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第二章 元女子高生、異世界でどんどん成り上がる
28:陛下、そんなに期待なされても……
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「……余計なことをしてくれやがって」
一ヶ月前、宣戦布告に応じて『しまった』ものの、兵力差でゴリ押して何とか勝つことができた。
しかし、やはりお金が足りない。
「なぜ平民と農民の税を軽くしたんだ! あのグローリアが平民出身だからか!?」
トリスタンは書類を机に打ちつける。グローリアに法律を変えられたせいで、貴族から着服していた金もなくなってしまった。
「あの女は何を考えている! 平民と農民から税を取れないようでは、どんどん財政難になるぞ」
「私を呼ぶ声がしたんですが?」
偶然、前を通りかかったグローリアが、ドアから顔をのぞかせている。
「げっ」
「税収改革について、ご説明いたしましょうか」
お願いされてもいないが、グローリアは勝手にしゃべり出した。
「まず、あなたが貴族をだまして着服していたお金は、こちらでこっそり回収しておきました。回収できたものは返却しましたが、使ってしまったものもあるでしょう。どうなるか、お分かりですよね?」
「まさか……」
「財産没収です。陛下もかなりのお怒りなので、大公爵の地位を大きく揺るがしかねませんね」
「だましてなどいない! 向こうが善意で渡してくれていたものだ!」
「賄賂も禁止ですよ。では本題に」
トリスタンの必死な弁解も許さず、グローリアは淡々と説明を続ける。
「『平民と農民から税を取れないと財政難になる』とおっしゃっていたようですが、むしろ先月より黒字になりましたよ」
「そんなわけがなかろう!」
「では、報告書をご覧になりますか」
かばんから一枚の紙をちらつかせるグローリア。
「……いや。なぜだ! なぜそうなった!」
「貴族一人が払う税金、農民何人分になるかご存じで?」
「せいぜい三人くらいだろう」
「十人ですよ、十人!」
目も口もぽかんと見開かれ、「じゅう……にん」と口からこぼれた。
「それなら農民一人一人の負担を軽くして、貴族一人に払ってもらった方がいいに決まっています。おまけに貴族にとっても、税金は安くなったんですからね」
「それが黒字になった原因か?」
「いえ、まだありますよ」
勝ち誇るような笑みをされては、トリスタンは焦るしかない。冷や汗をかいている。
「アールテムの国民であれば、誰でも王都に入れるようにしましたよね。そうしたら経済活動が活発になって、収入が増えたようで」
「たかがそれだけなのか」
「それだけです」
トリスタンにとって、完全に盲点だった。常に王都に入ろうとしている人に警戒していた。いつ都の民以外の人から王都に攻めこまれるか分からず、『自由』にした時の利点を考えられていなかったのだ。
縛りつけることによってしか、トリスタンは国を安定させることができなかったのである。
「貴族にも税金を課すことに反対が出ると思ってましたが、意外にも出なくて。何かおかしいと思って調べたら、着服があったと分かって納得しました」
自分の肥やしにしていたものが、自らを陥れ、敵の株を上げることに使われた。
舌打ちをするトリスタンに一切反応せず、グローリアは部屋を出ていく。
「おのれ……得意げになっているその鼻を、いつかへし折ってやるぞ!」
叩きつけられた書類。そのすべてがただの紙くずとなってしまった。
私は廊下を歩きながら、かばんを持たない方の腕をのばし、胸の筋肉を伸ばす。
「あーーーーっ、最っ高」
あのトリスタンのこっちをにらむ顔、すっごく悔しそうなあの顔。たまらん。
まぁ、よく考えなくても分かることだし……。世界が違うからかな?
「こんにちは、ご機嫌がよさそうで」
王城の使用人に声をかけられた。
「今日、大公爵様がお越しになっているでしょう? まぁ、色々言っておいたんですよ」
「ああ……なるほどです」
苦笑いする使用人と「このあと接する時は気をつけないとですね」と言い合って、彼女と別れた。
その足で『王の広間』に向かう。
「それで、まだトリスタン大公爵を置いておくつもりですか」
「『政治ができないなら戦争の指揮を!』って言われてしまったから……」
正直、あの戦争に勝つとは思っていなかった。案の定負けて、ついにお咎めを受けるとばかり思っていた。
「だが……着服が分かってしまった以上、せっかく勝っても処分しなければならない」
「法律では、六割の減給と一年の謹慎期間をもうけることになっていますが」
国王としては、戦争には勝ったので刑を軽くしたいのだろう。
いや……そうは言ってもさ、二十年間やってきたとかヤバすぎるって。
「減給については法律のとおりで。謹慎期間を十ヶ月にしよう」
おっ、意外とトリスタンに甘々な措置をとるのかと思いきや。思ってたより厳しめ?
「はい、承知いたしました」
私は手帳にスラスラとメモをする。私としては減給じゃなくて給料没収にして、国外追放くらいしたいけど。
「私が考えていたものより、陛下は厳しくご判断なされましたね」
「そうか。……そうだな。そなたと出会う前なら判断が甘くなっていたかもしれないな」
国王は何か思い出したように、私に質問をしてきた。
「納税の改革も王都への来訪を許すことも、私としてはかなり独創的だと思うのだが……そなたはなぜそのようなことができる?」
「なぜ、と言いますと、私がアンマジーケから来たから、あとは元平民で農民とつながりがあるからですかね」
「それはそうなのだが、思いついたとしてもなぜできる?」
うわぁ、難しいこと聞いてくるなぁ。なんか前世で「パートリーダーとして一言どうぞ!」って言われた時くらいの無茶振りだよね!
そうだね……やっぱりこれかな。
「平民から公爵や宰相にさせていただいたのに恐縮ですが、そこまで地位とか爵位にこだわりがないんですよね。『こういうことをやりたいけど、身内の貴族たちの目が怖い』とか、そういうのがないんです」
もちろん考えないことはないが、それが理由で妥協したり白紙にしたりはしない。
「私は貴族ではありますが、あくまで平民や農民との中立的な立場でありたいと思っております」
そうは言っても、今まで考え方が貴族よりではない貴族はいなかったから、どうやら『平民派』って呼ばれてるらしいけど。
しかも拘束をゆるめたことで、後戻りできなくなったし。
「うん、やはりそなたは変わっている。よい意味で『変人』だな」
国王にちょちょっと手招きされたので、ゆっくり近づいていく。ある程度近づくが、もっと近くに来いということらしい。
結局 国王の手が届くところ、至近距離まで近づいた。その両手が私の両肩に音を立てて乗っかる。
「私が思ったとおり、そなたは国を変えられる人だ。よろしく頼むぞ」
肩にずしっと重くのしかかっているように感じて、私の顔は一気にこわばった。
っていうか、宰相だから仕方なく仕事をやっているだけですよ⁉︎ ホントは音楽で食べていくつもりだったのに!
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しかし、やはりお金が足りない。
「なぜ平民と農民の税を軽くしたんだ! あのグローリアが平民出身だからか!?」
トリスタンは書類を机に打ちつける。グローリアに法律を変えられたせいで、貴族から着服していた金もなくなってしまった。
「あの女は何を考えている! 平民と農民から税を取れないようでは、どんどん財政難になるぞ」
「私を呼ぶ声がしたんですが?」
偶然、前を通りかかったグローリアが、ドアから顔をのぞかせている。
「げっ」
「税収改革について、ご説明いたしましょうか」
お願いされてもいないが、グローリアは勝手にしゃべり出した。
「まず、あなたが貴族をだまして着服していたお金は、こちらでこっそり回収しておきました。回収できたものは返却しましたが、使ってしまったものもあるでしょう。どうなるか、お分かりですよね?」
「まさか……」
「財産没収です。陛下もかなりのお怒りなので、大公爵の地位を大きく揺るがしかねませんね」
「だましてなどいない! 向こうが善意で渡してくれていたものだ!」
「賄賂も禁止ですよ。では本題に」
トリスタンの必死な弁解も許さず、グローリアは淡々と説明を続ける。
「『平民と農民から税を取れないと財政難になる』とおっしゃっていたようですが、むしろ先月より黒字になりましたよ」
「そんなわけがなかろう!」
「では、報告書をご覧になりますか」
かばんから一枚の紙をちらつかせるグローリア。
「……いや。なぜだ! なぜそうなった!」
「貴族一人が払う税金、農民何人分になるかご存じで?」
「せいぜい三人くらいだろう」
「十人ですよ、十人!」
目も口もぽかんと見開かれ、「じゅう……にん」と口からこぼれた。
「それなら農民一人一人の負担を軽くして、貴族一人に払ってもらった方がいいに決まっています。おまけに貴族にとっても、税金は安くなったんですからね」
「それが黒字になった原因か?」
「いえ、まだありますよ」
勝ち誇るような笑みをされては、トリスタンは焦るしかない。冷や汗をかいている。
「アールテムの国民であれば、誰でも王都に入れるようにしましたよね。そうしたら経済活動が活発になって、収入が増えたようで」
「たかがそれだけなのか」
「それだけです」
トリスタンにとって、完全に盲点だった。常に王都に入ろうとしている人に警戒していた。いつ都の民以外の人から王都に攻めこまれるか分からず、『自由』にした時の利点を考えられていなかったのだ。
縛りつけることによってしか、トリスタンは国を安定させることができなかったのである。
「貴族にも税金を課すことに反対が出ると思ってましたが、意外にも出なくて。何かおかしいと思って調べたら、着服があったと分かって納得しました」
自分の肥やしにしていたものが、自らを陥れ、敵の株を上げることに使われた。
舌打ちをするトリスタンに一切反応せず、グローリアは部屋を出ていく。
「おのれ……得意げになっているその鼻を、いつかへし折ってやるぞ!」
叩きつけられた書類。そのすべてがただの紙くずとなってしまった。
私は廊下を歩きながら、かばんを持たない方の腕をのばし、胸の筋肉を伸ばす。
「あーーーーっ、最っ高」
あのトリスタンのこっちをにらむ顔、すっごく悔しそうなあの顔。たまらん。
まぁ、よく考えなくても分かることだし……。世界が違うからかな?
「こんにちは、ご機嫌がよさそうで」
王城の使用人に声をかけられた。
「今日、大公爵様がお越しになっているでしょう? まぁ、色々言っておいたんですよ」
「ああ……なるほどです」
苦笑いする使用人と「このあと接する時は気をつけないとですね」と言い合って、彼女と別れた。
その足で『王の広間』に向かう。
「それで、まだトリスタン大公爵を置いておくつもりですか」
「『政治ができないなら戦争の指揮を!』って言われてしまったから……」
正直、あの戦争に勝つとは思っていなかった。案の定負けて、ついにお咎めを受けるとばかり思っていた。
「だが……着服が分かってしまった以上、せっかく勝っても処分しなければならない」
「法律では、六割の減給と一年の謹慎期間をもうけることになっていますが」
国王としては、戦争には勝ったので刑を軽くしたいのだろう。
いや……そうは言ってもさ、二十年間やってきたとかヤバすぎるって。
「減給については法律のとおりで。謹慎期間を十ヶ月にしよう」
おっ、意外とトリスタンに甘々な措置をとるのかと思いきや。思ってたより厳しめ?
「はい、承知いたしました」
私は手帳にスラスラとメモをする。私としては減給じゃなくて給料没収にして、国外追放くらいしたいけど。
「私が考えていたものより、陛下は厳しくご判断なされましたね」
「そうか。……そうだな。そなたと出会う前なら判断が甘くなっていたかもしれないな」
国王は何か思い出したように、私に質問をしてきた。
「納税の改革も王都への来訪を許すことも、私としてはかなり独創的だと思うのだが……そなたはなぜそのようなことができる?」
「なぜ、と言いますと、私がアンマジーケから来たから、あとは元平民で農民とつながりがあるからですかね」
「それはそうなのだが、思いついたとしてもなぜできる?」
うわぁ、難しいこと聞いてくるなぁ。なんか前世で「パートリーダーとして一言どうぞ!」って言われた時くらいの無茶振りだよね!
そうだね……やっぱりこれかな。
「平民から公爵や宰相にさせていただいたのに恐縮ですが、そこまで地位とか爵位にこだわりがないんですよね。『こういうことをやりたいけど、身内の貴族たちの目が怖い』とか、そういうのがないんです」
もちろん考えないことはないが、それが理由で妥協したり白紙にしたりはしない。
「私は貴族ではありますが、あくまで平民や農民との中立的な立場でありたいと思っております」
そうは言っても、今まで考え方が貴族よりではない貴族はいなかったから、どうやら『平民派』って呼ばれてるらしいけど。
しかも拘束をゆるめたことで、後戻りできなくなったし。
「うん、やはりそなたは変わっている。よい意味で『変人』だな」
国王にちょちょっと手招きされたので、ゆっくり近づいていく。ある程度近づくが、もっと近くに来いということらしい。
結局 国王の手が届くところ、至近距離まで近づいた。その両手が私の両肩に音を立てて乗っかる。
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