聖女の力が弱まったと告げられ、婚約破棄されましたが——それでも私は真実を求め、証明するために戦います

第二話：反逆の決意

王宮の大広間を出て、冷たい石の廊下を歩く私の足音が、まるでその空間を支配するかのように響いていた。私の心は今、怒りと無力感でいっぱいだ。アルバートに裏切られたこと、そしてそれを見ていた貴族たちの無関心な態度が、私を深い闇に引きずり込もうとしている。

「偽りの聖女」――その言葉が耳をつんざく。私が今まで積み重ねてきたものを、一瞬で否定された気がした。でも、それが本当に現実なのか。納得できるわけがない。

私は一歩、また一歩と歩を進めながら、心の中で繰り返していた。アルバートが私を切り捨て、エリザベスが私を「偽りの聖女」と決めつけた。その場で声を上げて反論したが、結局は無駄だった。神官の言ったことを何よりも大事にしている彼らが、私を再調査した理由が理解できない。既に聖女として認められていたはずなのに、なぜ今さら再検証が必要だったのだろうか。

冷たい石の感触が手に伝わるが、それでは何も解決しないことはわかっている。私は自分に言い聞かせるように言葉をつぶやいた。「どうしてこんなことに…」

その時、背後から一歩、また一歩と足音が近づく音が聞こえた。私の動きが止まる。振り返ると、そこにはまだ見覚えのある顔があった。

「リリアン様」

その声に私は足を止め、ゆっくりと顔を上げた。目の前に立っているのは、王宮に仕える侍女の一人、エマだった。彼女は私の癒しの力を信じてくれていた唯一の存在だった。

「エマ……」

私は息をつきながら、少し冷たく言った。「何か用？」

「すみません、急いでお伝えしなければならないことがあって」エマは慎重に歩み寄りながら言った。彼女の目はどこか心配そうだった。そうだ、私が聖女ではないと宣告されたことを、エマも知っているはずだ。

「何だか不安で仕方がありません。でも、リリアン様には一つ、確認してほしいことがあります。あの神官たちが本当にあなたを“偽り”だと言ったのは事実ですが、私が感じているのは、あの場に何か意図が隠されていたということです。リリアン様が試されているように見えたのは、ただの偶然ではないような気がして……」

「試されている？」

私はエマの言葉を遮るように、眉をひそめる。「どういうこと？」

エマは一瞬ためらった後、声をひそめて言った。「あの神官たち、そしてアルバート殿下には、リリアン様を王宮から追い出すための理由が必要だったのではないでしょうか？」

その言葉に私は驚きの表情を隠せなかった。確かに、あの場の雰囲気は不自然だった。アルバートが私を「偽りの聖女」と決めつけるのも急すぎたし、神官たちがその判断を即座に受け入れることに疑問を抱いていた。

「それに、リリアン様が癒しの力を使えなくなったのは、何かが原因だと思います。力が弱まる理由を調べる価値は、まだあるのではないでしょうか？」

エマの言葉が心に刺さった。そうだ、もしかしたら私の力は一時的に衰えただけかもしれない。それに、神官たちの調査だけで決めつけられるものではない。

「わかった、ありがとう、エマ。あなたの言う通りかもしれない。」私は決意を固め、エマを見つめた。「今は何もかもがわからない。でも、私は諦めない。真実を明らかにするまでは、どんなことがあっても戦うつもりだ。」

エマは微笑みを浮かべ、うなずく。「私もお手伝いできることがあれば、何でも言ってください。リリアン様が力を取り戻すその日まで、私はあなたを信じています。」

その言葉を胸に、私は深く息をつき、王宮を後にした。これから私は、自分が本物の聖女であることを証明しなければならない。どんなに困難でも、どんなに危険でも、私は最後まで戦い抜くつもりだ。

「見てろよ、アルバート。私は必ず、あんたを見返してやる」

つぶやいたその言葉が、私の胸の中で燃えるように響く。

王宮を出て、広がる広場を一歩一歩踏みしめながら、私は再び歩き出した。もう後戻りはできない。私には、証明しなければならないことがある。それが何であれ、私は信じ続ける。そして、必ずその力を取り戻す。

誰にも私の力を否定させない——それが、今の私の決意だった。