弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり

文字の大きさ
25 / 79

新たなる商売 その1

しおりを挟む
 ミカヌレの持っていた真鍮のアクセサリーと、コーラスとブルーベル達が捨てた真鍮をかき集め、子供達の練習用にとそれらを装飾品鍛冶師に提供した。

 目下コーラスとブルーベルは、金属的価値のある金と銀ベースの装飾品集めに夢中だ。
 ある程度の年齢のご婦人ならば金やプラチナが似合いそうだが、まだ8歳のブルーベルがそれらを身に付けても、浮いている感じに見えた。

「まだまだ若いのだから、可愛いものを付ければ良いのに」

 本人に言う程仲良くないから、伝えたりはしないけれど。

 もし……(考えたくはないが)スライストが戻らなければ、叔父クリム達が公爵家を継ぐ可能性もある。将来を見据えて、いつでも何処に出ても良いように、彼らは服装を整えているのかもしれない。


(私が何か言うのは、時期尚早でしょうね。何の権限も持たない子供だもの)

 接点が殆どないことで、今のところ争うことにもなっていない現状。失言を回避することができたのは、コロネにとっては正解だった。
 何しろ、1対(厚かましい)3人なので。



 最近は、最も高価と言われる血赤珊瑚チアカサンゴを入手しているコーラス。深みのある赤色で傷や白濁が少ない、傷がないものが最高級品らしい。
 価値を決めるポイントは血赤色、10mmより大きく丸玉大きさ、透明感、そして真珠の中心部の白い部分に傷がないかで、これらが揃うほど高額になり、数百万から数千万円の物もあるそうだ(執事レイアー調べ)。


 高級品とは真逆に、模造真珠イミテーションパールと言うものもある。ガラスの核に真珠層を模した塗料を吹き付けたもので、本物に近い重みと輝きを持つものをガラスパールと言い、安価で購入できる。数百円から数千円で、ネックレスができるそう。


「せっかくいろいろな塗料で工夫できるから、色を衣装に合わせて安く楽しめば良いのに(本音は、別に王族でもないのだから、血赤珊瑚はいらないでしょ! 少なくても私はいらないわ。お金の方が大事!)」と、ボソリ呟くコロネ。
 またまた月末決算が、とんでもない赤字になっていたのだ。



 コロネはファッションについても、ミカヌレや侍女達の英才教育の賜物で、裏付けされた発想力とTPO能力(時と所と場合に応じて、服装などを選ぶこと。いわゆる常識)を持つ。
『審美眼はここにあり』なのだが、今は自分の身にお金をかけている余裕はないのだった。




◇◇◇
 幼い時から美しさを磨き続けた、誘惑の隠密達はボディケア(筋肉が付きすぎない筋トレ)や、自国・他国の服装、装飾、言語に精通していた為、それを教え込まれてきたコロネも、知らずとそれが知識と共に身に付いている。
 後は実践で動き、磨きをかけるか否かの前段階だ。

 神からの愛とも言える諸刃の能力、『超記憶』で習得したことは忘れない為、7か国語の会話と筆記が可能だ。
 だから街中でも他国者の会話内容が分かり、どんなことを話しているかを聞けるのだ。

 天才の幼児・・・・警戒されず相手に近付けるコロネほど、諜報に向く者もいないだろう。勿論なるつもりはなく、周囲もそれを許さないだろうけど。

 みんなが彼女コロネには、諜報なんて無縁で生きて欲しいと願っているから。


 まあ、それはさておき。
 子供達が鍛冶師に弟子入りしてから、1年半が過ぎて、作品作りにも着手させて貰えている。
 給料は完全に鍛冶師払いになり、コロネの援助から外れたのだ。


「親方に認められてすごいわ。よく頑張ったわね」
「早く一人前に成りたかったからな。できる力は出したと思う」 
「そうなのね、偉いわケルアン。私も頑張らないとね」

 コロネに微笑まれ労われている姿を見つけ、他の2人も駆けつけて来た。

「僕も頑張ったよ。これからも頑張って、コロネさんに似合う髪留めを作るから、待っててね」
「ありがとうね、シャイン。でも無理しないで」

「うん! ありがとうね。優しいなぁ(コロネさん、大好き!)」

    負けじとマイケルも声をかける。
「お、俺はブローチを作ります。デザインもいろいろと考えてます!」
「まあ! 忙しいのに、ありがとう。でも私のは急がなくて良いからね。まずは修行を頑張って」

「はい。修行、頑張ります!」



 それを見ていた鍛冶師の師匠ガンテツは、3人を我が子ように見守っている。ずっと顔を合わせてきたこの4人は、仲間以上の絆ができていた。


(お嬢さんがこの子らの、努力する原動力になっているみたいだな。でもなあ、公爵令嬢とこの子らでは身分がなあ。だけどセサミの旦那がどう考えているか分からんから、もしかして家から出されて平民……ってこともありえそうだし。今は見守るとするか)


 セサミの態度により、公爵家の使用人達、シスターのチェルシー、ギルド長モロコシ、鍛冶師ガンテツ、孤児院の子供達もコロネが蔑ろにされていると思っている。

 そのうち家を追われるのではないかと、いつも心配していた。 

「クリム一家の支出をコロネが補填できなくなれば、責任を取らされるらしい。協力は惜しまないけど、もしダメだった時は孤児院で暮らせば良いさ」
 なんてことが、真しやかに囁かれていた。


 コロネはまだ、孤児院での暮らしは考えていなかったが、両親がいなくなってから家を出される可能性は心の片隅に置いていた。

「孤児院の土地は教会名義になっているし、護衛もいるから安全よね。最悪の場合は暫く間借りさせて貰おうかな♪」

 なんて楽しそうなコロネと、「駄目ですよ、そんなこと考えちゃ!」と、首を横に振り情けない顔になるアンナ。


 商売の才能のあるコロネだから、平民になっても生きていけそうな気もする。でもまだ6歳になったばかりなので、生き急がないで欲しいけれど。





    
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私ではありませんから

三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」 はじめて書いた婚約破棄もの。 カクヨムでも公開しています。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

いらない子のようなので、出ていきます。さようなら♪

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 魔力がないと決めつけられ、乳母アズメロウと共に彼女の嫁ぎ先に捨てられたラミュレン。だが乳母の夫は、想像以上の嫌な奴だった。  乳母の息子であるリュミアンもまた、実母のことを知らず、父とその愛人のいる冷たい家庭で生きていた。  そんなに邪魔なら、お望み通りに消えましょう。   (小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています)  

拝啓。私を追い出した皆様へ! 化け物と噂の辺境伯に嫁がされましたが噂と違い素敵な旦那様と幸せに暮らしています。

ハーフのクロエ
恋愛
 公爵家の長女のオリビアは実母が生きている時は公爵家令嬢として育ち、8歳の時、王命で王太子と婚約して12歳の時に母親が亡くなり、父親の再婚相手の愛人だった継母に使用人のように扱われていた。学園の卒業パーティーで婚約破棄され、連れ子の妹と王太子が婚約してオリビアは化け物と噂のある辺境伯に嫁がされる。噂と違い辺境伯は最強の武人で綺麗な方でオリビアは前世の日本人の記憶持ちで、その記憶と魔法を使い領地を発展させて幸せになる。

彼のいない夏

月樹《つき》
恋愛
幼い頃からの婚約者に婚約破棄を告げられたのは、沈丁花の花の咲く頃。 卒業パーティーの席で同じ年の義妹と婚約を結びなおすことを告げられた。 沈丁花の花の香りが好きだった彼。 沈丁花の花言葉のようにずっと一緒にいられると思っていた。 母が生まれた隣国に帰るように言われたけれど、例え一緒にいられなくても、私はあなたの国にいたかった。 だから王都から遠く離れた、海の見える教会に入ることに決めた。 あなたがいなくても、いつも一緒に海辺を散歩した夏はやって来る。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった

佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。 その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。 フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。 フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。 ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。 セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。 彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。

処理中です...