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和菓子の夢
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「どれだけ食べても太らないなんて、夢のようだわ!」
蜜柑みかんは、可愛い女の子。
お化粧にも、洋服にも、宝飾品にも興味津々。
でも、一番は甘いお菓子。
今まで我慢していたお菓子を、パクパクと口に運ぶ。
ケーキに、パイに、ブリュレ、チョコレートホンデュには果物やマシュマロをドボンと浸けて。
でも、一番好きなのは和菓子。
和三盆のお饅頭に、お団子、あんみつ……
「ああ、最高だわ。甘いものを食べるのを、止めなくて良いんだもの。神様ありがとう」
幸福そのものの蜜柑は、今までで一番の満面の笑みを浮かべる。
その傍らには彼女に付き添う婚約者の夏目が座り、泣きながらしっかりと彼女の手を握りしめている。
夢から醒めず眠り続ける彼女は、鶏ガラのように痩せていた。
――――それは恋人達の軽い悪ふざけだった。
夏目が蜜柑の家を訪ねると、彼女が夏ミカンを美味しそうに食べていた。
丁度その日は夏目が来るので掃除等で忙しく、朝食を抜いていた。
そして好物の夏ミカンを2つ食べていたのだ。
勿論、夏目が来る前に食べ終えるつもりで。
だが、早めに来た彼に見られてしまった。
「おっ。二つもなんて、ミカン食べ過ぎだぞ。ああ違うか、蜜柑が食べ過ぎなのか?」
彼にしてみれば、ただのダジャレだった。
でも彼を大好きな蜜柑は、ショックを受けた。
『ああ。私このままじゃ、彼に嫌われちゃう。ただでさえ太めなのに』
その日の蜜柑は、何を話したか覚えていない程放心していた。
彼はそれに気づかずに帰ったのだ。
夏目が海外出張で日本を離れている間、蜜柑はダイエットをしていた。
運動が苦手なので食事制限の方で。
その間も、彼らの電話でのやり取りは続いていた。だから異変に気づけなかった。
拒食症になる程、追い込まれた彼女のことを。
痩せても痩せても気が済まない。
でも痩せれば彼に嫌われないと、電話の声は明るい。
だから夏目は帰国し、彼女の両親と共に病院へ面会に行き衝撃を受けた。
自分の好きだった、明るくて少しポッチャリした彼女は、点滴の管に繋がれ痩せ細っていた。
自室の床で、意識不明で倒れていたらしい。
「なんでこんなことに………」
脳への情報は微弱な電気信号で伝達される。
電解質が崩れた体は誤作動を起こし、食べることに執着していた、彼女の味覚や臭覚への記憶を強く引き出した。
まるで本当に食べているように。
だから彼女は、夢の中でしっかり味覚を感じているのだ。
多くの人が悲しむ中、彼女はこの上ない幸福を感じていた。
「いくら食べても太らないわ。痩せている私は、永遠に彼に愛されるのね。良かった」
夏目や家族の声は、彼女には届かない……
蜜柑みかんは、可愛い女の子。
お化粧にも、洋服にも、宝飾品にも興味津々。
でも、一番は甘いお菓子。
今まで我慢していたお菓子を、パクパクと口に運ぶ。
ケーキに、パイに、ブリュレ、チョコレートホンデュには果物やマシュマロをドボンと浸けて。
でも、一番好きなのは和菓子。
和三盆のお饅頭に、お団子、あんみつ……
「ああ、最高だわ。甘いものを食べるのを、止めなくて良いんだもの。神様ありがとう」
幸福そのものの蜜柑は、今までで一番の満面の笑みを浮かべる。
その傍らには彼女に付き添う婚約者の夏目が座り、泣きながらしっかりと彼女の手を握りしめている。
夢から醒めず眠り続ける彼女は、鶏ガラのように痩せていた。
――――それは恋人達の軽い悪ふざけだった。
夏目が蜜柑の家を訪ねると、彼女が夏ミカンを美味しそうに食べていた。
丁度その日は夏目が来るので掃除等で忙しく、朝食を抜いていた。
そして好物の夏ミカンを2つ食べていたのだ。
勿論、夏目が来る前に食べ終えるつもりで。
だが、早めに来た彼に見られてしまった。
「おっ。二つもなんて、ミカン食べ過ぎだぞ。ああ違うか、蜜柑が食べ過ぎなのか?」
彼にしてみれば、ただのダジャレだった。
でも彼を大好きな蜜柑は、ショックを受けた。
『ああ。私このままじゃ、彼に嫌われちゃう。ただでさえ太めなのに』
その日の蜜柑は、何を話したか覚えていない程放心していた。
彼はそれに気づかずに帰ったのだ。
夏目が海外出張で日本を離れている間、蜜柑はダイエットをしていた。
運動が苦手なので食事制限の方で。
その間も、彼らの電話でのやり取りは続いていた。だから異変に気づけなかった。
拒食症になる程、追い込まれた彼女のことを。
痩せても痩せても気が済まない。
でも痩せれば彼に嫌われないと、電話の声は明るい。
だから夏目は帰国し、彼女の両親と共に病院へ面会に行き衝撃を受けた。
自分の好きだった、明るくて少しポッチャリした彼女は、点滴の管に繋がれ痩せ細っていた。
自室の床で、意識不明で倒れていたらしい。
「なんでこんなことに………」
脳への情報は微弱な電気信号で伝達される。
電解質が崩れた体は誤作動を起こし、食べることに執着していた、彼女の味覚や臭覚への記憶を強く引き出した。
まるで本当に食べているように。
だから彼女は、夢の中でしっかり味覚を感じているのだ。
多くの人が悲しむ中、彼女はこの上ない幸福を感じていた。
「いくら食べても太らないわ。痩せている私は、永遠に彼に愛されるのね。良かった」
夏目や家族の声は、彼女には届かない……
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