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憧れの美少女と、物陰で異世界。
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(あれはなんだったんだろう)
昨日の不思議な体験。
今いる日本とは似ても似つかない日本。異形の世界。二人の美少女、ユーリとニーナ。そこに導いてくれたもの。
「三崎くん、何してるの。十円玉なんか眺めて」
ふいに声をかけられて、我に返る。
「菅野さん……」
同じクラスの菅野由里絵。ツーサイドアップにした栗色の髪を揺らして、志朗の手元をのぞき込む。
特段に親しいという間柄でもないから、志朗の仕草がよほどおかしかったのだろう。
だが志朗が普段、手元の十円玉の数十倍は見つめているのが、他ならぬこの菅野由里絵だった。
「いや。なんというか……ねえ、ちょっと一緒に帰らない?」
唐突な誘いに由里絵は一瞬戸惑ったようだったが、「いいよ」と鞄をとった。
クラスどころか学年でも有名な美少女をストレートに誘うとは、周りの耳目を集めかねない。
だが志朗はどうしても確認したかったのだ。昨日会った異世界の少女、ユーリとうり二つの彼女を。
「何か話でもあったの?」
由里絵が話しかけてきた。髪の色以外はユーリとそっくりだ。でも性格は全然違う。
異世界の少女は快活、というより豪放といった表現が似合う。
対して由里絵は、活発ではあるが、ユーリよりお淑やか。
どちらかと言えばこっちの方がいいかな、などと思いながら、志朗は由里絵に話題を振る。
「由里絵さ……じゃない、菅野さんは、異世界とか信じる?」
「なあに?変な質問」
由里絵はくすくすと笑い、志朗はばつの悪い思いを味わった。
いったい何を言っているんだおれは。
「たとえばね」
志朗は件の十円玉を取り出した。
「これが異世界への鍵だとして、これを使って異世界に行ってみたいと思う?」
「たった十円で異世界に行けるの?ずいぶん安い異世界ね」
笑いながら受け取った十円玉を、歩きながらしばらく眺めていた由里絵だったが、あることに気がつくと、いきなり志朗の手をつかんだ。
「三崎くん!これ、何?どこで手に入れたの?本当に……異世界に行けるの?」
眼の色が変わっている。志朗は面喰らった。
「行きたいの?異世界に?」
「行きたい!!絶対に行ってみたい!」
今にも噛みついてきそうな勢いだ。
「どうすれば行けるの?」
「いや、もう来てるんですけど」
「え?」
由里絵はあわてて辺りを見回した。
地形はいつもの場所だ。
虹色に光る道や変な形にねじ曲がった建物、原色の葉っぱの生垣などを見なかったことにすれば。
「……すごい」
呟いた由里絵は、ふいにもの凄い喚声を上げた。
「すごいすごい、すごーい!なにこの世界?何か出るの?魔法とか使えるの?」
びっくりしてのけぞった志朗の両手をとり、由里絵は大喜びでぴょんぴょんと跳ねた。きらきらした目で興味津々、志朗の解説を待っている。
美少女に至近距離に迫られて、志朗はどきどきした。同時にものすごくあせった。
自分はこの世界のことは何も知らない。
そんなことを言ったら、あからさまに失望されるのは目に見えている。
「ええと、いちおう日本らしいよ。別の時空の千葉県だって」
何とか答えてから、昨日の二人を思い出した。ユーリとニーナ。この世界の唯一の知り合い。彼らと合流しよう。
でもどうやって?
昨日の不思議な体験。
今いる日本とは似ても似つかない日本。異形の世界。二人の美少女、ユーリとニーナ。そこに導いてくれたもの。
「三崎くん、何してるの。十円玉なんか眺めて」
ふいに声をかけられて、我に返る。
「菅野さん……」
同じクラスの菅野由里絵。ツーサイドアップにした栗色の髪を揺らして、志朗の手元をのぞき込む。
特段に親しいという間柄でもないから、志朗の仕草がよほどおかしかったのだろう。
だが志朗が普段、手元の十円玉の数十倍は見つめているのが、他ならぬこの菅野由里絵だった。
「いや。なんというか……ねえ、ちょっと一緒に帰らない?」
唐突な誘いに由里絵は一瞬戸惑ったようだったが、「いいよ」と鞄をとった。
クラスどころか学年でも有名な美少女をストレートに誘うとは、周りの耳目を集めかねない。
だが志朗はどうしても確認したかったのだ。昨日会った異世界の少女、ユーリとうり二つの彼女を。
「何か話でもあったの?」
由里絵が話しかけてきた。髪の色以外はユーリとそっくりだ。でも性格は全然違う。
異世界の少女は快活、というより豪放といった表現が似合う。
対して由里絵は、活発ではあるが、ユーリよりお淑やか。
どちらかと言えばこっちの方がいいかな、などと思いながら、志朗は由里絵に話題を振る。
「由里絵さ……じゃない、菅野さんは、異世界とか信じる?」
「なあに?変な質問」
由里絵はくすくすと笑い、志朗はばつの悪い思いを味わった。
いったい何を言っているんだおれは。
「たとえばね」
志朗は件の十円玉を取り出した。
「これが異世界への鍵だとして、これを使って異世界に行ってみたいと思う?」
「たった十円で異世界に行けるの?ずいぶん安い異世界ね」
笑いながら受け取った十円玉を、歩きながらしばらく眺めていた由里絵だったが、あることに気がつくと、いきなり志朗の手をつかんだ。
「三崎くん!これ、何?どこで手に入れたの?本当に……異世界に行けるの?」
眼の色が変わっている。志朗は面喰らった。
「行きたいの?異世界に?」
「行きたい!!絶対に行ってみたい!」
今にも噛みついてきそうな勢いだ。
「どうすれば行けるの?」
「いや、もう来てるんですけど」
「え?」
由里絵はあわてて辺りを見回した。
地形はいつもの場所だ。
虹色に光る道や変な形にねじ曲がった建物、原色の葉っぱの生垣などを見なかったことにすれば。
「……すごい」
呟いた由里絵は、ふいにもの凄い喚声を上げた。
「すごいすごい、すごーい!なにこの世界?何か出るの?魔法とか使えるの?」
びっくりしてのけぞった志朗の両手をとり、由里絵は大喜びでぴょんぴょんと跳ねた。きらきらした目で興味津々、志朗の解説を待っている。
美少女に至近距離に迫られて、志朗はどきどきした。同時にものすごくあせった。
自分はこの世界のことは何も知らない。
そんなことを言ったら、あからさまに失望されるのは目に見えている。
「ええと、いちおう日本らしいよ。別の時空の千葉県だって」
何とか答えてから、昨日の二人を思い出した。ユーリとニーナ。この世界の唯一の知り合い。彼らと合流しよう。
でもどうやって?
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