【本編完結済】爆盛りスイーツから始まる恋のレシピ~陰キャ男子はお菓子作りでボッチ回避に成功しました~

ぷかり

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ひんやり水羊羹7

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 満を持しての水羊羹試食会。
 我が家のリビングにはなぜだかナオくんと大志くんに加え、山村さんの姿があった。

 事の発端は公園からの帰り道にある。
 なんというか、簡潔にまとめるなら、帰宅中の僕らが山村さんに出くわしただけのこと。

 僕がちびっ子を連れているのが珍しかったらしく、挨拶がてら話し込んでいるうちに、痺れを切らしたナオくんが、

「水羊羹まだ?」

 と割り込んできた流れで、先輩にもご馳走することになってしまったのだ。

 僕としては普段お世話になっている人にお礼ができるのはやぶさかでないのだが。
 いくら趣味がお菓子作りと明かしているとはいえ、ダイエット中に一人で大物を食べようとしていたことが知られたら、さすがに心証が悪くなりそうで内心ビクビクしてしまう。

 しかし、小学生組はそんな事情お構いなし。

「わーい! ぷるんぷるんだ!」
「うまそー」

 恐る恐る冷蔵庫から取り出した水羊羹を型から外し、大皿に広げると、予想に反し、小学生組に混ざって山村さんの歓声が聞こえた。

「随分と本格的だな」
「ありがとうございます」

 なんか、大丈夫だったらしい。

 いつもならスプーンで突くところだが、上級生にそんなことをさせるわけにもいかず、

「せっかく大きいのに切るのかよ」

 大志くんの不満を無視してカットしていく。

「おかわりしていいから、ね」

 一切れごとに濡らした布巾で包丁を拭くと断面まで綺麗に仕上がる。
 取り皿に分けて配ると、固まりで出すよりも品のある見た目になった。

 小豆も分離していない。
 爆盛りにしなくて正解だった。
 一色だと飽きが来そうだし。

「さあ、どうぞ。召し上がれ」

 水羊羹が冷えているから、温かい緑茶を入れて準備完了。
 真冬に冷たいスイーツって変な組み合わせだけど、縄跳び効果で火照っているし、ちょうど良かったかも。
 暖かい部屋で頬張るアイスも乙なものだし、ぜひともその感覚で味わってほしいところ。

 ご丁寧にも皆一様にローテーブルの前に正座して「いただきます」をしてから一斉に食べかかる。

「美味しいね!」
「俺、粒餡好き」

 こし餡を使ったわけでもないのに、しっとり滑らかな生地にスプーンがさっくり入る。
ぷるんっと震える寒天に薄紫の小豆というシンプルな組み合わせだが、それがベストと言わんばかりにマッチしている。
 甘さ控えめなのに食べ応えがあるのは皮の食感のおかげだろうか。

 ひんやり涼しげな菓子とホッ一息つける熱いお茶。
 この味わいに感じ入るのは大人も子供も同じらしい。

「シオちゃん、お茶々もちょうだい」
「こっちもほしい!」

 どんどん水羊羹をその胃袋に収めっていく姿に思わず僕もにっこり。
 やっぱり自分の作ったものを幸せそうに食べてくれる人がいるっていいな。

 山村さんはどうだろう?

「お口にも合っていれば良いんですけど」

 追加で飲み物を注ぎながら伺うと、美味しいと微笑みかけられる。

「すごいな、高校生でここまでするやつなかなかいないと思う」
「いやいや、単なる趣味ですよ」
「これはもう特技の域だろう」

 褒められてもこれ以上何も出ませんって。
 でも、こうもはっきり声にされるのは嬉しいな。

 実直なところはスポーツに対してだけでないらしい。
 山村さんの誠実でストレートな人柄から出る言葉は嘘も含みもない。

 晴人もこれくらいわかりやすければ良いのだけれど。
 でも、晴人のミステリアスな一面も好きなんだよね。

 この場にいない人に振り回されながら、水羊羹を味わっているうちに、会はお開きになったのだった。
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