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ファルシオン学院
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「お嬢様、おはようございます」
「おはよう、リリィ」
「いよいよ今日からですね、お嬢様」
「ええ、支度をお願いね」
「お任せ下さいっ」
今日から私…いいえ、わたくしはファルシオン学院へ通うのですわ。
それから、この間グレンから揶揄われて気付いた事が御座います。
それは、『言葉遣いとは思考から!』
頭の中でも令嬢言葉を使っていれば、咄嗟の時にも対応できる筈です。
わたくしはやれば出来る子なのですわ。
要は慣れです。 慣れれば良いのです。 慣れなければ。 慣れる筈…
「ではお父様、行って参ります」
「セレンディア、気を付けて行くんだよ。 カイ。 頼んだぞ」
「畏まりました」
「お母様、行って来ます」
「無事に帰って来るのですよ、セレンディア。 カイ。 お願いね」
「お任せ下さい」
「お兄様、行って来ますね」
「セレン、怪我しない様に。 カイ。 必ず守れ」
「承知しました」
もう…みんな心配し過ぎですわ。
確かに学院で怪我をしてしまいましたが、王太子がお馬鹿だっただけの事ですもの。
わたくしはカイと2人で馬車に乗り込みます。
「………………………」
「どうかしたか? お嬢様」
「ちょっと感動してるの………初めての馬車………初めての外出」
「っ!?……確かに………ぶふっ!!」
ジーーーーーッ
「悪かった……くふっ!」
どうせ子供みたいですよ~~だ。 ふんっ!
あ~1回でも出掛けとけば良かった。……ですわ。
「おはよう、セレンディア」
「グレン! 待っててくれたのですか?」
「うん。 学院の中、分からないでしょ?」
「そう言えばそうね、 ありがとうグレン」
「どう致しまして」
「カイはどうしますの? 中まで入れますの?」
「はい。 旦那様が、学院長に私の編入を認めさせたと……クラスも同じ筈ですよ」
「じゃあ、セレンディアは元々俺の隣だから、反対側の席をカイへ譲って貰おうか。 そうすれば何かあった時も2人で守れる」
「そうして頂けると心強いですわ」
と、3人で話している時に背後から誰かが走って来る音が聞こえて来た。
「っ!お嬢様っ!」「「!!」」
どんっ!
「きゃあっ!」
べしゃっ!
「「「………」」」
えーと……誰かが走って来る音が聞こえて。
振り返ると水色髪の知らない令嬢がわたくしにぶつかりそうになってて。
咄嗟にカイがわたくしを庇って目の前に立ち。
そのカイに水色髪の知らない令嬢が払い除けられて悲鳴を上げて。
顔から盛大に倒れ込み。
今に至る…と。
「えっと…あなた。 大丈夫?」
がばっ!「酷いですっ!セレンディア様っ!」
「「「は?」」」
「いきなり払い除けるなんてっ!」
「いやいやいや……」っといけない令嬢言葉、令嬢言葉…
「あの…わたくしのお知り合いですかしら?」
「酷いっ!人を転ばせておいて、知らない振りするんですかっ!」
「いえ…わたくしが転ばせた訳では無いと思うのですが…?」
「っ!! またそうやってあたしを否定するんですねっ?」
「いえ、事実だと…」
「あたしっ! こんな理不尽には負けませんからっ!!」
と、言い捨てて走って行かれました。
「「「………」」」
「何だったんでしょう…?」
「さあ…?」 (なんかどっかで見た様な気もするが…?)
「理解しかねます…」
「とにかく…教室へ行こうか」
「「そうですね」」
「「セレンディア様!」」
教室に入ると、ルチアーナ様とカナリア様が駆け寄って来ました。
「ルチアーナ様、カナリア様、おはようございます」
「「おはようございます。セレンディア様」」
「セレンディア、あの一番後ろの外窓側が俺たちの席だよ」
「まぁ。 ちょうど3人用の席なのですね」
「うん。 俺と反対側の人がもう来てるみたいだから席を変わってくれる様言ってくるよ」
「お願いします」
「セレンディア様、お言葉直されましたのね」
「ええ、ルチアーナ様やカナリア様とお話しした時、わたくしだけ違ってましたでしょう? それでお母様にお願いしましたの」
「完璧ですわっ、ねぇルチアーナ様っ」
「そうですわね、良いと思いますわ。 醸し出す雰囲気は先日と同じく明るいですし、何よりお言葉遣いが変わった事で以前より優し気になりましたわ」
「ふふっ。 大変でしたのよ? まだ焦ったりすると元に戻ってしまうんですもの」
「セレンディア、 終わったよ」
「わかりました。 ではお2人共また後でお話ししましょう」
「「ええ、また後で」」
わたくし達が席に着いたら教師の方が来られて、編入生であるカイを紹介して下さいました。
そして、わたくしが例の王太子との一件で、記憶を失っている事も併せて説明して頂きました。
皆さんかなり驚かれた様子でしたが、王太子とメリンダ様の普段からの素行は皆さんご存じなので、奇異の目ではなく同情の眼差しを向けられてしまいましたわ。
けれどまぁ…これで何か失敗してしまっても、余程の事でもない限り許して頂けるでしょう。……多分…
そういえば忘れてましたが、先程の水色髪の令嬢は誰だったのかしら?
―――水色髪の令嬢side―――
やっと悪役令嬢のセレンディアがやってきたわっ!
約2ヶ月前に高熱出して起きた時、突然前世の記憶を思い出したの。
きっとここは乙女ゲームの世界なんだわ。
でも設定がちょっと狂ってるよね、国と学院の名前が違うし、なんでグレン様公爵子息なんだろう?
フリード王太子はあたしの記憶に無いし…まぁいいか。 どうせ推しはグレン様なんだから。
前世を思い出したあたしがヒロインなんだわ。
だって、2ヶ月前にグレン様との出会いイベントがあったものね。
急いでどこかに向かってるグレン様に曲がり角でぶつかるの。
『急いでたからごめんね、怪我はしてないかい?』
『このくらいなら大丈夫です、ただ…馬車まで連れて行って貰えますか?』
『あぁ、あの馬車だね』
『ありがとうございました』
『ではここで。失礼するよ』
で、また走って学院に戻って行ったんだよね。どこに向かってたんだろ?
「おはよう、リリィ」
「いよいよ今日からですね、お嬢様」
「ええ、支度をお願いね」
「お任せ下さいっ」
今日から私…いいえ、わたくしはファルシオン学院へ通うのですわ。
それから、この間グレンから揶揄われて気付いた事が御座います。
それは、『言葉遣いとは思考から!』
頭の中でも令嬢言葉を使っていれば、咄嗟の時にも対応できる筈です。
わたくしはやれば出来る子なのですわ。
要は慣れです。 慣れれば良いのです。 慣れなければ。 慣れる筈…
「ではお父様、行って参ります」
「セレンディア、気を付けて行くんだよ。 カイ。 頼んだぞ」
「畏まりました」
「お母様、行って来ます」
「無事に帰って来るのですよ、セレンディア。 カイ。 お願いね」
「お任せ下さい」
「お兄様、行って来ますね」
「セレン、怪我しない様に。 カイ。 必ず守れ」
「承知しました」
もう…みんな心配し過ぎですわ。
確かに学院で怪我をしてしまいましたが、王太子がお馬鹿だっただけの事ですもの。
わたくしはカイと2人で馬車に乗り込みます。
「………………………」
「どうかしたか? お嬢様」
「ちょっと感動してるの………初めての馬車………初めての外出」
「っ!?……確かに………ぶふっ!!」
ジーーーーーッ
「悪かった……くふっ!」
どうせ子供みたいですよ~~だ。 ふんっ!
あ~1回でも出掛けとけば良かった。……ですわ。
「おはよう、セレンディア」
「グレン! 待っててくれたのですか?」
「うん。 学院の中、分からないでしょ?」
「そう言えばそうね、 ありがとうグレン」
「どう致しまして」
「カイはどうしますの? 中まで入れますの?」
「はい。 旦那様が、学院長に私の編入を認めさせたと……クラスも同じ筈ですよ」
「じゃあ、セレンディアは元々俺の隣だから、反対側の席をカイへ譲って貰おうか。 そうすれば何かあった時も2人で守れる」
「そうして頂けると心強いですわ」
と、3人で話している時に背後から誰かが走って来る音が聞こえて来た。
「っ!お嬢様っ!」「「!!」」
どんっ!
「きゃあっ!」
べしゃっ!
「「「………」」」
えーと……誰かが走って来る音が聞こえて。
振り返ると水色髪の知らない令嬢がわたくしにぶつかりそうになってて。
咄嗟にカイがわたくしを庇って目の前に立ち。
そのカイに水色髪の知らない令嬢が払い除けられて悲鳴を上げて。
顔から盛大に倒れ込み。
今に至る…と。
「えっと…あなた。 大丈夫?」
がばっ!「酷いですっ!セレンディア様っ!」
「「「は?」」」
「いきなり払い除けるなんてっ!」
「いやいやいや……」っといけない令嬢言葉、令嬢言葉…
「あの…わたくしのお知り合いですかしら?」
「酷いっ!人を転ばせておいて、知らない振りするんですかっ!」
「いえ…わたくしが転ばせた訳では無いと思うのですが…?」
「っ!! またそうやってあたしを否定するんですねっ?」
「いえ、事実だと…」
「あたしっ! こんな理不尽には負けませんからっ!!」
と、言い捨てて走って行かれました。
「「「………」」」
「何だったんでしょう…?」
「さあ…?」 (なんかどっかで見た様な気もするが…?)
「理解しかねます…」
「とにかく…教室へ行こうか」
「「そうですね」」
「「セレンディア様!」」
教室に入ると、ルチアーナ様とカナリア様が駆け寄って来ました。
「ルチアーナ様、カナリア様、おはようございます」
「「おはようございます。セレンディア様」」
「セレンディア、あの一番後ろの外窓側が俺たちの席だよ」
「まぁ。 ちょうど3人用の席なのですね」
「うん。 俺と反対側の人がもう来てるみたいだから席を変わってくれる様言ってくるよ」
「お願いします」
「セレンディア様、お言葉直されましたのね」
「ええ、ルチアーナ様やカナリア様とお話しした時、わたくしだけ違ってましたでしょう? それでお母様にお願いしましたの」
「完璧ですわっ、ねぇルチアーナ様っ」
「そうですわね、良いと思いますわ。 醸し出す雰囲気は先日と同じく明るいですし、何よりお言葉遣いが変わった事で以前より優し気になりましたわ」
「ふふっ。 大変でしたのよ? まだ焦ったりすると元に戻ってしまうんですもの」
「セレンディア、 終わったよ」
「わかりました。 ではお2人共また後でお話ししましょう」
「「ええ、また後で」」
わたくし達が席に着いたら教師の方が来られて、編入生であるカイを紹介して下さいました。
そして、わたくしが例の王太子との一件で、記憶を失っている事も併せて説明して頂きました。
皆さんかなり驚かれた様子でしたが、王太子とメリンダ様の普段からの素行は皆さんご存じなので、奇異の目ではなく同情の眼差しを向けられてしまいましたわ。
けれどまぁ…これで何か失敗してしまっても、余程の事でもない限り許して頂けるでしょう。……多分…
そういえば忘れてましたが、先程の水色髪の令嬢は誰だったのかしら?
―――水色髪の令嬢side―――
やっと悪役令嬢のセレンディアがやってきたわっ!
約2ヶ月前に高熱出して起きた時、突然前世の記憶を思い出したの。
きっとここは乙女ゲームの世界なんだわ。
でも設定がちょっと狂ってるよね、国と学院の名前が違うし、なんでグレン様公爵子息なんだろう?
フリード王太子はあたしの記憶に無いし…まぁいいか。 どうせ推しはグレン様なんだから。
前世を思い出したあたしがヒロインなんだわ。
だって、2ヶ月前にグレン様との出会いイベントがあったものね。
急いでどこかに向かってるグレン様に曲がり角でぶつかるの。
『急いでたからごめんね、怪我はしてないかい?』
『このくらいなら大丈夫です、ただ…馬車まで連れて行って貰えますか?』
『あぁ、あの馬車だね』
『ありがとうございました』
『ではここで。失礼するよ』
で、また走って学院に戻って行ったんだよね。どこに向かってたんだろ?
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