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そう言うしくみ
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私が祈ると女神様の像が光輝き、その場にいる人々の病が全て癒えます。
「ううっ、ありがとうございます。女神様」
「これでまた、働くことが出来ます」
「子供を助けてくださり、感謝します」
教会では、その奇跡に人々が涙を流し、多くの謝礼がもたらされていました。
それは女神の癒しなので、祈った私には関係ないと神父に言われ、感謝されることもなく育ちました。
「ほら、今日のご飯だ。お前はもう地下に戻れ」
「はぁはぁ、ありがとうございます」
固くなった黒パンを投げつけられて、最近疲れやすくなった体を引き摺りながら、私は地下の部屋へ戻ります。
私が外に出られるのは、女神様の像を光らせる仕事がある時だけです。
物心ついた時から地下が自分の場所で、足には大きな枷と重りが付けられ、自由に外に出られません。
柵がないので牢屋ではないですが、痩せっぽちで重りがある状態では、部屋の中を僅かに動くだけで精一杯です。
殆どの時間を、教会で見た嬉しそうな人々の様子を思い出して眠るのでした。
この時だけ私は、笑顔でいられたのです。
そこは教会の物置の下にある、野菜を保存する室のような場所でした。光さえ差し込みません。
あるのは石造りの寝台と厠だけで、壁もまた石で囲まれていました。
元々の一枚岩をくり抜いたのでしょう。
その上を申し訳程度の小屋を建て、室を隠した状態のようです。
体は垢やフケと埃で汚れ、衣類もズタ袋の穴を開けたものを被せるように着せられました。
こんな生活なのに病気一つせず、淡々と日々が続いて行きます。ただ前よりも、疲れやすくなってきました。
動くことは少ないので、寝ていれば分からないのですが、女神様の像を光らせて民の癒しを願うと、息切れするようになってきたのです。
肌の張りも、なくなったように感じました。
ある日教会の神父家族が、数日の旅行に行くことになりました。表向きは視察の旅ですが。
そこには1日1つずつ食べるようにと、固いパンが7つ置かれました。
私はお礼をして受けとりました。
私の存在はその神父しか知らないので、食料を纏めて渡したのでしょう。
神父がその地を離れ、数日間大雨が続きました。
地下を隠すだけの物置は雨盛りがひどく、部屋を少しづつ浸水させていきます。
戻った神父が地下で見た私は、浸水した雨水で溺死状態でした。
『ああ、やっと呪縛が解けた。体が軽くなったよ』
声にならない嬉しそうな感情が、神父の頭に響きます。
「何だ、今のは?」
混乱する神父に、さらに別の声が禍々しく響きました。
「次はお前の番だね」
「だ、誰だ! 何をする気だ! 離せ、ウワーッ」
その瞬間から、神父は家族の前から姿を消しました。
「父上、何処ですか?」
「貴方、返事をしてください」
行方を探す家族の前に、二度と神父は現れません。
同時のように、女神様の像が奇跡を起こすことはなくなり、教会は寂れ人が来なくなりました。
元々神官等ではない神父の妻と子は、ここを去ることになりました。
今までに神父が溜め込んだ金貨は、家族にも隠していたので手がつけられず、今も銀行に眠っています。
妻子は懸命に働き地に足をつけ、今も神父の帰りを待っているのです。
◇◇◇
「出せー、この野郎! 誰だか知らないが、容赦しないぞ!」
神父は暗闇に放り出され、怒りから喚いていました。
もう何日経ったか分からないほど、不確かです。
「なあ、もう、出せよ。出して下さい。家族も待っているんだ。頼むからさあ!」
その問いに、あのときの声は応えます。
「なんだ、お前。自分がした約束を覚えていないのか? もうお前が戻れる場所なんてないぞ!」
薄明かりで目が慣れ、自分の格好が見えてきました。
奇しくも彼が室で目にしてきた子供のように小さく、出で立ちも同じような感じなのでした。
ズタ袋の服に足枷と重りが付けられていて、更なる混乱を生みます。
「ど、どうして、この姿に? 何故だ?」
泣きそうに顔を歪め、見えない声の主に語りかけました。
すると見えない誰かは言います。
「お前は賭けに負けたんだよ。
あれだけ欲望に負けないと俺に誓いながら、私欲に堕ちた。だからこれは罰だよ。
お前が粗雑に扱った、あの子供姿の者と同じ暮らしをする罰さ」
「あ、あぁ、なんで、今頃になって?」
「今頃? 何馬鹿なことを? 俺はずっと楽しかったよ。お前を見るのがね。フフッ」
そう、私は遠い昔、神に願ったのを思い出していました。
「どうか私達を助けてください、神様」
医師もいないこの場所で流行り病が続き、多くの人が倒れて死んでいきました。神父である私は、祈るしか道が残されていなかったのです。
そしてその時、見えない誰かはこう言ったのです。
「お前の望みは聞いた。けれど条件が一つある。
お前は今後、いくら豊かになろうともその心を忘れず、民に尽くしていけるか?」
愚問でした。
そのままならば、明日にも自分は死ぬでしょうから。
だから即座に「民の為ならば、この身を尽くします」と誓ったのです。
その後空から、目映い光が土地全体に降り注ぎ病が治癒していきました。そして健康体に戻った後は、みんなで力を合わせて田畑に実った麦や野菜を収穫して、生活を立て直したのです。
その時に見えない誰かが言ったのです。
彼が連れてきた子供が、この奇跡を起こしたのだと。
そして彼と契約したのは私になるから、契約者以外の人にはその姿は見えないと言うのです。
「その子供と協力して、この地を救え。そしてもう十分なら俺を呼べ。または約束を違えた時は……。まあ、愚問か? お前は約束を守るだろう?」
「勿論です。早速助けて下さり、ありがとうございます」
真摯に礼をすると、その姿は煙のように消えてしまいました。
神父は子供と共に、病を癒し続けました。
その噂は広がり、近隣の村や町にも知れ渡っていきます。
お布施や尊敬も高まり、生活は豊かになっていきました。
◇◇◇
数年後。
助けた人の一人と結婚し、子も生まれました。
神父にも結婚は許されていたので、結婚自体は罪ではないのですが、他の女性とも姦淫に耽っていました。贅沢し、横領にまで手を染めて。
地下の子供が逃げないように、粗末な服を着せ、更に足枷と重りまでつけました。
お金だとて、妻子に渡す分は最低の金額だけでした。
それでも2人は感謝を忘れず、快活に生きていました。
私はわざわざ変装し、隣町まで遊びに出掛けていたのに。
それに気づき諭す妻を不満に思い出した私は、勿論通帳などを渡すことはなかったのでした。
預けられた子供は体調を崩すこともなく、成長することもありませんでした。ずっと初めて会った時のままです。
そして自分のことも話しません。
以前に聞いた時、覚えていないと言っていたような気がします。
次第に普段の口数も減っていき、遂には返事しかしなくなりました。
そして自分以外に、その子供が見えないのも本当でした。
ただ、初めて会った時のような、輝くような笑顔はなくなり、身綺麗だった姿はなりを潜めていきます。
今では浮浪児のような有り様に見えました。
子供は文句一つ言わず、言われたことを熟していきます。
私は忘れていました。
子供は大きな力で、人々を癒すほどの力があるのです。
何故、今まで見くびってしまったのだろうか? と、急に不安を抱きました。
「ああ、あれは罰を科した天使だ。
だからお前に逆らえないようにしていたんだ。
力を使う度に窶れていたよね。
でもね、お前が真に私欲のない聖人だったなら、あれも大天使になれたんだけどね。
まあ、人間に絡んでうまくいくなんて稀だしね。
結局お前も、自己の為に余計な力を誇示するのだもの。
今回の顛末を聞いて、馬鹿なことをする者(天使)も少なくなるだろうね」
淡々と話す見えない誰かは、彼に何かが入っている袋を渡してきました。
「お前は約束を破ったから、その報いを受けて貰うよ。
袋には、お前が天使に渡した物が入っている。
固くなったパンとズタ袋の服に、足枷と重りか。
馬鹿だね。精神生命体に食べ物なんて。
それもこんな不味そうなもんを。
それでも天使に感謝して、それ相応の物をあげていればお前にあげたのに。
足枷と重りなんて、ずいぶんと酷いね。
あの子は俺との約束で逃げられないし、素振りもなかっただろ?
この場合は契約者の気持ちが入るから、あの子も重たさを感じただろうね。
ここに来る前の、記憶を奪っておいて良かった。
屈辱で消滅したかもしれないからね。
お前は拷問官にむいているかもね。
まあ暫くは、その逆になるけど」
そう言った途端、神父はある国の鉱山に落とされていました。
「ちんたらしてるんじゃないぞ、お前達。働かない奴は飯抜きだ!」
「「「はいっ!!!」」」
神父は子供にされ、記憶があるまま鉱山奴隷となっていたのです。
ここに彼の身内はいないはずなのに、親が奴隷でその子供も奴隷に、ということになっていたのでした。
子供ではノルマが熟せず、満足に食事も貰えません。親も子に構えるほど、甘い状況ではありませんでした。
仕方ないので、あの袋を漁ります。
すると固くなったパンを見つけました。
何故か腐ることもなく、神父は空腹を凌ぐことが出来たのです。
ですが、そのパンさえ、いつまでもつことか。
そして鞭打たれ、傷の手当てをしてくれる人も頼れる者もいないこの場所で、いつまで生き延びられるのでしょうか?
人々を癒したのは自らの力ではないのに、自分が神に祈ったから民を救えるのだと、慢心していました。
教会に寄せられる全ての感謝も称賛もお布施も、自分の祈りがあったからだと、付け上がっていたのです。
力が必要でなくなった時は、そう伝えろと言われていたのに。
人々に失望されることが怖くて、緊急性がない状態でも、神からの子供を手放せなかったのです。
契約を守り、真面目に生きれば良かったのでしょうか?
途中で天使を返せば良かったのでしょうか?
そもそも何とかして欲しいと、超越者に祈ったのが駄目だったのでしょうか?
天使への待遇を、正当にすれば良かったのでしょうか?
それはもう遅いけど。
傲慢にさえならなければ、頑張るあの子に良い待遇くらいは与えられたことでしょう。
「何も無い時は清廉な男だったのに、堕ちるのが早過ぎる。だからこそ面白いのだけどね。
……誰もがそうだ。一度味わった快楽(称賛や期待など)は、なかなか忘れられないものだからね」
見えない誰かは、自分を呼ぶ声に時々応じます。
声をかけてくる彼らの生涯を、暇潰しで楽しむ為に、満面の笑みを向けながら。
「ううっ、ありがとうございます。女神様」
「これでまた、働くことが出来ます」
「子供を助けてくださり、感謝します」
教会では、その奇跡に人々が涙を流し、多くの謝礼がもたらされていました。
それは女神の癒しなので、祈った私には関係ないと神父に言われ、感謝されることもなく育ちました。
「ほら、今日のご飯だ。お前はもう地下に戻れ」
「はぁはぁ、ありがとうございます」
固くなった黒パンを投げつけられて、最近疲れやすくなった体を引き摺りながら、私は地下の部屋へ戻ります。
私が外に出られるのは、女神様の像を光らせる仕事がある時だけです。
物心ついた時から地下が自分の場所で、足には大きな枷と重りが付けられ、自由に外に出られません。
柵がないので牢屋ではないですが、痩せっぽちで重りがある状態では、部屋の中を僅かに動くだけで精一杯です。
殆どの時間を、教会で見た嬉しそうな人々の様子を思い出して眠るのでした。
この時だけ私は、笑顔でいられたのです。
そこは教会の物置の下にある、野菜を保存する室のような場所でした。光さえ差し込みません。
あるのは石造りの寝台と厠だけで、壁もまた石で囲まれていました。
元々の一枚岩をくり抜いたのでしょう。
その上を申し訳程度の小屋を建て、室を隠した状態のようです。
体は垢やフケと埃で汚れ、衣類もズタ袋の穴を開けたものを被せるように着せられました。
こんな生活なのに病気一つせず、淡々と日々が続いて行きます。ただ前よりも、疲れやすくなってきました。
動くことは少ないので、寝ていれば分からないのですが、女神様の像を光らせて民の癒しを願うと、息切れするようになってきたのです。
肌の張りも、なくなったように感じました。
ある日教会の神父家族が、数日の旅行に行くことになりました。表向きは視察の旅ですが。
そこには1日1つずつ食べるようにと、固いパンが7つ置かれました。
私はお礼をして受けとりました。
私の存在はその神父しか知らないので、食料を纏めて渡したのでしょう。
神父がその地を離れ、数日間大雨が続きました。
地下を隠すだけの物置は雨盛りがひどく、部屋を少しづつ浸水させていきます。
戻った神父が地下で見た私は、浸水した雨水で溺死状態でした。
『ああ、やっと呪縛が解けた。体が軽くなったよ』
声にならない嬉しそうな感情が、神父の頭に響きます。
「何だ、今のは?」
混乱する神父に、さらに別の声が禍々しく響きました。
「次はお前の番だね」
「だ、誰だ! 何をする気だ! 離せ、ウワーッ」
その瞬間から、神父は家族の前から姿を消しました。
「父上、何処ですか?」
「貴方、返事をしてください」
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同時のように、女神様の像が奇跡を起こすことはなくなり、教会は寂れ人が来なくなりました。
元々神官等ではない神父の妻と子は、ここを去ることになりました。
今までに神父が溜め込んだ金貨は、家族にも隠していたので手がつけられず、今も銀行に眠っています。
妻子は懸命に働き地に足をつけ、今も神父の帰りを待っているのです。
◇◇◇
「出せー、この野郎! 誰だか知らないが、容赦しないぞ!」
神父は暗闇に放り出され、怒りから喚いていました。
もう何日経ったか分からないほど、不確かです。
「なあ、もう、出せよ。出して下さい。家族も待っているんだ。頼むからさあ!」
その問いに、あのときの声は応えます。
「なんだ、お前。自分がした約束を覚えていないのか? もうお前が戻れる場所なんてないぞ!」
薄明かりで目が慣れ、自分の格好が見えてきました。
奇しくも彼が室で目にしてきた子供のように小さく、出で立ちも同じような感じなのでした。
ズタ袋の服に足枷と重りが付けられていて、更なる混乱を生みます。
「ど、どうして、この姿に? 何故だ?」
泣きそうに顔を歪め、見えない声の主に語りかけました。
すると見えない誰かは言います。
「お前は賭けに負けたんだよ。
あれだけ欲望に負けないと俺に誓いながら、私欲に堕ちた。だからこれは罰だよ。
お前が粗雑に扱った、あの子供姿の者と同じ暮らしをする罰さ」
「あ、あぁ、なんで、今頃になって?」
「今頃? 何馬鹿なことを? 俺はずっと楽しかったよ。お前を見るのがね。フフッ」
そう、私は遠い昔、神に願ったのを思い出していました。
「どうか私達を助けてください、神様」
医師もいないこの場所で流行り病が続き、多くの人が倒れて死んでいきました。神父である私は、祈るしか道が残されていなかったのです。
そしてその時、見えない誰かはこう言ったのです。
「お前の望みは聞いた。けれど条件が一つある。
お前は今後、いくら豊かになろうともその心を忘れず、民に尽くしていけるか?」
愚問でした。
そのままならば、明日にも自分は死ぬでしょうから。
だから即座に「民の為ならば、この身を尽くします」と誓ったのです。
その後空から、目映い光が土地全体に降り注ぎ病が治癒していきました。そして健康体に戻った後は、みんなで力を合わせて田畑に実った麦や野菜を収穫して、生活を立て直したのです。
その時に見えない誰かが言ったのです。
彼が連れてきた子供が、この奇跡を起こしたのだと。
そして彼と契約したのは私になるから、契約者以外の人にはその姿は見えないと言うのです。
「その子供と協力して、この地を救え。そしてもう十分なら俺を呼べ。または約束を違えた時は……。まあ、愚問か? お前は約束を守るだろう?」
「勿論です。早速助けて下さり、ありがとうございます」
真摯に礼をすると、その姿は煙のように消えてしまいました。
神父は子供と共に、病を癒し続けました。
その噂は広がり、近隣の村や町にも知れ渡っていきます。
お布施や尊敬も高まり、生活は豊かになっていきました。
◇◇◇
数年後。
助けた人の一人と結婚し、子も生まれました。
神父にも結婚は許されていたので、結婚自体は罪ではないのですが、他の女性とも姦淫に耽っていました。贅沢し、横領にまで手を染めて。
地下の子供が逃げないように、粗末な服を着せ、更に足枷と重りまでつけました。
お金だとて、妻子に渡す分は最低の金額だけでした。
それでも2人は感謝を忘れず、快活に生きていました。
私はわざわざ変装し、隣町まで遊びに出掛けていたのに。
それに気づき諭す妻を不満に思い出した私は、勿論通帳などを渡すことはなかったのでした。
預けられた子供は体調を崩すこともなく、成長することもありませんでした。ずっと初めて会った時のままです。
そして自分のことも話しません。
以前に聞いた時、覚えていないと言っていたような気がします。
次第に普段の口数も減っていき、遂には返事しかしなくなりました。
そして自分以外に、その子供が見えないのも本当でした。
ただ、初めて会った時のような、輝くような笑顔はなくなり、身綺麗だった姿はなりを潜めていきます。
今では浮浪児のような有り様に見えました。
子供は文句一つ言わず、言われたことを熟していきます。
私は忘れていました。
子供は大きな力で、人々を癒すほどの力があるのです。
何故、今まで見くびってしまったのだろうか? と、急に不安を抱きました。
「ああ、あれは罰を科した天使だ。
だからお前に逆らえないようにしていたんだ。
力を使う度に窶れていたよね。
でもね、お前が真に私欲のない聖人だったなら、あれも大天使になれたんだけどね。
まあ、人間に絡んでうまくいくなんて稀だしね。
結局お前も、自己の為に余計な力を誇示するのだもの。
今回の顛末を聞いて、馬鹿なことをする者(天使)も少なくなるだろうね」
淡々と話す見えない誰かは、彼に何かが入っている袋を渡してきました。
「お前は約束を破ったから、その報いを受けて貰うよ。
袋には、お前が天使に渡した物が入っている。
固くなったパンとズタ袋の服に、足枷と重りか。
馬鹿だね。精神生命体に食べ物なんて。
それもこんな不味そうなもんを。
それでも天使に感謝して、それ相応の物をあげていればお前にあげたのに。
足枷と重りなんて、ずいぶんと酷いね。
あの子は俺との約束で逃げられないし、素振りもなかっただろ?
この場合は契約者の気持ちが入るから、あの子も重たさを感じただろうね。
ここに来る前の、記憶を奪っておいて良かった。
屈辱で消滅したかもしれないからね。
お前は拷問官にむいているかもね。
まあ暫くは、その逆になるけど」
そう言った途端、神父はある国の鉱山に落とされていました。
「ちんたらしてるんじゃないぞ、お前達。働かない奴は飯抜きだ!」
「「「はいっ!!!」」」
神父は子供にされ、記憶があるまま鉱山奴隷となっていたのです。
ここに彼の身内はいないはずなのに、親が奴隷でその子供も奴隷に、ということになっていたのでした。
子供ではノルマが熟せず、満足に食事も貰えません。親も子に構えるほど、甘い状況ではありませんでした。
仕方ないので、あの袋を漁ります。
すると固くなったパンを見つけました。
何故か腐ることもなく、神父は空腹を凌ぐことが出来たのです。
ですが、そのパンさえ、いつまでもつことか。
そして鞭打たれ、傷の手当てをしてくれる人も頼れる者もいないこの場所で、いつまで生き延びられるのでしょうか?
人々を癒したのは自らの力ではないのに、自分が神に祈ったから民を救えるのだと、慢心していました。
教会に寄せられる全ての感謝も称賛もお布施も、自分の祈りがあったからだと、付け上がっていたのです。
力が必要でなくなった時は、そう伝えろと言われていたのに。
人々に失望されることが怖くて、緊急性がない状態でも、神からの子供を手放せなかったのです。
契約を守り、真面目に生きれば良かったのでしょうか?
途中で天使を返せば良かったのでしょうか?
そもそも何とかして欲しいと、超越者に祈ったのが駄目だったのでしょうか?
天使への待遇を、正当にすれば良かったのでしょうか?
それはもう遅いけど。
傲慢にさえならなければ、頑張るあの子に良い待遇くらいは与えられたことでしょう。
「何も無い時は清廉な男だったのに、堕ちるのが早過ぎる。だからこそ面白いのだけどね。
……誰もがそうだ。一度味わった快楽(称賛や期待など)は、なかなか忘れられないものだからね」
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