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第二王子サイラス・カイザード ⑦ ~前日~
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「とうとう明日か……」
先日父上に学園の卒業パーティーを王宮の第3会場で行う許可を頂いた。
急な変更で生徒会は大変だったろうが、王宮侍女達の手も借りられたから助かったな。
コンコンコン…
「サイラス殿下、今よろしいでしょうか?」
この声はリリアか……
「ああ、入ってくれ。」
ルシウスとライアンしかいない時で丁度良かったな。
「失礼します」
「調査が終わったのか?」
「はい。まずこれを見て下さいませ」
手渡された調査書は、内心…思っていた通りの物だった。
「やはりそうか……」
私達がいくら調べても分からなかった事が、専門家に掛かるとこうもあっさり……
「ご苦労だった。 迷惑ついでに明日のパーティーは生徒会と行動を供にしてくれると有難い」
「心得ました。しかし迷惑などと、とんでもありませんわ。乳母であった母の事を忘れずにいてくれた事、嬉しく思います……では失礼致します」
リリアは学園を卒業後、国の調査機関に内定している。
これからも何かと世話になるかもしれないな……
「ルシウス、ライアン。これに目を通してくれ」
「………殿下、これは―――」
「………あの時の呟きは、こういう事か―――」
「私の想いは、一方通行だったらしい……」
「殿下……」
「くそっ!……」
「…王族以外立ち入り禁止区画の談話室にフォスティナを呼んでくれ」
フォスティナと、明日の事を話し合わなければ…
私の恋慕で国を傾かせる訳にはいかない。
「殿下、フォスティナ様をお連れ致しました」
ライアンが彼女を連れて来た様だ。
「何度もすまないなフォスティナ、座ってくれ」
「……調査が終わったのですか?」
「ああ…思った通りだった」
「そうですか…」
「明日決着を付けようと思う」
「どの様にされるおつもりですか?」
「その前に、これを見てくれ」
先程の調査書をテーブルに広げて見せる。
「これは………なるほど……上手く追及出来ない様に立ち回っておりますわね」
「何か良い案はあるか?」
「そうですわねぇ…でも、これならあれが役立ちそうですわ」
そう言ってメモを書き、自分の侍女へ渡すよう告げる。
「1時間もすればここへ届くでしょう」
「何が届くのだ?」
「ふふっ……母から預かった伯父様からの贈り物ですわ。 この国には存在しませんが、帝国には魔道具師がおりますのよ」
「っ!!」
「この国に魔法が存在しないのも、前に話した強制力の所為かもしれませんわね」
「強制力か……それは本当にどうにもならぬものなのか?」
「…………この件が片付けば、無くなるかもしれません……」
珍しく澄ました表情が崩れたな…
「フッ…ならば、これからに期待しよう――――――フォスティナ…」
「はい……?」
「本当に、申し訳なかった…」
「!……王族が簡単に頭を下げてはいけませんよ…」
「だがっ!」
「いいのですわ。仕方のない事だったのだと理解していますし……ちゃんとご自分で気付いたではありませんか」
「…………ありがとう」
その時、礼を言った私に驚いたのか、彼女は目を見開き、その後ふんわり笑った…
―――――――初めて見るフォスティナの笑顔だった。
先日父上に学園の卒業パーティーを王宮の第3会場で行う許可を頂いた。
急な変更で生徒会は大変だったろうが、王宮侍女達の手も借りられたから助かったな。
コンコンコン…
「サイラス殿下、今よろしいでしょうか?」
この声はリリアか……
「ああ、入ってくれ。」
ルシウスとライアンしかいない時で丁度良かったな。
「失礼します」
「調査が終わったのか?」
「はい。まずこれを見て下さいませ」
手渡された調査書は、内心…思っていた通りの物だった。
「やはりそうか……」
私達がいくら調べても分からなかった事が、専門家に掛かるとこうもあっさり……
「ご苦労だった。 迷惑ついでに明日のパーティーは生徒会と行動を供にしてくれると有難い」
「心得ました。しかし迷惑などと、とんでもありませんわ。乳母であった母の事を忘れずにいてくれた事、嬉しく思います……では失礼致します」
リリアは学園を卒業後、国の調査機関に内定している。
これからも何かと世話になるかもしれないな……
「ルシウス、ライアン。これに目を通してくれ」
「………殿下、これは―――」
「………あの時の呟きは、こういう事か―――」
「私の想いは、一方通行だったらしい……」
「殿下……」
「くそっ!……」
「…王族以外立ち入り禁止区画の談話室にフォスティナを呼んでくれ」
フォスティナと、明日の事を話し合わなければ…
私の恋慕で国を傾かせる訳にはいかない。
「殿下、フォスティナ様をお連れ致しました」
ライアンが彼女を連れて来た様だ。
「何度もすまないなフォスティナ、座ってくれ」
「……調査が終わったのですか?」
「ああ…思った通りだった」
「そうですか…」
「明日決着を付けようと思う」
「どの様にされるおつもりですか?」
「その前に、これを見てくれ」
先程の調査書をテーブルに広げて見せる。
「これは………なるほど……上手く追及出来ない様に立ち回っておりますわね」
「何か良い案はあるか?」
「そうですわねぇ…でも、これならあれが役立ちそうですわ」
そう言ってメモを書き、自分の侍女へ渡すよう告げる。
「1時間もすればここへ届くでしょう」
「何が届くのだ?」
「ふふっ……母から預かった伯父様からの贈り物ですわ。 この国には存在しませんが、帝国には魔道具師がおりますのよ」
「っ!!」
「この国に魔法が存在しないのも、前に話した強制力の所為かもしれませんわね」
「強制力か……それは本当にどうにもならぬものなのか?」
「…………この件が片付けば、無くなるかもしれません……」
珍しく澄ました表情が崩れたな…
「フッ…ならば、これからに期待しよう――――――フォスティナ…」
「はい……?」
「本当に、申し訳なかった…」
「!……王族が簡単に頭を下げてはいけませんよ…」
「だがっ!」
「いいのですわ。仕方のない事だったのだと理解していますし……ちゃんとご自分で気付いたではありませんか」
「…………ありがとう」
その時、礼を言った私に驚いたのか、彼女は目を見開き、その後ふんわり笑った…
―――――――初めて見るフォスティナの笑顔だった。
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