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近付いて来る不穏な足音 ①
ハチャメチャだった記念舞踏会の帰り道、メリンダ様の事を聞いてみた。
「ねぇ、カイ。 メリンダ様はどうなったの?」
「あの女ですか…取り敢えず舞踏会の警備に引き渡しましたが…」
「セレンディア。 君はまだ貴族社会には疎かったね…幾ら学院内の出来事だったとはいえ、君は公爵家で彼女は男爵家の人間だ。まだ成人前であったのがせめてもの救いだね…でも処分は免れないだろう」
「処分って…」
「お嬢様、お優しい貴女には酷かもしれませんが、これを許すと学院は無法地帯になってしまいます」
「………」
そうか…それが貴族社会。 確かに私の知ってる世界でも警察には少年課、未成年犯罪者には少年院なんかも在ったわね…
「そうね…貴族は貴族の責任の取り方があるのだわね…」
「そうだね。 今迄のメリンダ嬢の言動は、王太子が居たから黙認されていただけで、本来の立場では絶対に許されないものなんだよ」
「修道院とか…送られるのかしら…?」
「お嬢様もあの女も成人前ですが、今日の一件は立派な傷害にあたります。取り調べで反省すらしないのであれば、その可能性も無いとは言えません」
「そう……」
「セレンディア…君が気に病む必要は無いよ。 彼女の自己責任だから」
「自己責任?」
「うん。 考えてみて? 君は記憶を失くして陛下から不敬罪を無効にすると言われた」
「ええ…」
「メリンダ嬢は素行の悪さを王太子の存在で黙認されていた…2人共免罪符を持ってた」
「…そうね」
「で、セレンディアはどうした? マナーの教えを乞い、言葉遣いを学んだ」
「ええ、頑張ったわ…」
「では、メリンダ嬢は?」
「たぶん、何もしなかったんじゃないかしら……」
「そうだね…なら、それは自己責任じゃないかな…」
「そうね…学ぶ余地も、直す時間も有った筈だわ……うん…」
(グレン様は凄いな…まるでお嬢様にどう言えば理解されるのかが分かっているみたいだ。 ここで今ちゃんと諭していなければ、恐らくお嬢様はずっと気に病んであの女に罪悪感すら持っていたに違いない)
「じゃあ、この話はお仕舞いだね。 公爵邸に着いたみたいだし」
「ええ。 ありがとう、グレン」
馬車の音が聞こえたのか、リリィが出迎えに来てくれた。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「ただいま、リリィ」
「旦那様方が談話室でお待ちですよ」
「わかったわ、グレンも行くでしょ?」
「もちろん。話もあるしね…」
わたくし達は、お父様達の待つ談話室へ向かった。
「ただいまですわ」
「お帰り、セレンディア。舞踏会は楽しかったかい?」
「はい! とても煌びやかで素敵でしたわ!」
「セレン…そのドレスは……」
「お兄様、えっと…あの…」
「あらぁ、セレンディアったらドレスが変わってるじゃないの」
「お母様、ごめんなさい。折角選んでくれたドレス…汚れてしまって…」
「このドレスはどうしたの?」
「こ、これは…そのう……グレンがこの間のデザイナーさんに頼んで…仕立ててくれてたみたいなの…」
「次の舞踏会か夜会にでも着て貰おうと思って、帰りに渡すつもりで馬車に乗せていたのですが、役に立った様で何よりです」
「とっても似合っているわよ」(本当に…これほど似合うドレスを作らせるなんて、彼も中々やるわね、ふふっ)
「グレン君…少し話し合う必要があるかな?」
え? お父様? なぜ笑顔が恐いのでしょうか?
「そうだねぇグレン…僕も聞きたいなぁ」ポン!ぐぐっ!
お兄様? グ…グレンの肩が痛そうですわ!?
「は…はい」(これは…逃げられないな。ちゃんと準備してからと思っていたが、仕方ない…)
あ、グレンが笑顔のお父様たちに連れて行かれちゃった…
―――ダニエルの執務室にて―――
さて…まずは王太子の事を話さなくてはね…
「公爵様に報告しなくてはならない事がございます」
「何かな?」
「今日、王太子が舞踏会へ来られたのですが、セレンディアに復縁を迫って来ました」
「!! それはそれは……で?」
「白紙撤回など自分は了承していない、と…セレンディアが婚約に肯けば済む話だと」
「ほぉ…随分ふざけた事を言ってくれるじゃないか」
「セレンを傷つけておいて…よくもそんな事!」
本当にな…
「それで、君はどう思う?」
「このまま放置すれば何れ手を下して来るでしょう。まずは…セレンディアに近づく為に、私と護衛のカイを片付けようとして来る筈です」
「そうだね…君はそれでも構わないのかい?」
「……この様な形になってしまい、先にお詫び致します」
「………」
公爵の目を真っすぐ見据えてこの言葉を紡ぐ…
「私、グレン・ファリアスタは、セレンディアを心から愛しております」
「だから、巻き込まれても構わない…と?」
「セレンディアの為なら巻き込まれたなどとは思いません…私の命に代えても守ります」
「よく言った!! 君をセレンディアの婚約者……候補に入れておこう」
「ぶふっ!」(父上…この流れで候補は無いでしょう)
「あ…ありがとう、ございます?」
候補かぁ……まぁ、一歩前進か、な? はぁぁ…
「ねぇ、カイ。 メリンダ様はどうなったの?」
「あの女ですか…取り敢えず舞踏会の警備に引き渡しましたが…」
「セレンディア。 君はまだ貴族社会には疎かったね…幾ら学院内の出来事だったとはいえ、君は公爵家で彼女は男爵家の人間だ。まだ成人前であったのがせめてもの救いだね…でも処分は免れないだろう」
「処分って…」
「お嬢様、お優しい貴女には酷かもしれませんが、これを許すと学院は無法地帯になってしまいます」
「………」
そうか…それが貴族社会。 確かに私の知ってる世界でも警察には少年課、未成年犯罪者には少年院なんかも在ったわね…
「そうね…貴族は貴族の責任の取り方があるのだわね…」
「そうだね。 今迄のメリンダ嬢の言動は、王太子が居たから黙認されていただけで、本来の立場では絶対に許されないものなんだよ」
「修道院とか…送られるのかしら…?」
「お嬢様もあの女も成人前ですが、今日の一件は立派な傷害にあたります。取り調べで反省すらしないのであれば、その可能性も無いとは言えません」
「そう……」
「セレンディア…君が気に病む必要は無いよ。 彼女の自己責任だから」
「自己責任?」
「うん。 考えてみて? 君は記憶を失くして陛下から不敬罪を無効にすると言われた」
「ええ…」
「メリンダ嬢は素行の悪さを王太子の存在で黙認されていた…2人共免罪符を持ってた」
「…そうね」
「で、セレンディアはどうした? マナーの教えを乞い、言葉遣いを学んだ」
「ええ、頑張ったわ…」
「では、メリンダ嬢は?」
「たぶん、何もしなかったんじゃないかしら……」
「そうだね…なら、それは自己責任じゃないかな…」
「そうね…学ぶ余地も、直す時間も有った筈だわ……うん…」
(グレン様は凄いな…まるでお嬢様にどう言えば理解されるのかが分かっているみたいだ。 ここで今ちゃんと諭していなければ、恐らくお嬢様はずっと気に病んであの女に罪悪感すら持っていたに違いない)
「じゃあ、この話はお仕舞いだね。 公爵邸に着いたみたいだし」
「ええ。 ありがとう、グレン」
馬車の音が聞こえたのか、リリィが出迎えに来てくれた。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「ただいま、リリィ」
「旦那様方が談話室でお待ちですよ」
「わかったわ、グレンも行くでしょ?」
「もちろん。話もあるしね…」
わたくし達は、お父様達の待つ談話室へ向かった。
「ただいまですわ」
「お帰り、セレンディア。舞踏会は楽しかったかい?」
「はい! とても煌びやかで素敵でしたわ!」
「セレン…そのドレスは……」
「お兄様、えっと…あの…」
「あらぁ、セレンディアったらドレスが変わってるじゃないの」
「お母様、ごめんなさい。折角選んでくれたドレス…汚れてしまって…」
「このドレスはどうしたの?」
「こ、これは…そのう……グレンがこの間のデザイナーさんに頼んで…仕立ててくれてたみたいなの…」
「次の舞踏会か夜会にでも着て貰おうと思って、帰りに渡すつもりで馬車に乗せていたのですが、役に立った様で何よりです」
「とっても似合っているわよ」(本当に…これほど似合うドレスを作らせるなんて、彼も中々やるわね、ふふっ)
「グレン君…少し話し合う必要があるかな?」
え? お父様? なぜ笑顔が恐いのでしょうか?
「そうだねぇグレン…僕も聞きたいなぁ」ポン!ぐぐっ!
お兄様? グ…グレンの肩が痛そうですわ!?
「は…はい」(これは…逃げられないな。ちゃんと準備してからと思っていたが、仕方ない…)
あ、グレンが笑顔のお父様たちに連れて行かれちゃった…
―――ダニエルの執務室にて―――
さて…まずは王太子の事を話さなくてはね…
「公爵様に報告しなくてはならない事がございます」
「何かな?」
「今日、王太子が舞踏会へ来られたのですが、セレンディアに復縁を迫って来ました」
「!! それはそれは……で?」
「白紙撤回など自分は了承していない、と…セレンディアが婚約に肯けば済む話だと」
「ほぉ…随分ふざけた事を言ってくれるじゃないか」
「セレンを傷つけておいて…よくもそんな事!」
本当にな…
「それで、君はどう思う?」
「このまま放置すれば何れ手を下して来るでしょう。まずは…セレンディアに近づく為に、私と護衛のカイを片付けようとして来る筈です」
「そうだね…君はそれでも構わないのかい?」
「……この様な形になってしまい、先にお詫び致します」
「………」
公爵の目を真っすぐ見据えてこの言葉を紡ぐ…
「私、グレン・ファリアスタは、セレンディアを心から愛しております」
「だから、巻き込まれても構わない…と?」
「セレンディアの為なら巻き込まれたなどとは思いません…私の命に代えても守ります」
「よく言った!! 君をセレンディアの婚約者……候補に入れておこう」
「ぶふっ!」(父上…この流れで候補は無いでしょう)
「あ…ありがとう、ございます?」
候補かぁ……まぁ、一歩前進か、な? はぁぁ…
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