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メイド長、タバサの姉。 その2
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そんなタバサとジャムレが不仲の時。
彼女達の母ルマンサーは、セサミの指示である貿易事業の為に外国で走り回っている最中だった。公爵家のメイド長になることを受け入れて嫁いだ為、多忙でも不満は言えなかった。
家庭教師と祖父母は、タバサの兄達には厳しく教育したが、姉達やタバサには甘く接していた。そんな娘達の隠された軋轢に、微塵も気付くことはなく。
納得できない日々の中、頭の中の水前寺聖子が覚醒する。
「陰険なんだよ、少しくらい年上なだけで。文句があるなら堂々と来い。隠れてする嫌がらせは、小物のやることだぜ!」
口調も目付きも、今までのタバサとは違い、大人が話しているようだった。戸惑うジャムレも退くことはない。
周囲へ被っている猫は脱ぎ去り、タバサに向かって吠えた。
「何よ、偉そうに。それが姉に対する態度なの? 良いわ、やってやろうじゃない! 途中で止めないわよ!」
「望むところだ! 行くぜ!」
まあ、5歳と7歳の子供の喧嘩なので、蹴ったり叩いたりで終わった。得物がなくて何よりなことだ。
まあそれなりに傷だらけだったが……。
「フッ♪ 何だよ、意外とやるじゃん。見直したぜ」
「はぁはぁ、貴女だってそうよ。暇なくみんなに可愛がられているだけだから、弱いと思ってたのに」
「何だと! あはは、面白いな。可愛いと呼ばれて喜ぶ年じゃねえよ。これでも前世はトップ張ってたんだぜ」
「トップ? 喧嘩でって、こと? 嘘でしょ! あ、前世って……そうなのね? 女の子でも喧嘩をする世界なのね。すごいわ!」
殴りあった2人は、素で話すことで仲良くなれた。聖子の世界が古代に近く、全員で戦う野蛮な場所で生き抜いて死んだのだと、ジャムレは独自解釈をしていたが。
それからタバサ(聖子)の口調も直らない。
けれど……。
家庭教師から「令嬢に擬態するのも、この貴族の世界で生き延びる大事なことですよ。どうせなら足を引っ張りあうより、自らを高めて上を目指す方が素敵でしょ」なんて言われ、成長と共に外では偽装することに成功したタバサ。
帰って来た母ルマンサーは、最初は戸惑ったものの友人のように変化したタバサを歓迎した。
「本当に安心だわ。裏表ない話し相手がいてくれて、とっても嬉しいわ♪」
「そうか。母さんも大変だな。碌に家族内の空気も読めないようなのが旦那で。ここでは離婚が出来ないのか? 母さんなら優秀だから、働く場所はたくさんあるだろ?」
「そうね。最悪はそれでも良いかもだけど、旦那様の顔だけは好きなのよ。貴女達も美人なのは、あの人の力もあるからね。
それに貴族の世界と平民の世界は、格差があって大変なの。貴族だから守られているところも、結構あるのよ。
タバサは時間があるのだから、ゆっくり考えなさいね」
苦労人の母ルマンサーは、父の顔に惚れて失敗した感じがする。他にも条件の良い男性に、結構求婚されていたらしいのに。
(恋が理性を崩壊させると言うのは、本当らしいな)
喧嘩だけの青春を過ごし散った聖子には、恋がよく分からない。未知の世界だ。
「顔ね……。私も美形が好きだし、目がいくけれど、気を付けるわ。お互いに気を付けましょ、タバサ」と、ジャムレが言う。
「ああ。私は別に顔じゃ選ばないし。大事なのは拳と話し合う気持ちだ!」
「いや、結婚相手の話なのに?」
「そうだ。結婚するのに、それは譲れないぞ」
「アハハハハッ。面白いわ。筋肉だけでアホな人は駄目よ。タバサも短気なんだから、止めてくれる人がいないと後が大変なんだから!」
「そうか、そうだな。ありがとうな、ジャムレ」
「どういたしまして。たった一人の愛しい妹よ」
「愛しいか。くぅ、良い言葉だな」
「もう、おじさんみたいよ。プフフッ、変な子」
ジャムレの5つ上の姉、クリッキーとタバサは結局和解しないままだった。数年後姉の方は他家へ嫁ぐ。
前世を思い出して、すっかり人格が変わったタバサを受け入れられぬまま。
最後に「嫉妬したのよ。ごめんね」と頭を下げてくれたが。
時が流れ、未婚のままタバサはワッサンモフ公爵家のメイドになり、竹を割ったような性格が好まれてメイド長になった。
侍女長メロアンとは態度が粗雑な部分を指摘され、ずいぶんと戦った。そして隠密の彼女の実力を見せつけられ、彼女の弟子兼(一方的に)心の友となった。
タバサがレイアーを様付けで呼び、メロアンを呼び捨てにするのはそう言うことである。
◇◇◇
そんな彼女は、客室へ入る前にブルーベルの肩を掴んだ。むんずと勢い良く。
「ブルーベルお嬢様、ちょっとだけお付き合い下さいよ。教養を学ぶ時間です!」
「何よ、あんた。私がそ……」
ブルーベルが喚く前に彼女の背部にまわり、首筋を手刀でトンとして気絶させた後に、肩に担いだタバサ。
「さあ行こうか。お嬢様」
タバサは不敵に笑う。楽しげに。
彼女達の母ルマンサーは、セサミの指示である貿易事業の為に外国で走り回っている最中だった。公爵家のメイド長になることを受け入れて嫁いだ為、多忙でも不満は言えなかった。
家庭教師と祖父母は、タバサの兄達には厳しく教育したが、姉達やタバサには甘く接していた。そんな娘達の隠された軋轢に、微塵も気付くことはなく。
納得できない日々の中、頭の中の水前寺聖子が覚醒する。
「陰険なんだよ、少しくらい年上なだけで。文句があるなら堂々と来い。隠れてする嫌がらせは、小物のやることだぜ!」
口調も目付きも、今までのタバサとは違い、大人が話しているようだった。戸惑うジャムレも退くことはない。
周囲へ被っている猫は脱ぎ去り、タバサに向かって吠えた。
「何よ、偉そうに。それが姉に対する態度なの? 良いわ、やってやろうじゃない! 途中で止めないわよ!」
「望むところだ! 行くぜ!」
まあ、5歳と7歳の子供の喧嘩なので、蹴ったり叩いたりで終わった。得物がなくて何よりなことだ。
まあそれなりに傷だらけだったが……。
「フッ♪ 何だよ、意外とやるじゃん。見直したぜ」
「はぁはぁ、貴女だってそうよ。暇なくみんなに可愛がられているだけだから、弱いと思ってたのに」
「何だと! あはは、面白いな。可愛いと呼ばれて喜ぶ年じゃねえよ。これでも前世はトップ張ってたんだぜ」
「トップ? 喧嘩でって、こと? 嘘でしょ! あ、前世って……そうなのね? 女の子でも喧嘩をする世界なのね。すごいわ!」
殴りあった2人は、素で話すことで仲良くなれた。聖子の世界が古代に近く、全員で戦う野蛮な場所で生き抜いて死んだのだと、ジャムレは独自解釈をしていたが。
それからタバサ(聖子)の口調も直らない。
けれど……。
家庭教師から「令嬢に擬態するのも、この貴族の世界で生き延びる大事なことですよ。どうせなら足を引っ張りあうより、自らを高めて上を目指す方が素敵でしょ」なんて言われ、成長と共に外では偽装することに成功したタバサ。
帰って来た母ルマンサーは、最初は戸惑ったものの友人のように変化したタバサを歓迎した。
「本当に安心だわ。裏表ない話し相手がいてくれて、とっても嬉しいわ♪」
「そうか。母さんも大変だな。碌に家族内の空気も読めないようなのが旦那で。ここでは離婚が出来ないのか? 母さんなら優秀だから、働く場所はたくさんあるだろ?」
「そうね。最悪はそれでも良いかもだけど、旦那様の顔だけは好きなのよ。貴女達も美人なのは、あの人の力もあるからね。
それに貴族の世界と平民の世界は、格差があって大変なの。貴族だから守られているところも、結構あるのよ。
タバサは時間があるのだから、ゆっくり考えなさいね」
苦労人の母ルマンサーは、父の顔に惚れて失敗した感じがする。他にも条件の良い男性に、結構求婚されていたらしいのに。
(恋が理性を崩壊させると言うのは、本当らしいな)
喧嘩だけの青春を過ごし散った聖子には、恋がよく分からない。未知の世界だ。
「顔ね……。私も美形が好きだし、目がいくけれど、気を付けるわ。お互いに気を付けましょ、タバサ」と、ジャムレが言う。
「ああ。私は別に顔じゃ選ばないし。大事なのは拳と話し合う気持ちだ!」
「いや、結婚相手の話なのに?」
「そうだ。結婚するのに、それは譲れないぞ」
「アハハハハッ。面白いわ。筋肉だけでアホな人は駄目よ。タバサも短気なんだから、止めてくれる人がいないと後が大変なんだから!」
「そうか、そうだな。ありがとうな、ジャムレ」
「どういたしまして。たった一人の愛しい妹よ」
「愛しいか。くぅ、良い言葉だな」
「もう、おじさんみたいよ。プフフッ、変な子」
ジャムレの5つ上の姉、クリッキーとタバサは結局和解しないままだった。数年後姉の方は他家へ嫁ぐ。
前世を思い出して、すっかり人格が変わったタバサを受け入れられぬまま。
最後に「嫉妬したのよ。ごめんね」と頭を下げてくれたが。
時が流れ、未婚のままタバサはワッサンモフ公爵家のメイドになり、竹を割ったような性格が好まれてメイド長になった。
侍女長メロアンとは態度が粗雑な部分を指摘され、ずいぶんと戦った。そして隠密の彼女の実力を見せつけられ、彼女の弟子兼(一方的に)心の友となった。
タバサがレイアーを様付けで呼び、メロアンを呼び捨てにするのはそう言うことである。
◇◇◇
そんな彼女は、客室へ入る前にブルーベルの肩を掴んだ。むんずと勢い良く。
「ブルーベルお嬢様、ちょっとだけお付き合い下さいよ。教養を学ぶ時間です!」
「何よ、あんた。私がそ……」
ブルーベルが喚く前に彼女の背部にまわり、首筋を手刀でトンとして気絶させた後に、肩に担いだタバサ。
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タバサは不敵に笑う。楽しげに。
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