55 / 119
噛み合わない話し合い
ミディアはブルーベルから謝罪の手紙を貰ってから、彼女の心配をしていた。
そして公爵邸での二度目のお茶会の時、しおらしくて礼儀も整っている彼女を見て、ギャップ萌えしていたのだ。無意識のうちに。
斯くして彼は恋をした。
対するブルーベルは訓練に必死であり、それどころではない。
傍目にも彼の目が、彼女を追うのが分かるくらいに。
面白がったタバサが 「おおっ、良い雰囲気じゃん。返信の言葉も優しかったもんな。将来性もありそうだな」と言えば、
「そうですね。(コロネ様に似合う)とても誠実な方だと思います。(父と違って落ち着いているし)とても好感が持てますね」と、ブルーベルは微笑んだ。
「おっ! 好評価じゃないか!」
「勿論ですよ。(コロネ様のお相手ですから)大切に思っております。今の自分の出来る限り、(お二人の)お役に立ちたいと思っております」
「(ん~。なんか、ニュアンスが違う気がするぞ) コロネ様とミディア様の婚約は仮だから、好きなら好きでも良いんだぞ。もし好意があるならだけど……」
「いえいえ、そんな。(平民確定の)私とは身分が違いますよ。そんなこと考えるだけで、不敬ですよ。フフフッ」
齟齬がいろいろと重なる会話だが、タバサはいつも一緒なので何となく理解が追い付いた。
(またどうせ、くだらないこと考えているんだろ? お前は平民になんてならないんだから、好きなら良いんだぞ。跡継ぎでない伯爵令息程度、養子縁組して嫁がせてやれるから。私に任しておきな!)と、ズレながらも解釈をするが、そうでない者が後ろにいたのだ。
タバサも恋愛偏差値0だが、同じく0のコロネだ。
「そ、そうだったのね。私ったら気付かずに、鈍くてごめんなさいね」
「違いますよ、コロネ様……。おそらく彼の片想 「コロネお嬢様、良いんですか? ミディア様のことはお好きではないのですか?」え、あら、タバサってば、この話はお祖父様の無茶ぶりよ。ふふふっ」
アンナが否定しようとしたのに、タバサが話に割り込み、コロネが「政略なのよ。知ってるでしょ」と、微笑んだ。
「ああ、そうでした。クソ爺のごり押しでしたね。じゃあ!」
「ええ。ブルーベル次第よ。くっ付けるなら手伝うわよ」
ブルーベルに聞こえないように、囁くように話していたので、こんなことを話しているなんて本人は知らなかった。
恋愛偏差値0同士で、話が噛み合う奇跡が起きた。アンナは呆れて声も出せない。
「じゃあ商談の時は、ブルーベルに私に変装して貰ってお茶でも飲んで貰おうかな? そうすれば家にいなくても平気でしょ?」
「平気かどうかは……。でもコロネお嬢様が商談等があれば、ブルーベルの訓練として身代わりはさせられます。
ミディア様はブルーベルが好きなようですし、彼の護衛は離れているので、顔の区別はつかないでしょう。クリム様とコーラス様は、お茶会を見に来ることもありませんしね。
ブルーベルには、私から行っておきますから」
「本当に。助かるわ。実は私、両親の近くで暮らしたいから、市井で暮らしてみようかと思って。私が外に出ても、今なら叔父くらいしか不審に思わないでしょ? 熱々になった私の両親の家には、いくら私でも住めないしね。
でも心配しないでね。私の家はモロコシさんが紹介してくれた、元冒険者夫婦の営む食堂の2階なの。シェフもいらないのよ、すごいでしょ!」
「え、お嬢様、それって。みんな知ってるんですか?」
「ううん、まだよ。タバサが一番乗りね。うふっ」
額に手を置いて、暫し思考停止のタバサ。
でも、すぐ復活!
「それ面白いですね。私は全面的に賛成です!」
「嘘でしょ、コロネお嬢様。私、聞いてないです」
「うん、今言ったからね。アンナは2番乗りね。ふふっ」
「もう、笑い事じゃないです。それなら私もお供します~」
「あらっ、ダメよ。週に3回くらい行って来るだけだし、ずっといるんじゃないんだし」
「でも~。そうだ、レイアー様にも相談しましょう!」
「そうね♪ 私もそう思ってたのよ」
上機嫌のコロネに、困惑気味のタバサに、半泣きのアンナ。
コロネも何となく、アンナに言うと面倒くさいと思い、黙っていたのだった。正解なのだが。
◇◇◇
「良いと思いますよ。2年も離れていたんですし。仕事先の商会にも近くて、行きやすいでしょ?」
レイアーがあっさり許可し、メロアンも頷く。
「ええ、私も賛成です。そもそもミディア様の父であるモンテカルロ伯爵は、完全に公爵家の婿入り狙いです。コロネ様がもし後継から外れれば、すぐに解消するでしょう。公には病床にある、スライスト様の友人だと言うのに。友人の娘を支える気もない、薄情者です。
現に伯爵夫人は、クリム夫妻が次期公爵になるなら、ブルーベルの方が良いのではと言って、最初の顔合わせにも来ていないですし。お茶会のことなら、何とでもなります」
「おおっ、そこまで調べていたのね。なら、良いわよね。元々仮婚約で、いつでも解消できるものだし。それに……あの二人が良い感じなら、応援したいわ。もし家を継げなくても、伯爵令息と子爵令嬢なら釣り合いも取れるし。なーんて、恋愛のことはよく分からないけれど」
「まあ、コロネお嬢様。そこまでお考えだったのですね。アンナは感動しました!」
「本当ですよ。私も目から鱗が落ちました」と、納得のタバサだ。
◇◇◇
そんな感じで、セサミとミディアの護衛にだけバレないように、今後はブルーベルが変装して、お茶会に参加することが決まった。
ブルーベルには詳細は明かされていない。コロネが商談で多忙の為、婚約者を放置してセサミに怒られないようにとだけ伝えている。
明らかに恋しちゃってるミディアには、「コロネ様が多忙の為に、暫くブルーベルがお相手します。何卒、ご内密に」と話している。うんうんと、何度も頷いてくれ、こちらも了承済みだ。
「セサミ様も、仮婚約だからいつでも解消できると言っていたし、このくらい良いよね」と、罪悪感はないようで安心だ。
そんな感じでコロネは、時々食堂の2階に泊まり、親子三人で夕食を食べるのだった。
隠密達が護衛として、近くにいることは気付かずに。
そしてその頻度が次第に増え、食堂の2階に定住することになるのだった。
開始は3回/週くらいからだ。
そして公爵邸での二度目のお茶会の時、しおらしくて礼儀も整っている彼女を見て、ギャップ萌えしていたのだ。無意識のうちに。
斯くして彼は恋をした。
対するブルーベルは訓練に必死であり、それどころではない。
傍目にも彼の目が、彼女を追うのが分かるくらいに。
面白がったタバサが 「おおっ、良い雰囲気じゃん。返信の言葉も優しかったもんな。将来性もありそうだな」と言えば、
「そうですね。(コロネ様に似合う)とても誠実な方だと思います。(父と違って落ち着いているし)とても好感が持てますね」と、ブルーベルは微笑んだ。
「おっ! 好評価じゃないか!」
「勿論ですよ。(コロネ様のお相手ですから)大切に思っております。今の自分の出来る限り、(お二人の)お役に立ちたいと思っております」
「(ん~。なんか、ニュアンスが違う気がするぞ) コロネ様とミディア様の婚約は仮だから、好きなら好きでも良いんだぞ。もし好意があるならだけど……」
「いえいえ、そんな。(平民確定の)私とは身分が違いますよ。そんなこと考えるだけで、不敬ですよ。フフフッ」
齟齬がいろいろと重なる会話だが、タバサはいつも一緒なので何となく理解が追い付いた。
(またどうせ、くだらないこと考えているんだろ? お前は平民になんてならないんだから、好きなら良いんだぞ。跡継ぎでない伯爵令息程度、養子縁組して嫁がせてやれるから。私に任しておきな!)と、ズレながらも解釈をするが、そうでない者が後ろにいたのだ。
タバサも恋愛偏差値0だが、同じく0のコロネだ。
「そ、そうだったのね。私ったら気付かずに、鈍くてごめんなさいね」
「違いますよ、コロネ様……。おそらく彼の片想 「コロネお嬢様、良いんですか? ミディア様のことはお好きではないのですか?」え、あら、タバサってば、この話はお祖父様の無茶ぶりよ。ふふふっ」
アンナが否定しようとしたのに、タバサが話に割り込み、コロネが「政略なのよ。知ってるでしょ」と、微笑んだ。
「ああ、そうでした。クソ爺のごり押しでしたね。じゃあ!」
「ええ。ブルーベル次第よ。くっ付けるなら手伝うわよ」
ブルーベルに聞こえないように、囁くように話していたので、こんなことを話しているなんて本人は知らなかった。
恋愛偏差値0同士で、話が噛み合う奇跡が起きた。アンナは呆れて声も出せない。
「じゃあ商談の時は、ブルーベルに私に変装して貰ってお茶でも飲んで貰おうかな? そうすれば家にいなくても平気でしょ?」
「平気かどうかは……。でもコロネお嬢様が商談等があれば、ブルーベルの訓練として身代わりはさせられます。
ミディア様はブルーベルが好きなようですし、彼の護衛は離れているので、顔の区別はつかないでしょう。クリム様とコーラス様は、お茶会を見に来ることもありませんしね。
ブルーベルには、私から行っておきますから」
「本当に。助かるわ。実は私、両親の近くで暮らしたいから、市井で暮らしてみようかと思って。私が外に出ても、今なら叔父くらいしか不審に思わないでしょ? 熱々になった私の両親の家には、いくら私でも住めないしね。
でも心配しないでね。私の家はモロコシさんが紹介してくれた、元冒険者夫婦の営む食堂の2階なの。シェフもいらないのよ、すごいでしょ!」
「え、お嬢様、それって。みんな知ってるんですか?」
「ううん、まだよ。タバサが一番乗りね。うふっ」
額に手を置いて、暫し思考停止のタバサ。
でも、すぐ復活!
「それ面白いですね。私は全面的に賛成です!」
「嘘でしょ、コロネお嬢様。私、聞いてないです」
「うん、今言ったからね。アンナは2番乗りね。ふふっ」
「もう、笑い事じゃないです。それなら私もお供します~」
「あらっ、ダメよ。週に3回くらい行って来るだけだし、ずっといるんじゃないんだし」
「でも~。そうだ、レイアー様にも相談しましょう!」
「そうね♪ 私もそう思ってたのよ」
上機嫌のコロネに、困惑気味のタバサに、半泣きのアンナ。
コロネも何となく、アンナに言うと面倒くさいと思い、黙っていたのだった。正解なのだが。
◇◇◇
「良いと思いますよ。2年も離れていたんですし。仕事先の商会にも近くて、行きやすいでしょ?」
レイアーがあっさり許可し、メロアンも頷く。
「ええ、私も賛成です。そもそもミディア様の父であるモンテカルロ伯爵は、完全に公爵家の婿入り狙いです。コロネ様がもし後継から外れれば、すぐに解消するでしょう。公には病床にある、スライスト様の友人だと言うのに。友人の娘を支える気もない、薄情者です。
現に伯爵夫人は、クリム夫妻が次期公爵になるなら、ブルーベルの方が良いのではと言って、最初の顔合わせにも来ていないですし。お茶会のことなら、何とでもなります」
「おおっ、そこまで調べていたのね。なら、良いわよね。元々仮婚約で、いつでも解消できるものだし。それに……あの二人が良い感じなら、応援したいわ。もし家を継げなくても、伯爵令息と子爵令嬢なら釣り合いも取れるし。なーんて、恋愛のことはよく分からないけれど」
「まあ、コロネお嬢様。そこまでお考えだったのですね。アンナは感動しました!」
「本当ですよ。私も目から鱗が落ちました」と、納得のタバサだ。
◇◇◇
そんな感じで、セサミとミディアの護衛にだけバレないように、今後はブルーベルが変装して、お茶会に参加することが決まった。
ブルーベルには詳細は明かされていない。コロネが商談で多忙の為、婚約者を放置してセサミに怒られないようにとだけ伝えている。
明らかに恋しちゃってるミディアには、「コロネ様が多忙の為に、暫くブルーベルがお相手します。何卒、ご内密に」と話している。うんうんと、何度も頷いてくれ、こちらも了承済みだ。
「セサミ様も、仮婚約だからいつでも解消できると言っていたし、このくらい良いよね」と、罪悪感はないようで安心だ。
そんな感じでコロネは、時々食堂の2階に泊まり、親子三人で夕食を食べるのだった。
隠密達が護衛として、近くにいることは気付かずに。
そしてその頻度が次第に増え、食堂の2階に定住することになるのだった。
開始は3回/週くらいからだ。
あなたにおすすめの小説
「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った
歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。
だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」
追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。
舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。
一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。
「もう、残業はしません」
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
いとこだと思っていた人が、母でした。
まさき
ファンタジー
夜が来ない世界で育った少年は、十五歳の誕生日に“現実”へと目覚める。
そこで知らされたのは、
自分が作られた存在だということ。
そして、年に一度しか会えなかった“いとこ”が――母親だったという事実。
すべてが嘘だったと知りながらも、彼は彼女から離れられない。
母として接するべきか。
それとも、これまでの関係のままでいるのか。
壊れた関係のまま、二人は“規格外”として追われることになる。
これは、作られた少年が――
それでも「彼女を選ぶ」と決める物語。
いらない子のようなので、出ていきます。さようなら♪
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
魔力がないと決めつけられ、乳母アズメロウと共に彼女の嫁ぎ先に捨てられたラミュレン。だが乳母の夫は、想像以上の嫌な奴だった。
乳母の息子であるリュミアンもまた、実母のことを知らず、父とその愛人のいる冷たい家庭で生きていた。
そんなに邪魔なら、お望み通りに消えましょう。
(小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています)
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!
しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。
けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。
そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。
そして王家主催の夜会で事は起こった。
第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。
そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。
しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。
全12話
ご都合主義のゆるゆる設定です。
言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。
登場人物へのざまぁはほぼ無いです。
魔法、スキルの内容については独自設定になっています。
誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。
繰り返しのその先は
みなせ
ファンタジー
婚約者がある女性をそばに置くようになってから、
私は悪女と呼ばれるようになった。
私が声を上げると、彼女は涙を流す。
そのたびに私の居場所はなくなっていく。
そして、とうとう命を落とした。
そう、死んでしまったはずだった。
なのに死んだと思ったのに、目を覚ます。
婚約が決まったあの日の朝に。
「その薬草は毒かもしれぬ」と追放された令嬢薬師——領地に疫病が広がったとき、彼女の薬草園はもう枯れていた
歩人
ファンタジー
侯爵令嬢リリアーナは、母から受け継いだ薬草園「星霜の庭」を守り、領民の病を癒す薬師。
だがある日、新任侍医マティアスが讒言した。
「あの令嬢の薬草は怪しい。毒が混じっているかもしれない」
父も婚約者クラウスも、それを信じた。
追放されたリリアーナが辿り着いたのは、辺境の村ノルトハイム。
老薬草師ヘルダに導かれ、荒れ地に新たな薬草園を拓く。
飄々とした若き領主ルシアンの体には、母から受け継いだ「銀花毒」が二十三年間潜んでいた。
誰にも治せなかったその毒を、リリアーナは治すと決める。
一方、薬師を失った星霜の庭は枯れ果て、疫病が元の領地を襲う。
マティアスの教科書通りの処方は何一つ効かない。
「戻ってこい」——使者が届けた手紙に、リリアーナは静かに答えた。
「わたくしの薬草は、毒でしたか?」