婚約を……破棄…？ですか……本当によろしいのですね？

第二王子サイラス・カイザード ①

私はこの国の第二王子だ。
10歳の時にフォスティナ・ヴァリス公爵令嬢と婚約した。

最初の頃は月に1度は公爵邸に赴き親交を深め、また月に1度は王宮へ茶会に呼んでいたが。
そのうち段々と口煩くなってきて公爵邸には行かなくなったし、茶会に呼ぶ事もなくなった。

今では出席しなければいけない舞踏会のみエスコートをしているだけだ。

兄上にも婚約者がいるらしいが私はまだ見たことがない。

まぁフォスティナが王妃教育を受けている時点で、王太子になるのは私なのだろう。
不甲斐無い兄上だ。
もう少ししっかりしてもらわねば、将来私の補佐すら出来ぬのではないかと心配になる。

そういえば、先日フォスティナが倒れたと聞いたが、学園の入学式で倒れるなど軟弱なっ！
そんなことで王妃などの責務が果たせるのか、いささか不安であるな。

入学式と言えば、あの令嬢……アイリス・ケルナー男爵令嬢だったか、くるくる表情が変わる愛らしい娘だったな。
　　
今まで私の周りには居ないタイプの令嬢だったが…

「フッ……」

まさか猫を助けるため木に登ろうとするとは…

フォスティナの様な澄ました顔ばかり見ていると、アイリス嬢の屈託のない笑顔は、なんというか癒されるな……