弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり

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仮婚約の解消

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 スライストは、友人であるヴィーガンへと手紙を認めた。


『ヴィーガンへ

 僕が療養で不在の間、セサミと組んでコロネに仮婚約を結んだと聞いたよ。

 父親の僕に通さないなんて、本当に驚いたよ。

 君とは友人のつもりだったが、どうやら違ったみたいだね。

 セサミからは仮婚約だから書類もないし、子供達が嫌ならすぐに解消する約束だったと笑われたよ。

 確認の為にコロネに婚約について尋ねたら、逞しくて守って貰える人が良いそうなので、ミディアは理想と違うそうだ。

 そう言うことで、今回の仮婚約はなしにして貰うよ。
 公爵邸に来られても、君とはもう話はしないので、そのつもりで。

 ただミディアはうち公爵家の庭師と友人なので、彼のことだけは歓迎するよ。
 君が覚えているか分からないけど、その庭師は僕の友人のセージ・キンパナ伯爵令息だから。


 今回の君の無礼だけど、一度だけ見逃そう。

 でもね、ワッサンモフ公爵家当主が舐められたままとあれば、他の貴族に示しがつかない。

 二度目があれば、覚悟して欲しい。一度目の分とあわせて、相応しい対応をしようと考えているんだ。

 セサミに泣きついても無駄だよ。

 僕はセサミにも怒りを持っているから、もし君を擁護する言葉があれば、この話を単語公おおやけにしてみんなに聞いて貰おうと思うんだ。

 それこそ僕の友人達にね。

 高位貴族の当主も多いから、公明正大に話し合おう。


       スライスト・ワッサンモフ』



「な、な、何じゃ、こりゃー!!!」

 ヴィーガンは驚き過ぎて、思わず叫んでいた。




◇◇◇
 仮婚約の件はセサミと話しをしていないが、レイアーを始めとして多くの使用人が話しを聞いており、調査も終えていた。

 コロネは当時、クリム達の借金のことが心配で、婚約のことなど考える余裕もなかったそうだ。

 祖父であるセサミの勝手な言動に困惑したが、下手に抵抗すれば面白がられ、余計に拗れると思い受け入れたと言っていたと。

 それに僕が病で公爵を降ろされ、クリムが次期公爵になれば損だと言って、ヴィーガンの妻が仮婚約に反対だったこと。
 もしクリムが公爵になれば、『ブルーベルに乗り換えれば良い』とヴィーガンが笑っていたことさえ、隠密達は調査してくれていた。


 もし本当に友人だったなら、後ろ楯がなくなった時こそ娘を支えてくれるだろう。損得しか考えていない時点で、彼は信用に値しない。


 そんな者に娘を託せる筈がないのだ。


「友人が一人減ったな。いや、そもそも友人ではなかったのだ。ただの知人程度の付き合いで」


 スライストはやや堅物と言われるところもあったが、筋の通った秀才と憧れている者も多かった。
 クロダイン公爵の息子である、ベグルもその一人である。交遊関係は狭いけれど、彼にも心を許せる友人はいるのだ。 

 ヴィーガンは今後、牽制されて下手に動けないし、仮婚約のことでミディアを責めることもできないだろう。
 公爵家の庭師は伯爵家出身で、セサミ達の同級生。更にスライストと並ぶ、成績優秀者だった。

 もう、いろいろと詰んでいる。



「何でこんな手紙が……。会って弁解することも出来ないなんて…………」

「ちょっと、貴方。スライスト様は全快したらしいと、あちこちで噂を聞いたわよ。何で彼が戻るまで待たなかったのよ、この役立たず!」

「何だと! 公爵家を継げる可能性があれば、そりゃあ売り込むだろう。婚約者が決まっていないうちに急いだだけだ」

「申し込む時期が問題なの。どうしてセサミ様に頼んだりしたのよ。この、お馬鹿っ」

「ミディアが悪いんだ。本ばかり読んでひょろいから。逞しければ、何の問題もなかったのに」

「まあ! あの子のせいにしないで頂戴。私に似てとっても知的なのに。そう言う貴方は頭も悪くて弱い癖に!」

「何だと!」と、思わず手が出そうになるヴィーガンだが、即座に執事に阻まれ妻から強気に言い返される。

「何よ、偉そうにして! 私の実家から援助がなければ、潰れる家なのに。私が嫌なら、別居しましょう。貴方はご両親と領地で暮らせば良いもの。
 そうしたらスライスト様から、モンテカルロ伯爵家は睨まれなくて済むわね、きっと。あら、すごく良い考え」

「そ、そんなぁ。頼むよ、謝るから捨てないでくれ」


 両親の声に「やれやれ、喧嘩するほど仲が良いと言うけど。家はずいぶんと違うね」と、苦笑するミディア。
 彼は植物研究を将来の道と決め、いろいろと勉強している最中である。庭師は植物学の(毒植物関係の)博士号も持つ、彼の尊敬する人なのだ。




 こうしてコロネの仮婚約は、無事に解消出来た。




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