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みっちりバスクチーズケーキ3
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ダイエットの効果が他人から見てもわかるくらいに出ていると考えよう。
そうポジティブに捉えることにしたのは、決して思考を放棄した結果ではない。
晴人に痩せたか問われた日の放課後、夕飯の支度をしていた母にちょうど同様のことを言われたのだ。
「スリムになったんじゃない?」
爆盛りスイーツの件は、墓場まで持っていこうと躍起になって死守しているが、ランニングのことまではさすがに隠し通せなくて、
「あら、走ってきたの? 若いうちから身体を動かす習慣をつけるのは正解よね」
初日から思いっきり見透かされていたらしい。
まあ、いつもより早い時間にジャージで現れたら、そりゃあバレバレだよなあ。
ちょうどお弁当の用意をしてくれているところだったから、翌日からはもっと脂質少なめ、タンパク質多めで作ってくれると約束してくれて、それをいまだに有言実行してくれているから助かってはいる。
「急にダイエットなんてやっぱり彼女でもできたの?」
と妙な勘ぐりが入ったのには思春期ならではの気まずさがあったけれど、恋愛に繋がっていること自体はあながち間違いでないから、女の勘というやつは恐ろしい。
まあ、もっとも僕の相手は男で、しかも彼女がいるから告白する前から負け戦なのだけども。
それでも、それ以上の詮索も余計な茶々を入れられないのはありがたいし、協力してくれるのなら手を借りないという選択肢はない。
基本的に放任とまではいかなくとも、自主性を重んじてくれる良い親なのだ。
ただ、ちょっと天然が入っているだけで。
平日の食事量に変化がない割に僕が太った原因も単なる成長期だと思っているみたいだし。
まったく、鋭いのか鈍いのか。
ただ、そんな母が「細くなった」と断言しているくらいだから、本当に痩せてきてはいるのだろう。
試しに体重計に乗ってみると、針はもともとの数値よりマイナス二キロ地点を示していた。
これは上々なのでは?
本来お正月太りする時期に爆盛りスイーツを食べられなかったこと、ここ数ヶ月は作ったお菓子を独り占めせずに皆でシェアしていたこと、適度な運動を習慣づけたことや、普段は間食なしでごくごく普通のバランスの取れた食事をしていたことなど、体重が落ちた要因は様々あると考えられるが、こんなに効果が出ているだなんて思ってもいなかった。
誤差の範囲内かもしれなくとも、ズボンのベルトが緩くなったのは本当だし、顔周りとか気持ちすっきりしたような……?
自分ではわからなくとも、立て続けに身近な人から指摘されれば、さすがに効果を実感せざるを得ない。
翌朝、早速山村さんにそのことを伝えると、
「代謝がいいんじゃないか? 話聞く限り間食が体重増加の原因みたいだし」
やはり、彼の目からしてもダイエットは成功しつつあるらしかった。
「最初もそこまで太ってなかったが」
「いやいや、ぽっちゃり超えてデブですよ」
「元がほっそりしてんだろ。手首とかさ、骨の感じでわかるよ」
そう言われて関節のあたりを確認するが、わずかに肉に埋もれていない程度の小さなコブがあるくらいで、他に変わったところはない。
「まあ、自分のなんて普通としか思わないよな」
首を傾げる僕に山村さんが呆れ交じりに教えてくれる。
「利き手じゃない方の手首を、こうやって中指と親指で掴むんだ」
くるっと、手本の通りにやってみたが、これで何が判別できるのか。
「できましたけど……」
「ほら、ちょっと余裕があるだろ」
なるほど、指の長さが手首に対して余っているのが良いらしい。
太りやすい人は逆に指の方が足りなくなるのだとか。
「一概にこうと断言できるものじゃないが、一般的に桜庭みたいなタイプは代謝のおかげでカロリー調節だけでも痩せやすいんだ」
だから、タンパク質を多めに摂って食事量を減らすのが一番効くのだとか。
ダイエットってスイーツと同じくらい奥が深い!
要は僕の体質と食事制限は相性抜群だったから、こんなにもするする痩せたってことか。
なんという偶然。
謎がまた一つ解明できて、なんだかすっきりしちゃった。
「山村さん、さすが! 詳しいですね」
嬉しくなって無意識のうちに声を弾ませるけど、
「そろそろ停滞期が来る頃だが、慢心するなよ」
彼は照れ隠しなのか、恥ずかしそうに顔を赤らめたかと思うと、一気にスピードを上げて先に行ってしまった。
そうポジティブに捉えることにしたのは、決して思考を放棄した結果ではない。
晴人に痩せたか問われた日の放課後、夕飯の支度をしていた母にちょうど同様のことを言われたのだ。
「スリムになったんじゃない?」
爆盛りスイーツの件は、墓場まで持っていこうと躍起になって死守しているが、ランニングのことまではさすがに隠し通せなくて、
「あら、走ってきたの? 若いうちから身体を動かす習慣をつけるのは正解よね」
初日から思いっきり見透かされていたらしい。
まあ、いつもより早い時間にジャージで現れたら、そりゃあバレバレだよなあ。
ちょうどお弁当の用意をしてくれているところだったから、翌日からはもっと脂質少なめ、タンパク質多めで作ってくれると約束してくれて、それをいまだに有言実行してくれているから助かってはいる。
「急にダイエットなんてやっぱり彼女でもできたの?」
と妙な勘ぐりが入ったのには思春期ならではの気まずさがあったけれど、恋愛に繋がっていること自体はあながち間違いでないから、女の勘というやつは恐ろしい。
まあ、もっとも僕の相手は男で、しかも彼女がいるから告白する前から負け戦なのだけども。
それでも、それ以上の詮索も余計な茶々を入れられないのはありがたいし、協力してくれるのなら手を借りないという選択肢はない。
基本的に放任とまではいかなくとも、自主性を重んじてくれる良い親なのだ。
ただ、ちょっと天然が入っているだけで。
平日の食事量に変化がない割に僕が太った原因も単なる成長期だと思っているみたいだし。
まったく、鋭いのか鈍いのか。
ただ、そんな母が「細くなった」と断言しているくらいだから、本当に痩せてきてはいるのだろう。
試しに体重計に乗ってみると、針はもともとの数値よりマイナス二キロ地点を示していた。
これは上々なのでは?
本来お正月太りする時期に爆盛りスイーツを食べられなかったこと、ここ数ヶ月は作ったお菓子を独り占めせずに皆でシェアしていたこと、適度な運動を習慣づけたことや、普段は間食なしでごくごく普通のバランスの取れた食事をしていたことなど、体重が落ちた要因は様々あると考えられるが、こんなに効果が出ているだなんて思ってもいなかった。
誤差の範囲内かもしれなくとも、ズボンのベルトが緩くなったのは本当だし、顔周りとか気持ちすっきりしたような……?
自分ではわからなくとも、立て続けに身近な人から指摘されれば、さすがに効果を実感せざるを得ない。
翌朝、早速山村さんにそのことを伝えると、
「代謝がいいんじゃないか? 話聞く限り間食が体重増加の原因みたいだし」
やはり、彼の目からしてもダイエットは成功しつつあるらしかった。
「最初もそこまで太ってなかったが」
「いやいや、ぽっちゃり超えてデブですよ」
「元がほっそりしてんだろ。手首とかさ、骨の感じでわかるよ」
そう言われて関節のあたりを確認するが、わずかに肉に埋もれていない程度の小さなコブがあるくらいで、他に変わったところはない。
「まあ、自分のなんて普通としか思わないよな」
首を傾げる僕に山村さんが呆れ交じりに教えてくれる。
「利き手じゃない方の手首を、こうやって中指と親指で掴むんだ」
くるっと、手本の通りにやってみたが、これで何が判別できるのか。
「できましたけど……」
「ほら、ちょっと余裕があるだろ」
なるほど、指の長さが手首に対して余っているのが良いらしい。
太りやすい人は逆に指の方が足りなくなるのだとか。
「一概にこうと断言できるものじゃないが、一般的に桜庭みたいなタイプは代謝のおかげでカロリー調節だけでも痩せやすいんだ」
だから、タンパク質を多めに摂って食事量を減らすのが一番効くのだとか。
ダイエットってスイーツと同じくらい奥が深い!
要は僕の体質と食事制限は相性抜群だったから、こんなにもするする痩せたってことか。
なんという偶然。
謎がまた一つ解明できて、なんだかすっきりしちゃった。
「山村さん、さすが! 詳しいですね」
嬉しくなって無意識のうちに声を弾ませるけど、
「そろそろ停滞期が来る頃だが、慢心するなよ」
彼は照れ隠しなのか、恥ずかしそうに顔を赤らめたかと思うと、一気にスピードを上げて先に行ってしまった。
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