8 / 46
第一章 現役女子高生、異世界で超能力に目覚める

08:都の外へ! まさかの敵だらけ?

しおりを挟む
 私はまた地図を手に、ケースを背負って、石畳の道を進んでいる。
 転生してから、私はまだ王都から出たことがなかった。王都は城壁で囲まれているらしく、通行証がないと向こう側には行けないのだ。

 商人であるベルから借りた通行証を持って、城壁の近くに着いた。

「ここが南門かな?」

 ゲートの上に『南』と書かれた看板があるので、ここで合っているだろう。
 通行証を取り出し、門番に見せる。

「どうぞ」

 感情のない声色で告げる門番。
 私は生まれて初めての世界に踏みこんだ。





 どうして王都の外に用があるのかというと、王都を出てすぐの農民の村に用があるからだ。そこの長に定期的に麻布を届けているらしい。
 服すら買えない貧しい人たちの集まりなので、布だけでもと無償であげている。
 ちなみに私はおとといから、自分が稼いだお金で綿生地の服を買って着ている。近々、ベルが織った より上質なものを着れそうなのだ。それはいいとして。

 城壁を越えるとすぐに農村が見えた。王都用の食料を生産してくれているところらしい。……王都の人間に恨みを持っている人もいるかもしれない。

「誰だ? あれは男か? 女か?」
「ワンピース着てるから女だろ。胸でかくねぇか?」
「俺らみてぇに髪短いぞ。面白い髪の色してんな」

 む、胸の話は聞かなかったことにして……私の髪の話をしてる? ピンクの髪は普通に意味わかんないけど、この髪型だよ。王都にいる女の人でこんなに髪が短い人いないもんね。
 まぁ、短い方がお手入れしやすいって気づいちゃったんだけど。

「こんにちは」

 自分のことを言っていた男三人組にあいさつしてみる。

「お、王都から来たやつが自分からあいさつしたぞ……」
「あいさつって基本じゃないんですか?」

 前世では吹奏楽部に入っていたのもあって、歯切れのいい大きな返事が必須だった。

「しかも敬語使ってきたぞ……」
「王都から来た人って、そんなに態度が大きいんですか?」
「知らねぇのか⁉︎ 俺ら農民は、王都のやつらに奴隷扱いされてんのによ」

 やばいっ! 反感買っちゃったかな……。とりあえずアンマジーケから来たってことは言っておかないと。

「ごめんなさい。私、前世はアンマジーケに住んでいて、転生してこの世界に来たばかりなんです。まだここの社会の仕組みとかよく分からなくて」
「おいおいっ、転生とか本当にあるのかよ!」

 いつも驚かれるけど、これからもこの話をするとみんな同じ反応するんだろうなぁ。

「それならしょうがねぇな。他の王都のやつより優しそうだしな」

 警戒していた三人組の顔が和らいだところで、私は尋ねてみる。

「それで……お仕事中申し訳ないんですけど、ここの長のお家を教えてくださいますか?」
「ああ、分かった」

 よしよし、いい調子!
 三人組のうちの一人が、私に付き添ってくれることになり、無事に大量の麻布を村長に届けられた。

「ありがとう。そなたがベルのところで暮らしているグローリアかな?」
「はい。はじめまして」

 白いひげを長く伸ばした、いかにも長らしい見た目の人だった。私は村長と両手で握手をする。

「ベルから聞いているかもしれませんが、私はアンマジーケ出身なので、この世界のことがよく分からなくて。身分制度とか、詳しく教えてくださいますか?」
「ああ、承知した」

 農民に聞くのはタブーかもしれないけど、村長なら教えてくれるよね。よかった!

「まず、この国はアールテム王国の国王陛下が治められておる。陛下がもちろん一番お偉い。次に王室や王室とつながりを持つ貴族がおり、その次に王都に住む都の民じゃな。そなたのことだ」

 私って貴族の次に偉いってこと? ……偉いとかよく分かんないけど。

「そこまでが自由な暮らしが保証されている身分だ。ワシらはその下の農民、そして戦争に負けて捕虜になった奴隷と続く」
「そうは言ってもよ、俺らもほぼ奴隷じゃねぇか?」

 ここに連れてきてくれた男がグチをこぼす。
 前世で習った世界史をふと思い出した。

「あの、農民と奴隷の違いって、人か人じゃないかってことですかね……?」
「……そういうことじゃな」

 村長は重く、うんとうなずく。
 自分の知らないところで、この農民たちは肉体的にも精神的にも大変な思いをしてるんだろうな……。

「しかも今年はなかなか暖かくならねぇから、作物の成長が遅くて困ってるんだよ」

 村長に聞いたとはいえ、村長も苦い顔をするなんて。やっぱり失礼だったかな。

「えっと……私、ストリートミュージシャンっていう、屋外で演奏してお金をもらうっていうのをやっていて……せっかくなんで、この村のみなさんに私の演奏を聴いてもらいたくて」
「どうせ金取るんだろ?」

 男が、さっき会った時の疑り深い表情に戻って、吐き捨てるように言う。

「いつもは演奏がいいと思ったら、好きな金額を入れてもらってますけど、今日はお代いりませんよ」

 私は慌てて否定する。
 当たり前だって! こっちからわざわざお金をぶん取ることはしないって!

「『みんなに』と言われても、ケガをしている人や病気の人には聴いてもらえないのう……」
「あ、集まれる人だけでいいですよ!」
「農民が音楽に触れられるなんて、こんな機会はないのじゃが……」

 どうしよう。そんなにみんなに聴いてほしいって頼まれちゃあ、こっちも考えないと。

「それなら、演奏しながら村の中を歩きましょうか? そうしたら家から出られない人も聴けますよね?」
「おおっ、いい考えじゃな!」

 前世も王都でもこれをやったら間違いなく迷惑だけど、ここならいいのかな? 病気だと寝てる人もいるんじゃ?
 まぁ、いっか。





 私はサックスを組み立てながら、ふと村長が言っていたことを思い出す。
 ケガや病気の人……。もしかしたらこの前の常連さんやリリーを治した時のように、その人たちも治せたりして!

 村長の家に案内してくれた、あの男の人の顔が浮かぶ。あの様子だと、私たち都の民に対しての先入観が激しいようだ。あいさつはしないし、身分が違うからって初対面でもタメ口で、大きな態度を取るって言ってたし。

 そりゃあ、ああいう反応するに決まってるか。

「よし」

 楽器を左手で支えながら立ち上がり、目を閉じて五感を集中させる。同情の念から生まれたエネルギーが、今にも体からあふれんとしていた。

「道案内、よろしくお願いします」
「こちらこそ! 演奏楽しませていただきます」

 案内役の女の人が手を挙げた。演奏開始の合図である。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...