弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり

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スイーツタイム

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「もう、みんな。憐れむなんてしないで頂戴ね。私はもう死にたいなんて、微塵も思っていないんだから。そんなことより、じゃんじゃん食べよう。美味しい食べものは正義なのよ♪」


 ここぞとばかりにミカヌレは、高カロリーのケーキを頼み始めた。

 生クリームやバター、チョコレートを多用した、ショートケーキ、チョコレートケーキ、モンブラン、バターケーキ、ムースやタルトをどんどん注文用紙に書き出し、注文書を出しに行くミカヌレ。

 一応は公爵夫人なのだが、スカートも平民用のものだし、フットワークも軽かった。
 アンナが走って来て「私がやります」と叫んでも、「良いから、やらせてよ」と言って、楽しげに走り出す始末だ。


 オペラやザッハトルテ、チーズケーキは、お土産ように包んで貰うようにと、忘れずに書いてもいた。これは使用人の分なのだそう。


 頼んだものをここにいる全員で食べても、一人3つは当たる計算。コロネのテーブルと、その隣のテーブルにも色とりどりのケーキが運ばれている。


 バターやチョコレートをたっぷり使った、高カロリーのケーキ達。
 今日は特に話題が重かったヘビーだった為、軽いスイーツではなくてガッツリ系のラインナップ品揃えだ。



 脂質、糖質、カロリーは、恋する乙女には毒になる悪魔の食べ物。太る故に。

 幸いなことに今、そんな乙女はいなかった。

 スライストは「ミカヌレなら太っても魅力的さ。たくさん食べると良い」と、ニコニコしながら聞いてもいないことを話している。


 コロネも甘いものは大好きだ。
 普段食べるのを控えているのは、単純に高いからだ。

 甘いものを食べると幸せを感じるのは、脳内でセロトニン(精神安定)やドーパミン(快楽)といった幸せホルモンが分泌されるためで、これは体がエネルギーを求めたり、ストレスを緩和しようとする本能的なもの。


 今日は脳疲労を軽減する為に、ミカヌレが奢ると言う。

「心配しないで、コロネ。これは私が洋品店マルシェリでお針子をして稼いだお金だから。ずっと貴女とこうしたいと思って、貯めていたのよ。さあ、たくさん食べて頂戴♪」

「お針子……お母様はずっとあそこに居たのですね。気付かなかった」

「そこはほら、私も隠密だったからね。変装が上手くて良かったわ」


 公爵家の資金じゃないから安心しろだなんて、本当に公爵家に頼らないで暮らしているのだと思ったコロネ。
 現在のワッサンモフ公爵家の夫人予算は、孤児院や養護院などへ全額寄付している。


 これはクリム一家がワッサンモフ公爵邸に訪れた際、コロネに対して『お前の考えるようにしてご覧』とセサミに言われた時に考え、ずっと継続されていた。

 そんな感じでコロネが考えた方針は、このようなもの内容だった。


①お母様の出奔のことは周囲には内緒で、お父様まで行方不明なことも外部に漏らせない。だからこそお父様は病気の治療の為に、お母様はその看病の為に共に領地で療養中の設定にする。

②お父様の個人予算は保留にし、お母様に割り当てられる予算は全額孤児院や保護施設に寄付する。そのことで社交界に出ないことでされる噂を良いものに寄せる。

③叔父様一家の予算は、お祖父様の指示があるまでは一時的にお父様の個人予算の範囲で捻出する。保有予算は叔父様には知らせず、月々にお父様の組んでいたもので対応する。

コロネの個人予算は今までと同様とする。家庭教師ルチーズからの教育も続けていく



 こんな感じで生活していたが、2年経ってもセサミは放置状態で、クリム夫妻の散財はスライストの予算での補填を続けている。だがそれでは足りず、ひたすらコロネの商会から赤字を埋めているところだが。

 変わったことと言えば、ブルーベルが心を入れ替え、叔母のサイダー夫妻と和解したことくらいだろうか?
 コロネはよく分かっていないが、既に彼女ブルーベルはタバサに弟子入りし、隠密としての訓練を積んでいる。
 コロネの重責と立場を慮り、忠誠を誓っていた。ブルーベルがコロネに反旗を翻す心配は、限りなく皆無だ。


 今は公爵邸で留守を預かっているメロアンとブルーベル。今後スライストとミカヌレが見つかったことを知っても、彼女達の態度は変わらないだろう。




◇◇◇
「さあさあ座って。レイアー、タバサ、アンナも」

「いえ、私達は勤務中ですので」
「そうですわ、ミカヌレ様」
「ご家族水入らずで、召し上がり下さい」


「良いから、良いから。今日は家族が再会できて、お祭りみたいなものだから。ね、お願いよ。お祝いして頂戴♪」

「では、失礼して」
「ありがとうございます」
「ご馳走になります」

「うん、うん。ありがとうね」


 ケーキが並べられている隣のテーブルに、促されて座る3人。そこに搾りたてのジュースやコーヒー、紅茶なども運ばれて食べ進めていく。


「「「「「「いただきます♪」」」」」」



「美味しいし、形もすごく素敵。苺のカットの仕方が食欲を増すわ」
「うん、格別だな。公爵邸のも美味しいけど、また素材が違う気がする。それに家族が揃っているから、余計に美味しいのかな?」
「本当ね、すごく美味しいわ。私達は店で顔を覚えられないように、食材はもっぱら孤児院の野草や山の猛獣を狩って食べてたものね。お陰様で、食費はほぼ0円だったわ。ふふふっ」

「嘘っ、自給自足。スゴいです」
「いや~、それほどでもないよ(ミカヌレと一緒にいられるから、嬉しいしな)」
「えへへっ、食材はいつも新鮮よ。でも熟成肉は作れないなどね」

 お金を使わなくても食材を調達する手腕に脱帽し 「節約術はここにあり」と、コロネは目を輝かせた。
「筋力があれば、飢えることはないのね。私も鍛えよう!」と、心で歓喜した。

 スライストはいつも幸せそうだ。

 ミカヌレは着々と節約を極めている。隠密時代の技術は、今も役立っている。かなりのワイルド系な食卓だった。



 ちなみにチェルシーとモロコシは、ミカヌレとスライストのことを知っているので、孤児院裏や(ギルド)周辺の山はフリーパスを貰っているのだ。
 どうやらミカヌレの料理は、孤児院のものより粗食みたいで「ここで一緒に食べたら良いのに。何でそこまで頑張るのよ」と、涙ぐまれていた。
 
 ミカヌレは自由を謳歌しているので、特に我慢はしていない。公爵夫人の時よりも、肌艶も良くなっているくらいだ。




 隠密達も。

(こんなにゆっくりと甘味を食べるのは、本当に久し振りだ。良いものだな。今度はメロアンと来よう)と、レイアーはしみじみと思い。

(コロネ様とミカヌレ様が、あんなに幸せそう。グスッ、アンナはもう感無量です。そしてケーキが美味しいです)

(おっ、上手いな。前世でも甘味なんて殆ど食べなかったけど、このモンブランめっちゃ旨い。やっぱりチェロスト子爵の作物は、別格で美味しいからな)と、タバサも絶賛していた。


 甘いのが嫌いなんて人もいるだろうけど、この世界では甘味や果物は貴重品で、貴重な栄養源でもある。残すことなどはないのだ。

 例外はあるけれど。
 クリムとコーラスは大量に依頼し、雑に食べて残すので、再調理して使用人の賄いに回している。



 辛い話もたくさんあったけれど、美味しいケーキ(ドーパミン効果もあり)でみんな幸せに過ごしたのだった。


 お土産を貰った使用人達も、全員が満面の笑顔だ。

「「「コロネ様、ありがとうございます♪♪♪」」」



 そう、表向きにはミカヌレとスライストのことはまだ秘密なので、コロネの差し入れとして渡したのだった。

 




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