婚約を……破棄…？ですか……本当によろしいのですね？

第二王子サイラス・カイザード ③

私は、今まで自分の周りには居なかったタイプであるアイリス嬢に恋をしてしまったようだ。

私に近付いて来る令嬢は権力を手に入れたいと打算的に寄って来る者や、他を蹴落として媚びを売って来る見え透いた者ばかりだった。

将来この国を担う者として義務や責任感に重きを置き、先を見据えてやってきたつもりだ。

それが揺らぐなど在ってはならない……婚約者のフォスティナにも悪い……

だがっ！

離れよう、忘れようとするたび胸が引き裂かれるようになる。

手放したくないと思ってしまう……




花が咲き誇る様に笑う彼女が恋しい……

側に行くと匂い立つ、彼女の甘い香りが私の心を刺激してくる。




私の為に厳しい王妃教育を受けている、フォスティナへの罪悪感が日々積み重なって行く。

すまない――

許してくれ――




学園ですれ違う時…

舞踏会でエスコートする時…

フォスティナと目を合わせる事が出来ない…



私はこれ程弱い人間だったのかっ！

ただアイリス嬢の傍に居たい、声を聴きたい、姿が見たい、それだけのために生徒会まで利用している。



気持ちを伝えたい…

だめだっ！

私には婚約者がいるのだ！

王家で定められた婚約なのだ！

アイリス嬢では王妃も、王子妃ですらも無理だ。

彼女がどれ程頑張っても不可能だ、周りが許さぬだろう。



想うだけなら……

伝えなければ……

許されるだろうか……




私は………アイリスが――――――好きだ――――