あなたの人生、なまくらですか?

桐坂数也

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神のしもべを看護、で思案。

4.感謝

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医刀いとう。針。鋏。押さえて血を止め、汚れを拭う。

紅乃こうのとの間合いも、だんだんと息が合ってきた。なかなか飲み込みが早い。


最後に大きな布をあてがい、包帯を巻いた。

透きとおる肌を、無骨な白色の布が大きく隠している。痛々しい姿だ。

だがなんとか、命の危機は脱した。

「……終わった」

包帯の端を鋏で切って、俊哉は大きく息をついた。

「ありがとう。おかけで無事に乗り切れた。礼を申し上げる」

俊哉は一歩下がり、一同に向かって深々と頭を下げた。


本当に感謝しかなかった。


しのぎを救えたことの、安堵。

この手で救えたことの、充実感。

自分にもまだ、できることがあったのだという、希望。

晴れやかな気持ちだった。


「いや、いいものを見せてもらった。素晴らしい技量だったよ」

一同を代表した主がしきりに首を振りながら、賞讃の言葉を口にする。

「この村……いや、この国の医術ではないのだな? 我々の技とはちがうが、いろいろと理にかなっている」

「おそれいります」

俊哉は再び頭を下げた。

腕に覚えはあったものの、そうした技術云々より、純粋に人を全力で救うという、いわば医術の原点に触れた気がした。

その体験をさせてもらったこと、この場を快く貸してくれた一同に、力いっぱい手を握って一人ひとり礼を述べて回りたいくらいの心境だった。



「おつかれさまです」

外に出た俊哉に、紅乃が興奮気味に声をかけてくる。

「すごい、すごい手際でした。驚きました」

新しい技の数々を見せられて、いてもたってもいられない、という様子だ。

「ぼく、いや私も、こんな風に医刀が使えるようになりたいです!」

「なれるさ。一緒に頑張ろう」

「ほんとですか? すごい。すごいや!」

(素直な若者だな)

思わずほおが緩むのを感じた。素直で、まっすぐな若者だ。

きっと熱心に取り組むだろうし、結果もついてくるだろう。

この若者を医師として育ててみたい、という願望がわいてくる。

(どんなふうに化けるか、楽しみだな)



できること。やること。やらねばならないこと。

いろいろな発見があり、展望がある。もちろん、明るい題材ばかりではない。

だがどれも、対決しがいのある題材に思えた。


ひとつ見えるごとに、すべきことがみっつくらい湧いてくる。

(ぜいたくな悩みだ)


そして今の最優先は、しのぎだ。

彼女の容態を確かめに、俊哉は奥に向かった。



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