2 / 79
《過去》 両親の出会い
しおりを挟む
スライスト・ワッサンモフは幼い時から神童と言われ、次期宰相と呼び声高い公爵令息だった。
ちなみに宰相はほぼ世襲性なので、そう言われるのは現宰相フォカッチャー・クロダイン公爵には屈辱でしかない。
「我が息子があいつに劣ると言うのか? 代々親の仕事を継ぐこの国の掟に背く気か!」
なんて場違いな怒りを、若きスライストに向け、事もあろうにハニートラップを仕掛けた。
彼はクロダイン公爵家の小飼のクルル・ミズーレン伯爵に、勢いで依頼を出す。
「あの男に女を宛がって、堕落させろ。なに、真面目だけが取り柄の童貞で、女への免疫が微塵もないから簡単だろう」
「お任せ下さい、公爵様。必ずや希望の通りに」
ミズーレン伯爵家は、クロダイン公爵家を守る為に存在する清掃屋。逆らうことは出来ない。
そんなクルルは、以前孤児院から引き取って教育していたミカヌレを使うことにした。
妖精のようなスラッとしたプロポーションと、水色の髪と瞳を持つ神秘的な雰囲気で、愛嬌のある娘を。引き取った時は目が大きくて可愛い、まるで天使のような幼女だった。
まあ最初から、そういう目的で伯爵家に来た訳なのだが。
まだ入宮間もないスライストに、彼女をメイドとして近付かせて、籠絡させようとしたのだ。
誤算だったのはフォカッチャー・クロダイン公爵の息子ベグルも彼女に堕ちたことだ。
この息子が次期宰相にはなれないのは、女性に惚れっぽいせいで、アホみたいに貢ぐからだった。その間の仕事も適当になり、大事な仕事を任せられない。
優しいしタレ目で子犬のように可愛い顔で、仲間なら良いが上司には向かない性格だった。
本人もそれを自覚しているので、次期宰相なんて目指してもいない。逆に「スライストなら安心だな。頼りになる~」と、本心から微笑んで歓迎していた程だ。
だからこそ仲間も多いし、振られることも多いが女性にも人気があった。
素直で奔放なミカヌレと、彼女に一目惚れしたベグル。
二人は出会い恋に落ちたが、ミカヌレの任務はあくまでもスライストの籠絡だった。
「スライスト様、少し休憩して下さいな。無理をすれば若ハゲになると、おばちゃん達が言ってましたよ」
「本当か! 知らなかったよ。じゃあ私の父は、かなり無理をしたのだろうな。お茶を貰うとしようか」
「そうそう。仕事なんかでハゲたら勿体ないですよ」
「そうだな。程ほどにしておこう」
冗談なのか本気なのか分からない会話をしながら、二人の距離は近付いていった。
仕事一筋のスライストは、純粋無垢な少女のようなミカヌレに心を許し、フォカッチャーの思惑通りになった。
ただベグルのように女性に入れ込むことはなく、節度を保った付き合いが続いていく。
業を煮やしたフォカッチャーがクルルに命じ、ミカヌレに催淫剤を盛ることを命じたのだ。
ちなみに宰相はほぼ世襲性なので、そう言われるのは現宰相フォカッチャー・クロダイン公爵には屈辱でしかない。
「我が息子があいつに劣ると言うのか? 代々親の仕事を継ぐこの国の掟に背く気か!」
なんて場違いな怒りを、若きスライストに向け、事もあろうにハニートラップを仕掛けた。
彼はクロダイン公爵家の小飼のクルル・ミズーレン伯爵に、勢いで依頼を出す。
「あの男に女を宛がって、堕落させろ。なに、真面目だけが取り柄の童貞で、女への免疫が微塵もないから簡単だろう」
「お任せ下さい、公爵様。必ずや希望の通りに」
ミズーレン伯爵家は、クロダイン公爵家を守る為に存在する清掃屋。逆らうことは出来ない。
そんなクルルは、以前孤児院から引き取って教育していたミカヌレを使うことにした。
妖精のようなスラッとしたプロポーションと、水色の髪と瞳を持つ神秘的な雰囲気で、愛嬌のある娘を。引き取った時は目が大きくて可愛い、まるで天使のような幼女だった。
まあ最初から、そういう目的で伯爵家に来た訳なのだが。
まだ入宮間もないスライストに、彼女をメイドとして近付かせて、籠絡させようとしたのだ。
誤算だったのはフォカッチャー・クロダイン公爵の息子ベグルも彼女に堕ちたことだ。
この息子が次期宰相にはなれないのは、女性に惚れっぽいせいで、アホみたいに貢ぐからだった。その間の仕事も適当になり、大事な仕事を任せられない。
優しいしタレ目で子犬のように可愛い顔で、仲間なら良いが上司には向かない性格だった。
本人もそれを自覚しているので、次期宰相なんて目指してもいない。逆に「スライストなら安心だな。頼りになる~」と、本心から微笑んで歓迎していた程だ。
だからこそ仲間も多いし、振られることも多いが女性にも人気があった。
素直で奔放なミカヌレと、彼女に一目惚れしたベグル。
二人は出会い恋に落ちたが、ミカヌレの任務はあくまでもスライストの籠絡だった。
「スライスト様、少し休憩して下さいな。無理をすれば若ハゲになると、おばちゃん達が言ってましたよ」
「本当か! 知らなかったよ。じゃあ私の父は、かなり無理をしたのだろうな。お茶を貰うとしようか」
「そうそう。仕事なんかでハゲたら勿体ないですよ」
「そうだな。程ほどにしておこう」
冗談なのか本気なのか分からない会話をしながら、二人の距離は近付いていった。
仕事一筋のスライストは、純粋無垢な少女のようなミカヌレに心を許し、フォカッチャーの思惑通りになった。
ただベグルのように女性に入れ込むことはなく、節度を保った付き合いが続いていく。
業を煮やしたフォカッチャーがクルルに命じ、ミカヌレに催淫剤を盛ることを命じたのだ。
134
あなたにおすすめの小説
私ではありませんから
三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」
はじめて書いた婚約破棄もの。
カクヨムでも公開しています。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
いらない子のようなので、出ていきます。さようなら♪
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
魔力がないと決めつけられ、乳母アズメロウと共に彼女の嫁ぎ先に捨てられたラミュレン。だが乳母の夫は、想像以上の嫌な奴だった。
乳母の息子であるリュミアンもまた、実母のことを知らず、父とその愛人のいる冷たい家庭で生きていた。
そんなに邪魔なら、お望み通りに消えましょう。
(小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています)
拝啓。私を追い出した皆様へ! 化け物と噂の辺境伯に嫁がされましたが噂と違い素敵な旦那様と幸せに暮らしています。
ハーフのクロエ
恋愛
公爵家の長女のオリビアは実母が生きている時は公爵家令嬢として育ち、8歳の時、王命で王太子と婚約して12歳の時に母親が亡くなり、父親の再婚相手の愛人だった継母に使用人のように扱われていた。学園の卒業パーティーで婚約破棄され、連れ子の妹と王太子が婚約してオリビアは化け物と噂のある辺境伯に嫁がされる。噂と違い辺境伯は最強の武人で綺麗な方でオリビアは前世の日本人の記憶持ちで、その記憶と魔法を使い領地を発展させて幸せになる。
彼のいない夏
月樹《つき》
恋愛
幼い頃からの婚約者に婚約破棄を告げられたのは、沈丁花の花の咲く頃。
卒業パーティーの席で同じ年の義妹と婚約を結びなおすことを告げられた。
沈丁花の花の香りが好きだった彼。
沈丁花の花言葉のようにずっと一緒にいられると思っていた。
母が生まれた隣国に帰るように言われたけれど、例え一緒にいられなくても、私はあなたの国にいたかった。
だから王都から遠く離れた、海の見える教会に入ることに決めた。
あなたがいなくても、いつも一緒に海辺を散歩した夏はやって来る。
婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。
「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった
佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。
その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。
フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。
フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。
ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。
セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。
彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる