5 / 11
邪神さま、福音をたれ給う。
しおりを挟む
教祖としては、時に福音を下賜してやらねばならぬ。でなければ、現人神がいる意味がない。
手に入れたものは最大限利用しなければならない。
よって、高い功徳を積んだもの――つまりは、多く上納金を納めた者――に、邪神さまから直に福音を賜る機会をもうけていた。
今日も信者がひとり、恩恵に浴する機会を得た。
邪神さまの御簾の前に進み出て平伏する。邪神さまは御簾の奥、姿を見ることはかなわない。そしてその言葉も、陛下の者――ソウタを通してしか聞くことはできない。
それでも信者は、かしこまって全身で敬意を表していた。
信者は灰田恵と名乗った。
「このたびは邪神さまにお目もじがかない、まことに光栄に存じます」
恵は平伏したまま、緊張した声を発した。それをソウタが小声で、咲――邪神さまに伝える。もちろん咲にも聞こえているのだが、そこは形式、お約束というものである。
「『そなたの功徳は聞き知っている。そなたの望みを申せ』と、邪神さまはおっしゃっております」
「ありがたき幸せに存じます」
さすがにソウタも、目上の大人に対してタメ口は使えなかった。だが大人たちは、それどころではなかったようだ。
「わたくしの望みは、金、でございます」
咲に取り次いだソウタに、困惑の表情がうかんだ。どうしようか、迷ったが、咲の返事をそのまま伝えることにした。
「金とはなんじゃ、と邪神さまが問うておられます」
「は?」
思わぬ問いに、恵は困った。今さらごく当たり前のことを聞かれても、とっさになんと説明したものか言葉に詰まってしまう。
「金とはその、そう、この世のすべてを買えるのです。望みのものはなんでも手に入り、願いをかなえることができます」
「咲さま? お分かりになりましたか?」
ソウタが小声で尋ねる。
「うむ。本で得た知識はあるのじゃが……妾は自分で使うたことがないゆえ、ありがたみがわからぬ。どのくらいあればよいのじゃ?」
「そうか、なるほど」
脇でやり取りを聞いていた教祖が口を挟んだ。
咲が暮らしていたのは平安の前期の頃。まだ貨幣経済も発展途上だ。さらに米ほか必要なものは租税や貢物として不自由なく手に入っただろうから、自分から何かを贖うという行為は必要ない。良家の子女がみずから「買い物をする」という光景は存在しないのだ。
そのような概説を教祖に聞かされ、その場にいた一同は――咲も含めて――おおいに納得したのだった。
邪神さまは正真正銘、やんごとなき姫君だったのである。
そうと知った恵は、ますます恐れ入ると同時に、自分の卑俗さが恥ずかしくなった。自分はなんとレベルの低い望みを抱えていたのだろうか、と。
内心恥じ入っている恵に、ソウタを通して咲が声をかける。
「そなたの望み、あいわかった。だが妾にはその価値がわからぬ。どの程度のものを望んでおるのか。そなたが思い描くかぎりの望みを述べてみよ」
言われて、恵は語り始めた。金が手に入るとどれほど嬉しいのか。どんなものが手に入るのか。どれほど満足できるのか。
「ううむ。そなたの思いが伝わらぬ。そなたの思いは、そんなものか? 嬉しいとは、それが手に入ったとは、どんな心持ちじゃ? そもそも、何を手に入れたいのじゃ? 金が手に入ればよいのか?」
「はい。それはもう、幸せにございます」
「そなたの幸せとは、どんな心持ちじゃ? 思いつくかぎりを妾に伝えてみよ」
恵は必死に説明しようとした。たくさんお金があればいい。お金がなくて汲々としなくてすむ。ほしいものは何でも手に入る。
では自分のほしいものとは? 自分は何がほしかった?
日々の稼ぎを得るために仕事に追われ、ほしいものを我慢してひもじい思いをして、そんな生活が嫌で嫌で、教団に多額のお布施を寄進し、望みがかなうよう願った。そうまでして実現したかった「望み」とはなんだったのか?
「私は……日々お金に困って、毎日の生活に追われているのが嫌だったのです。こんな生活から抜け出たいと思わない日はありませんでした」
いいものがほしい。たくさんのものがほしい。それは漠然とした象徴で、自分はただ日々の平穏がほしかっただけなのだと、彼女はだんだんわかってきた。
「うむ。おいらか(穏やか)なる日々を望むのじゃな。なれば、その心持ちを思い描いてみよ。そのあらん限りを言の葉にして、妾に申し伝えてみよ」
「はい……はい!」
恵は語った。心穏やかな日々。あくせくすることもなく、煩わしい出来事もなく、日々幸せを感じながら平凡に毎日を過ごしてゆく。
そうなったらどんなにか幸せだろうと思いながら、そうさせてくれない人間関係、経済事情、諸般の雑事。それらを思って、それに心囚われて鬱屈していた自分を思い出して、我知らず恵は涙を流していた。
「私はこれまで随分と他人に振り回されてきました。傷ついて疲れて、自分は不幸だとずっと思ってきました。こんな自分でいたくないと、もっとすごい自分に変わりたいと夢見ていました。
お金があれば、それが叶うんじゃないかと、ずっと信じてきました。でも、そうじゃないんですね。私がほしかったものは、そうじゃないんですね」
「そなたの心根、しかと妾にも伝わったよ。いたき(つらい)思いをしてまいったのじゃな」
咲の言葉は、恵を癒すように優しく包み込んだ。ねぎらいの言葉は彼女の心に沁みわたってゆき、彼女はこのうえない安らいだ感覚に、母の胸に抱かれているような、穏やかな気持ちになったのである。
「もう大丈夫。あやなきことに惑わずともよい。そなたの心根は誤ってはおらぬ。憂きことがあっても、それはかりそめのもの。そなたの魂を傷つけることはできぬ。おのが力を信ぜよ。そなたは充分にいたき事を経てまいった。それは必ず、そなたの力になろう」
「はい……はい」
「惑うた時はミヅチに頼るがよい。そなたらの師は必ずやそなたらを能く導くであろう」
「はい……ありがとうございます」
ぽろぽろと涙を流し続けながら、恵は平伏した。自分では立つことができず、同僚たちに両脇を支えられて退出する。
清々しくも感動的な空気に満たされて一同が退出する中、ひとり残って苦々しい顔をしていたのは、ミヅチである。
「見事なセラピストぶりですな」
ミヅチの言葉は皮肉成分たっぷりだった。
「だが、我らが邪神さまに期待しているのは、自分探しの答えではない。己が欲望を満たすこと。恨みつらみを晴らすこと。人はみな欲に囚われている。その望みを叶えたいと思うからこそ、我らに縋るのだ。
その期待に応えられぬならば、むしろ何もしなくていい。黙って座っていてくれればよい」
「妾は何もしていないよ。あの者の心を聴いていただけじゃ」
「そんなことをする必要はない。欲望を叶えてやるか、叶えられると期待を持たせてやるだけでよい。人はその期待によって、ますます我々に依存し、務めに励むのだ。それが出来ないならば、我らの邪魔をするな!」
語気荒く邪神さまに詰め寄る教祖さまを、ソウタははらはらしながら見ていた。
「ふむ。あいわかった。これよりは、言葉を選ぶとしよう」
怒り心頭の教祖に対して、咲は気にしたふうでもない。
「妾はそなたに生かされている身ゆえ、な。そなたの期待に沿うよう、務めようぞ」
その時の咲からは、先ほどのあふれる感情が嘘のように、何も感じられなかった。だがソウタには分かった。
(咲さま、悲しんでいらっしゃる……)
言葉も表情も、隠してはいる。だが咲の思いが、ソウタには感じられた気がした。人が幸せになって何が不満なのか、と。
その時、咲がちらりとソウタを見た。ソウタは咲の心の声を確かに聞いた。
(人の世はさながら、あやなきものよ※)
※この世はすべて、理不尽なものだ、との意
手に入れたものは最大限利用しなければならない。
よって、高い功徳を積んだもの――つまりは、多く上納金を納めた者――に、邪神さまから直に福音を賜る機会をもうけていた。
今日も信者がひとり、恩恵に浴する機会を得た。
邪神さまの御簾の前に進み出て平伏する。邪神さまは御簾の奥、姿を見ることはかなわない。そしてその言葉も、陛下の者――ソウタを通してしか聞くことはできない。
それでも信者は、かしこまって全身で敬意を表していた。
信者は灰田恵と名乗った。
「このたびは邪神さまにお目もじがかない、まことに光栄に存じます」
恵は平伏したまま、緊張した声を発した。それをソウタが小声で、咲――邪神さまに伝える。もちろん咲にも聞こえているのだが、そこは形式、お約束というものである。
「『そなたの功徳は聞き知っている。そなたの望みを申せ』と、邪神さまはおっしゃっております」
「ありがたき幸せに存じます」
さすがにソウタも、目上の大人に対してタメ口は使えなかった。だが大人たちは、それどころではなかったようだ。
「わたくしの望みは、金、でございます」
咲に取り次いだソウタに、困惑の表情がうかんだ。どうしようか、迷ったが、咲の返事をそのまま伝えることにした。
「金とはなんじゃ、と邪神さまが問うておられます」
「は?」
思わぬ問いに、恵は困った。今さらごく当たり前のことを聞かれても、とっさになんと説明したものか言葉に詰まってしまう。
「金とはその、そう、この世のすべてを買えるのです。望みのものはなんでも手に入り、願いをかなえることができます」
「咲さま? お分かりになりましたか?」
ソウタが小声で尋ねる。
「うむ。本で得た知識はあるのじゃが……妾は自分で使うたことがないゆえ、ありがたみがわからぬ。どのくらいあればよいのじゃ?」
「そうか、なるほど」
脇でやり取りを聞いていた教祖が口を挟んだ。
咲が暮らしていたのは平安の前期の頃。まだ貨幣経済も発展途上だ。さらに米ほか必要なものは租税や貢物として不自由なく手に入っただろうから、自分から何かを贖うという行為は必要ない。良家の子女がみずから「買い物をする」という光景は存在しないのだ。
そのような概説を教祖に聞かされ、その場にいた一同は――咲も含めて――おおいに納得したのだった。
邪神さまは正真正銘、やんごとなき姫君だったのである。
そうと知った恵は、ますます恐れ入ると同時に、自分の卑俗さが恥ずかしくなった。自分はなんとレベルの低い望みを抱えていたのだろうか、と。
内心恥じ入っている恵に、ソウタを通して咲が声をかける。
「そなたの望み、あいわかった。だが妾にはその価値がわからぬ。どの程度のものを望んでおるのか。そなたが思い描くかぎりの望みを述べてみよ」
言われて、恵は語り始めた。金が手に入るとどれほど嬉しいのか。どんなものが手に入るのか。どれほど満足できるのか。
「ううむ。そなたの思いが伝わらぬ。そなたの思いは、そんなものか? 嬉しいとは、それが手に入ったとは、どんな心持ちじゃ? そもそも、何を手に入れたいのじゃ? 金が手に入ればよいのか?」
「はい。それはもう、幸せにございます」
「そなたの幸せとは、どんな心持ちじゃ? 思いつくかぎりを妾に伝えてみよ」
恵は必死に説明しようとした。たくさんお金があればいい。お金がなくて汲々としなくてすむ。ほしいものは何でも手に入る。
では自分のほしいものとは? 自分は何がほしかった?
日々の稼ぎを得るために仕事に追われ、ほしいものを我慢してひもじい思いをして、そんな生活が嫌で嫌で、教団に多額のお布施を寄進し、望みがかなうよう願った。そうまでして実現したかった「望み」とはなんだったのか?
「私は……日々お金に困って、毎日の生活に追われているのが嫌だったのです。こんな生活から抜け出たいと思わない日はありませんでした」
いいものがほしい。たくさんのものがほしい。それは漠然とした象徴で、自分はただ日々の平穏がほしかっただけなのだと、彼女はだんだんわかってきた。
「うむ。おいらか(穏やか)なる日々を望むのじゃな。なれば、その心持ちを思い描いてみよ。そのあらん限りを言の葉にして、妾に申し伝えてみよ」
「はい……はい!」
恵は語った。心穏やかな日々。あくせくすることもなく、煩わしい出来事もなく、日々幸せを感じながら平凡に毎日を過ごしてゆく。
そうなったらどんなにか幸せだろうと思いながら、そうさせてくれない人間関係、経済事情、諸般の雑事。それらを思って、それに心囚われて鬱屈していた自分を思い出して、我知らず恵は涙を流していた。
「私はこれまで随分と他人に振り回されてきました。傷ついて疲れて、自分は不幸だとずっと思ってきました。こんな自分でいたくないと、もっとすごい自分に変わりたいと夢見ていました。
お金があれば、それが叶うんじゃないかと、ずっと信じてきました。でも、そうじゃないんですね。私がほしかったものは、そうじゃないんですね」
「そなたの心根、しかと妾にも伝わったよ。いたき(つらい)思いをしてまいったのじゃな」
咲の言葉は、恵を癒すように優しく包み込んだ。ねぎらいの言葉は彼女の心に沁みわたってゆき、彼女はこのうえない安らいだ感覚に、母の胸に抱かれているような、穏やかな気持ちになったのである。
「もう大丈夫。あやなきことに惑わずともよい。そなたの心根は誤ってはおらぬ。憂きことがあっても、それはかりそめのもの。そなたの魂を傷つけることはできぬ。おのが力を信ぜよ。そなたは充分にいたき事を経てまいった。それは必ず、そなたの力になろう」
「はい……はい」
「惑うた時はミヅチに頼るがよい。そなたらの師は必ずやそなたらを能く導くであろう」
「はい……ありがとうございます」
ぽろぽろと涙を流し続けながら、恵は平伏した。自分では立つことができず、同僚たちに両脇を支えられて退出する。
清々しくも感動的な空気に満たされて一同が退出する中、ひとり残って苦々しい顔をしていたのは、ミヅチである。
「見事なセラピストぶりですな」
ミヅチの言葉は皮肉成分たっぷりだった。
「だが、我らが邪神さまに期待しているのは、自分探しの答えではない。己が欲望を満たすこと。恨みつらみを晴らすこと。人はみな欲に囚われている。その望みを叶えたいと思うからこそ、我らに縋るのだ。
その期待に応えられぬならば、むしろ何もしなくていい。黙って座っていてくれればよい」
「妾は何もしていないよ。あの者の心を聴いていただけじゃ」
「そんなことをする必要はない。欲望を叶えてやるか、叶えられると期待を持たせてやるだけでよい。人はその期待によって、ますます我々に依存し、務めに励むのだ。それが出来ないならば、我らの邪魔をするな!」
語気荒く邪神さまに詰め寄る教祖さまを、ソウタははらはらしながら見ていた。
「ふむ。あいわかった。これよりは、言葉を選ぶとしよう」
怒り心頭の教祖に対して、咲は気にしたふうでもない。
「妾はそなたに生かされている身ゆえ、な。そなたの期待に沿うよう、務めようぞ」
その時の咲からは、先ほどのあふれる感情が嘘のように、何も感じられなかった。だがソウタには分かった。
(咲さま、悲しんでいらっしゃる……)
言葉も表情も、隠してはいる。だが咲の思いが、ソウタには感じられた気がした。人が幸せになって何が不満なのか、と。
その時、咲がちらりとソウタを見た。ソウタは咲の心の声を確かに聞いた。
(人の世はさながら、あやなきものよ※)
※この世はすべて、理不尽なものだ、との意
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる