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噛み合わない話し合い
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ミディアはブルーベルから謝罪の手紙を貰ってから、彼女の心配をしていた。
そして公爵邸での二度目のお茶会の時、しおらしくて礼儀も整っている彼女を見て、ギャップ萌えしていたのだ。無意識のうちに。
斯くして彼は恋をした。
対するブルーベルは訓練に必死であり、それどころではない。
傍目にも彼の目が、彼女を追うのが分かるくらいに。
面白がったタバサが 「おおっ、良い雰囲気じゃん。返信の言葉も優しかったもんな。将来性もありそうだな」と言えば、
「そうですね。(コロネ様に似合う)とても誠実な方だと思います。(父と違って落ち着いているし)とても好感が持てますね」と、ブルーベルは微笑んだ。
「おっ! 好評価じゃないか!」
「勿論ですよ。(コロネ様のお相手ですから)大切に思っております。今の自分の出来る限り、(お二人の)お役に立ちたいと思っております」
「(ん~。なんか、ニュアンスが違う気がするぞ) コロネ様とミディア様の婚約は仮だから、好きなら好きでも良いんだぞ。もし好意があるならだけど……」
「いえいえ、そんな。(平民確定の)私とは身分が違いますよ。そんなこと考えるだけで、不敬ですよ。フフフッ」
齟齬がいろいろと重なる会話だが、タバサはいつも一緒なので何となく理解が追い付いた。
(またどうせ、くだらないこと考えているんだろ? お前は平民になんてならないんだから、好きなら良いんだぞ。跡継ぎでない伯爵令息程度、養子縁組して嫁がせてやれるから。私に任しておきな!)と、ズレながらも解釈をするが、そうでない者が後ろにいたのだ。
タバサも恋愛偏差値0だが、同じく0のコロネだ。
「そ、そうだったのね。私ったら気付かずに、鈍くてごめんなさいね」
「違いますよ、コロネ様……。おそらく彼の片想 「コロネお嬢様、良いんですか? ミディア様のことはお好きではないのですか?」え、あら、タバサってば、この話はお祖父様の無茶ぶりよ。ふふふっ」
アンナが否定しようとしたのに、タバサが話に割り込み、コロネが「政略なのよ。知ってるでしょ」と、微笑んだ。
「ああ、そうでした。クソ爺のごり押しでしたね。じゃあ!」
「ええ。ブルーベル次第よ。くっ付けるなら手伝うわよ」
ブルーベルに聞こえないように、囁くように話していたので、こんなことを話しているなんて本人は知らなかった。
恋愛偏差値0同士で、話が噛み合う奇跡が起きた。アンナは呆れて声も出せない。
「じゃあ商談の時は、ブルーベルに私に変装して貰ってお茶でも飲んで貰おうかな? そうすれば家にいなくても平気でしょ?」
「平気かどうかは……。でもコロネお嬢様が商談等があれば、ブルーベルの訓練として身代わりはさせられます。
ミディア様はブルーベルが好きなようですし、彼の護衛は離れているので、顔の区別はつかないでしょう。クリム様とコーラス様は、お茶会を見に来ることもありませんしね。
ブルーベルには、私から行っておきますから」
「本当に。助かるわ。実は私、両親の近くで暮らしたいから、市井で暮らしてみようかと思って。私が外に出ても、今なら叔父くらいしか不審に思わないでしょ? 熱々になった私の両親の家には、いくら私でも住めないしね。
でも心配しないでね。私の家はモロコシさんが紹介してくれた、元冒険者夫婦の営む食堂の2階なの。シェフもいらないのよ、すごいでしょ!」
「え、お嬢様、それって。みんな知ってるんですか?」
「ううん、まだよ。タバサが一番乗りね。うふっ」
額に手を置いて、暫し思考停止のタバサ。
でも、すぐ復活!
「それ面白いですね。私は全面的に賛成です!」
「嘘でしょ、コロネお嬢様。私、聞いてないです」
「うん、今言ったからね。アンナは2番乗りね。ふふっ」
「もう、笑い事じゃないです。それなら私もお供します~」
「あらっ、ダメよ。週に3回くらい行って来るだけだし、ずっといるんじゃないんだし」
「でも~。そうだ、レイアー様にも相談しましょう!」
「そうね♪ 私もそう思ってたのよ」
上機嫌のコロネに、困惑気味のタバサに、半泣きのアンナ。
コロネも何となく、アンナに言うと面倒くさいと思い、黙っていたのだった。正解なのだが。
◇◇◇
「良いと思いますよ。2年も離れていたんですし。仕事先の商会にも近くて、行きやすいでしょ?」
レイアーがあっさり許可し、メロアンも頷く。
「ええ、私も賛成です。そもそもミディア様の父であるモンテカルロ伯爵は、完全に公爵家の婿入り狙いです。コロネ様がもし後継から外れれば、すぐに解消するでしょう。公には病床にある、スライスト様の友人だと言うのに。友人の娘を支える気もない、薄情者です。
現に伯爵夫人は、クリム夫妻が次期公爵になるなら、ブルーベルの方が良いのではと言って、最初の顔合わせにも来ていないですし。お茶会のことなら、何とでもなります」
「おおっ、そこまで調べていたのね。なら、良いわよね。元々仮婚約で、いつでも解消できるものだし。それに……あの二人が良い感じなら、応援したいわ。もし家を継げなくても、伯爵令息と子爵令嬢なら釣り合いも取れるし。なーんて、恋愛のことはよく分からないけれど」
「まあ、コロネお嬢様。そこまでお考えだったのですね。アンナは感動しました!」
「本当ですよ。私も目から鱗が落ちました」と、タバサ。
◇◇◇
そんな感じで、セサミとミディアの護衛にだけバレないように、今後はブルーベルが変装して、お茶会に参加することが決まった。
ブルーベルには詳細は明かされていない。コロネが商談で多忙の為、婚約者を放置してセサミに怒られないようにとだけ伝えている。
明らかに恋しちゃってるミディアには、「コロネ様が多忙の為に、暫くブルーベルがお相手します。何卒、ご内密に」と話している。うんうんと、何度も頷いてくれ、こちらも了承済みだ。
「セサミ様も、仮婚約だからいつでも解消できると言っていたし、このくらい良いよね」と、罪悪感はないようで安心だ。
そんな感じでコロネは、時々食堂の2階に泊まり、親子三人で夕食を食べるのだった。
隠密達が護衛として、近くにいることは気付かずに。
そしてその頻度が次第に増え、食堂の2階に定住することになるのだった。
開始は3回/週くらいからだ。
そして公爵邸での二度目のお茶会の時、しおらしくて礼儀も整っている彼女を見て、ギャップ萌えしていたのだ。無意識のうちに。
斯くして彼は恋をした。
対するブルーベルは訓練に必死であり、それどころではない。
傍目にも彼の目が、彼女を追うのが分かるくらいに。
面白がったタバサが 「おおっ、良い雰囲気じゃん。返信の言葉も優しかったもんな。将来性もありそうだな」と言えば、
「そうですね。(コロネ様に似合う)とても誠実な方だと思います。(父と違って落ち着いているし)とても好感が持てますね」と、ブルーベルは微笑んだ。
「おっ! 好評価じゃないか!」
「勿論ですよ。(コロネ様のお相手ですから)大切に思っております。今の自分の出来る限り、(お二人の)お役に立ちたいと思っております」
「(ん~。なんか、ニュアンスが違う気がするぞ) コロネ様とミディア様の婚約は仮だから、好きなら好きでも良いんだぞ。もし好意があるならだけど……」
「いえいえ、そんな。(平民確定の)私とは身分が違いますよ。そんなこと考えるだけで、不敬ですよ。フフフッ」
齟齬がいろいろと重なる会話だが、タバサはいつも一緒なので何となく理解が追い付いた。
(またどうせ、くだらないこと考えているんだろ? お前は平民になんてならないんだから、好きなら良いんだぞ。跡継ぎでない伯爵令息程度、養子縁組して嫁がせてやれるから。私に任しておきな!)と、ズレながらも解釈をするが、そうでない者が後ろにいたのだ。
タバサも恋愛偏差値0だが、同じく0のコロネだ。
「そ、そうだったのね。私ったら気付かずに、鈍くてごめんなさいね」
「違いますよ、コロネ様……。おそらく彼の片想 「コロネお嬢様、良いんですか? ミディア様のことはお好きではないのですか?」え、あら、タバサってば、この話はお祖父様の無茶ぶりよ。ふふふっ」
アンナが否定しようとしたのに、タバサが話に割り込み、コロネが「政略なのよ。知ってるでしょ」と、微笑んだ。
「ああ、そうでした。クソ爺のごり押しでしたね。じゃあ!」
「ええ。ブルーベル次第よ。くっ付けるなら手伝うわよ」
ブルーベルに聞こえないように、囁くように話していたので、こんなことを話しているなんて本人は知らなかった。
恋愛偏差値0同士で、話が噛み合う奇跡が起きた。アンナは呆れて声も出せない。
「じゃあ商談の時は、ブルーベルに私に変装して貰ってお茶でも飲んで貰おうかな? そうすれば家にいなくても平気でしょ?」
「平気かどうかは……。でもコロネお嬢様が商談等があれば、ブルーベルの訓練として身代わりはさせられます。
ミディア様はブルーベルが好きなようですし、彼の護衛は離れているので、顔の区別はつかないでしょう。クリム様とコーラス様は、お茶会を見に来ることもありませんしね。
ブルーベルには、私から行っておきますから」
「本当に。助かるわ。実は私、両親の近くで暮らしたいから、市井で暮らしてみようかと思って。私が外に出ても、今なら叔父くらいしか不審に思わないでしょ? 熱々になった私の両親の家には、いくら私でも住めないしね。
でも心配しないでね。私の家はモロコシさんが紹介してくれた、元冒険者夫婦の営む食堂の2階なの。シェフもいらないのよ、すごいでしょ!」
「え、お嬢様、それって。みんな知ってるんですか?」
「ううん、まだよ。タバサが一番乗りね。うふっ」
額に手を置いて、暫し思考停止のタバサ。
でも、すぐ復活!
「それ面白いですね。私は全面的に賛成です!」
「嘘でしょ、コロネお嬢様。私、聞いてないです」
「うん、今言ったからね。アンナは2番乗りね。ふふっ」
「もう、笑い事じゃないです。それなら私もお供します~」
「あらっ、ダメよ。週に3回くらい行って来るだけだし、ずっといるんじゃないんだし」
「でも~。そうだ、レイアー様にも相談しましょう!」
「そうね♪ 私もそう思ってたのよ」
上機嫌のコロネに、困惑気味のタバサに、半泣きのアンナ。
コロネも何となく、アンナに言うと面倒くさいと思い、黙っていたのだった。正解なのだが。
◇◇◇
「良いと思いますよ。2年も離れていたんですし。仕事先の商会にも近くて、行きやすいでしょ?」
レイアーがあっさり許可し、メロアンも頷く。
「ええ、私も賛成です。そもそもミディア様の父であるモンテカルロ伯爵は、完全に公爵家の婿入り狙いです。コロネ様がもし後継から外れれば、すぐに解消するでしょう。公には病床にある、スライスト様の友人だと言うのに。友人の娘を支える気もない、薄情者です。
現に伯爵夫人は、クリム夫妻が次期公爵になるなら、ブルーベルの方が良いのではと言って、最初の顔合わせにも来ていないですし。お茶会のことなら、何とでもなります」
「おおっ、そこまで調べていたのね。なら、良いわよね。元々仮婚約で、いつでも解消できるものだし。それに……あの二人が良い感じなら、応援したいわ。もし家を継げなくても、伯爵令息と子爵令嬢なら釣り合いも取れるし。なーんて、恋愛のことはよく分からないけれど」
「まあ、コロネお嬢様。そこまでお考えだったのですね。アンナは感動しました!」
「本当ですよ。私も目から鱗が落ちました」と、タバサ。
◇◇◇
そんな感じで、セサミとミディアの護衛にだけバレないように、今後はブルーベルが変装して、お茶会に参加することが決まった。
ブルーベルには詳細は明かされていない。コロネが商談で多忙の為、婚約者を放置してセサミに怒られないようにとだけ伝えている。
明らかに恋しちゃってるミディアには、「コロネ様が多忙の為に、暫くブルーベルがお相手します。何卒、ご内密に」と話している。うんうんと、何度も頷いてくれ、こちらも了承済みだ。
「セサミ様も、仮婚約だからいつでも解消できると言っていたし、このくらい良いよね」と、罪悪感はないようで安心だ。
そんな感じでコロネは、時々食堂の2階に泊まり、親子三人で夕食を食べるのだった。
隠密達が護衛として、近くにいることは気付かずに。
そしてその頻度が次第に増え、食堂の2階に定住することになるのだった。
開始は3回/週くらいからだ。
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