僕も決して彼女の存在について言及しないから、お弁当を食べさせ合ったり、手を繋いだりすることがあるのは仕方がないのかもしれないけれど、その度に僕は複雑な気持ちを腹に抱えた。
 彼女にも僕にしたことをやっているのかな、とかそんな考えが浮かんで、昼休みにせっかくの二人きりになっても上手く会話に集中できない。

 どうしてこうも思わせぶりなんだ。

 他の男子生徒にこういう行いをしているわけじゃないから、僕が特別なんじゃないかと錯覚してしまいそうになる。
 だけど、僕にはそれを責めることなどできないし、むしろ近すぎる距離感をラッキーと思ってしまっている節すらあって。ただ、得をしていると思う一方で、同じくらい意識しちゃって、僕の方こそ言動にぎこちなさが混ざった。
 肩が触れただけで身体が一瞬強張るのを晴人は不自然に感じるんじゃないかと怯えもしたが、彼はそんなこと気にしていないらしく、今まで通りの気軽さで触れてくる。

 本当にどういうつもりなんだか。

 僕が勘違いしちゃったのは確実に晴人の責任、ってことにしたいけど、人との関わりに疎い僕にも一端はあるし、心の中だけであってもむやみになじることなどできそうもない。
 そうなると、このモヤモヤを消化できるのは爆盛りスイーツしかなかった。

 山村さんもストレスはダイエットに悪影響だと言っていたし、たまのチートデイくらい許されるはず。
 まあ、僕の食生活って週末以外至って普通なんだけどね。土日は母が通いで家事や料理の作り置きをしに父の元に行っているだけで、平日はきちんと三食お弁当まで用意してくれているからさ。
 痩せるためにスイーツを低カロリーにする以外、食習慣自体は大して変わらないのかも。

 今回、僕の欲を満たしてくれる要員に選ばれた、水羊羹に関しては爆盛りと称するのも怪しいのだが。
 というのも、水羊羹ってやつは一本がデフォルトのようで、それを二本に増やしたところとて別に巨大化するわけでなし、むしろ一本でもそれなりの重厚感がある謎の存在であった。

 チョコレート型やおしゃれな製氷皿で固める一口サイズのものもあるらしいが、それの爆盛りバージョンとなるとやはり一般的な「本」で数えられるやつになっちゃうらしい。
 丸いケーキ型を使うことも考えたが、地味な色味でそれをやると食欲が失せそうな気がしてやめた。
 ダイエット目的とはいえ、食べ残しはアウトだ。

 そんなわけで買ってきました、粒餡三〇〇グラム。
 意外とリーズナブルで予想より安価で手に入った。
 こし餡とも迷ったけれど、小豆の皮に入っているサポニンという成分に、内臓脂肪減少や肥満予防効果が期待できると知って、こっちを選んだ。

 レシピは至ってシンプル。
 お鍋に水四〇〇ミリリットルと粉寒天四グラムを投入し、馴染ませてから火をつける。
 まずは中火で最初にしっかり沸騰させるのがコツらしい。
 こうしないと寒天が満遍なく溶けず、固まらない原因になるのだとか。
 かき混ぜるのも忘れてはいけない。

 それができたら火を弱め、さらに一分ほど加熱。
 すると今度は少しずつ餡子を加えては混ぜ、加えては混ぜ……で、全体が均一になったら、また中火に戻して鍋底を掬うように、腕が疲れても混ぜまくる。
 こうしないとせっかくの小豆が焦げてしまう。
 最初はサラッとしていた生地がもったりしてくるまで約五分。

「そろそろ良いかな?」

 頃合いを見て火から下ろし、代わりに水を張った容器に鍋底をつけて、優しく混ぜながら粗熱を取ってやる。
 ちょっと手間だけど、小豆の沈殿を防ぐ効果があるなら、やらない手はない。
 だいたい人肌くらいの熱さになったところで、取り外しが楽になるよう水に濡らしたパウンド型へ生地を流し込む。
 冷蔵庫に入れてから完成までは約一時間。

 その間、暇だから軽くジョギングでもしようかな。
 最近ちょっと慣れてきたし、いつもより長く走るのもアリだ。食べる前の腹ごなしも含めて。
 そうと決まれば、早速着替えよう。
 水羊羹を楽しみに、僕は気分良く階段を駆け上がった。
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