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第3話 執事のため息、増産中
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「この家を復興する……?」
アレクシスは吟味するように、私の宣言を復唱する。そして、まるで目の前の私が何者なのかを確かめるような、探るような視線を向けてくる。
「……今日のシエナ様は、随分と活気に満ちていらっしゃいますね」
「えっ? ええ、紅茶を飲んでやる気がみなぎっているわ!」
「それは……良いことですね」
アレクシスは、まるで自分に言い聞かせるようにそう呟いた。菫色の瞳には、隠しきれない戸惑いの色が滲んでいるように見える。
もしかして、私が転生する前のシエナは、今の私とはまったく違う性格だったのだろうか……?
「シエナ様。私の淹れた紅茶でこの家を復興するとは、どういう事でしょう?」
仕切り直すようにアレクシスは私に問う。私は待ってましたとばかりに、勢いよくアレクシスに語りかける。
「貴方の淹れた紅茶は最高よ! 一口飲んだら、誰だって虜になるわ! さらに貴方のその美しさ! 執事としての完璧な佇まい! その全てをフル活用すればお家復興一直線よ!」
私の言葉を吟味するようにアレクシスは顎に手を当て、考え込むような姿勢をとる。真っ直ぐに伸びた背筋と、白いグローブをまとった手が美しい輪郭に添えられる姿に、思わずときめいてしまう……。
「……つまり、私の淹れた紅茶を売りにしたティーサロンでも開こうということですか?」
「そうそう、そういうこと!」
ティーサロン。それは貴族たちが集う社交の場。洗練された空間で最高の紅茶とお茶菓子を頂き、優雅に時間を過ごす空間。アレクシスとその紅茶があれば、すぐにそんな素敵空間が作れるはず……!
「シエナ様。それは無理です」
アレクシスのはっきりとした否定に、私は思わずずっこけそうになる。
「どうして?!」
「先ほど申し上げた通り、当家には資産がありません。家財道具も、本当に必要なもの以外は売り払ってしまいました」
「えっ……それじゃあつまりこの屋敷、他の部屋もこんなに殺風景なの?」
「はい。むしろ、この部屋はまだマシな方です。シエナ様がお持ちの屋敷はここだけですので、ティーサロンを開くなら必然的にここになりますが……」
アレクシスは流れるような動きで腕を掲げ、目の前の空間を指し示す。そこに広がるのは、装飾のほとんど取り払われた質素な部屋。改めて見ると、到底貴族のお嬢様の私室だとは思えない。
「ご覧の通り、それは難しいでしょう」
アレクシスはどこか申し訳なさそうな表情を浮かべながらも、私に現実を突きつけた。しかし、私はそんなことでは諦めなかった。
「じゃあ、ティーサロンじゃなくてもいいわ! アレクシス、貴方の紅茶を売るのよ!」
「誰にです?」
「それは、この街の人々によ!」
「どうやって?」
「庭先に屋台を作って、とか……」
私の冴えないアイディアを聞いて、アレクシスは深く、深くため息をつく。
「お嬢様、流石にそれは……ここは貴族街の外れで人通りも少なく、何より家名に瑕《きず》がついてしまいます」
「家名云々は置いておいたとしても、人が来ないのはまずいわね……」
私は額に手を当て目を瞑《つむ》り、一旦頭を一度冷静になる。素晴らしいアイディアが浮かんでつい興奮してしまったが、アレクシスのいう事はもっともだ。『誰に、どうやって売るのか?』それがはっきりしないことには、売り上げの見通しを立てることは出来ない。
つまり、アレクシスにティーセットを手放すなと説得することが出来ない。
……ということは、執事《アレクシス》の淹れる紅茶が飲めなくなる!!
それはまずい。……ではどうするのか? 答えは、一つ。
「街に出るわ! アレクシス、連れて行って!」
「は?」
「誰にどうやって紅茶を売るのか……実際に街を見て考えるのよ!」
私が勢いよく宣言すると、アレクシスはまたため息をついた。けれどそれは先ほどとは違い、どこか苦笑まじりの、諦め半分と呆れ半分が混ざったようなため息だった。
「……分かりました。そこまで仰るなら行きましょう。お供致します」
「ありがとう!」
街に出た私を待ち受けていたのは――大きなチャンスの予感と、そして、大きな試練だった。
アレクシスは吟味するように、私の宣言を復唱する。そして、まるで目の前の私が何者なのかを確かめるような、探るような視線を向けてくる。
「……今日のシエナ様は、随分と活気に満ちていらっしゃいますね」
「えっ? ええ、紅茶を飲んでやる気がみなぎっているわ!」
「それは……良いことですね」
アレクシスは、まるで自分に言い聞かせるようにそう呟いた。菫色の瞳には、隠しきれない戸惑いの色が滲んでいるように見える。
もしかして、私が転生する前のシエナは、今の私とはまったく違う性格だったのだろうか……?
「シエナ様。私の淹れた紅茶でこの家を復興するとは、どういう事でしょう?」
仕切り直すようにアレクシスは私に問う。私は待ってましたとばかりに、勢いよくアレクシスに語りかける。
「貴方の淹れた紅茶は最高よ! 一口飲んだら、誰だって虜になるわ! さらに貴方のその美しさ! 執事としての完璧な佇まい! その全てをフル活用すればお家復興一直線よ!」
私の言葉を吟味するようにアレクシスは顎に手を当て、考え込むような姿勢をとる。真っ直ぐに伸びた背筋と、白いグローブをまとった手が美しい輪郭に添えられる姿に、思わずときめいてしまう……。
「……つまり、私の淹れた紅茶を売りにしたティーサロンでも開こうということですか?」
「そうそう、そういうこと!」
ティーサロン。それは貴族たちが集う社交の場。洗練された空間で最高の紅茶とお茶菓子を頂き、優雅に時間を過ごす空間。アレクシスとその紅茶があれば、すぐにそんな素敵空間が作れるはず……!
「シエナ様。それは無理です」
アレクシスのはっきりとした否定に、私は思わずずっこけそうになる。
「どうして?!」
「先ほど申し上げた通り、当家には資産がありません。家財道具も、本当に必要なもの以外は売り払ってしまいました」
「えっ……それじゃあつまりこの屋敷、他の部屋もこんなに殺風景なの?」
「はい。むしろ、この部屋はまだマシな方です。シエナ様がお持ちの屋敷はここだけですので、ティーサロンを開くなら必然的にここになりますが……」
アレクシスは流れるような動きで腕を掲げ、目の前の空間を指し示す。そこに広がるのは、装飾のほとんど取り払われた質素な部屋。改めて見ると、到底貴族のお嬢様の私室だとは思えない。
「ご覧の通り、それは難しいでしょう」
アレクシスはどこか申し訳なさそうな表情を浮かべながらも、私に現実を突きつけた。しかし、私はそんなことでは諦めなかった。
「じゃあ、ティーサロンじゃなくてもいいわ! アレクシス、貴方の紅茶を売るのよ!」
「誰にです?」
「それは、この街の人々によ!」
「どうやって?」
「庭先に屋台を作って、とか……」
私の冴えないアイディアを聞いて、アレクシスは深く、深くため息をつく。
「お嬢様、流石にそれは……ここは貴族街の外れで人通りも少なく、何より家名に瑕《きず》がついてしまいます」
「家名云々は置いておいたとしても、人が来ないのはまずいわね……」
私は額に手を当て目を瞑《つむ》り、一旦頭を一度冷静になる。素晴らしいアイディアが浮かんでつい興奮してしまったが、アレクシスのいう事はもっともだ。『誰に、どうやって売るのか?』それがはっきりしないことには、売り上げの見通しを立てることは出来ない。
つまり、アレクシスにティーセットを手放すなと説得することが出来ない。
……ということは、執事《アレクシス》の淹れる紅茶が飲めなくなる!!
それはまずい。……ではどうするのか? 答えは、一つ。
「街に出るわ! アレクシス、連れて行って!」
「は?」
「誰にどうやって紅茶を売るのか……実際に街を見て考えるのよ!」
私が勢いよく宣言すると、アレクシスはまたため息をついた。けれどそれは先ほどとは違い、どこか苦笑まじりの、諦め半分と呆れ半分が混ざったようなため息だった。
「……分かりました。そこまで仰るなら行きましょう。お供致します」
「ありがとう!」
街に出た私を待ち受けていたのは――大きなチャンスの予感と、そして、大きな試練だった。
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