46 / 57
神のしもべを看護、で思案。
4.感謝
しおりを挟む
医刀。針。鋏。押さえて血を止め、汚れを拭う。
紅乃との間合いも、だんだんと息が合ってきた。なかなか飲み込みが早い。
最後に大きな布をあてがい、包帯を巻いた。
透きとおる肌を、無骨な白色の布が大きく隠している。痛々しい姿だ。
だがなんとか、命の危機は脱した。
「……終わった」
包帯の端を鋏で切って、俊哉は大きく息をついた。
「ありがとう。おかけで無事に乗り切れた。礼を申し上げる」
俊哉は一歩下がり、一同に向かって深々と頭を下げた。
本当に感謝しかなかった。
しのぎを救えたことの、安堵。
この手で救えたことの、充実感。
自分にもまだ、できることがあったのだという、希望。
晴れやかな気持ちだった。
「いや、いいものを見せてもらった。素晴らしい技量だったよ」
一同を代表した主がしきりに首を振りながら、賞讃の言葉を口にする。
「この村……いや、この国の医術ではないのだな? 我々の技とはちがうが、いろいろと理にかなっている」
「おそれいります」
俊哉は再び頭を下げた。
腕に覚えはあったものの、そうした技術云々より、純粋に人を全力で救うという、いわば医術の原点に触れた気がした。
その体験をさせてもらったこと、この場を快く貸してくれた一同に、力いっぱい手を握って一人ひとり礼を述べて回りたいくらいの心境だった。
「おつかれさまです」
外に出た俊哉に、紅乃が興奮気味に声をかけてくる。
「すごい、すごい手際でした。驚きました」
新しい技の数々を見せられて、いてもたってもいられない、という様子だ。
「ぼく、いや私も、こんな風に医刀が使えるようになりたいです!」
「なれるさ。一緒に頑張ろう」
「ほんとですか? すごい。すごいや!」
(素直な若者だな)
思わずほおが緩むのを感じた。素直で、まっすぐな若者だ。
きっと熱心に取り組むだろうし、結果もついてくるだろう。
この若者を医師として育ててみたい、という願望がわいてくる。
(どんなふうに化けるか、楽しみだな)
できること。やること。やらねばならないこと。
いろいろな発見があり、展望がある。もちろん、明るい題材ばかりではない。
だがどれも、対決しがいのある題材に思えた。
ひとつ見えるごとに、すべきことがみっつくらい湧いてくる。
(ぜいたくな悩みだ)
そして今の最優先は、しのぎだ。
彼女の容態を確かめに、俊哉は奥に向かった。
紅乃との間合いも、だんだんと息が合ってきた。なかなか飲み込みが早い。
最後に大きな布をあてがい、包帯を巻いた。
透きとおる肌を、無骨な白色の布が大きく隠している。痛々しい姿だ。
だがなんとか、命の危機は脱した。
「……終わった」
包帯の端を鋏で切って、俊哉は大きく息をついた。
「ありがとう。おかけで無事に乗り切れた。礼を申し上げる」
俊哉は一歩下がり、一同に向かって深々と頭を下げた。
本当に感謝しかなかった。
しのぎを救えたことの、安堵。
この手で救えたことの、充実感。
自分にもまだ、できることがあったのだという、希望。
晴れやかな気持ちだった。
「いや、いいものを見せてもらった。素晴らしい技量だったよ」
一同を代表した主がしきりに首を振りながら、賞讃の言葉を口にする。
「この村……いや、この国の医術ではないのだな? 我々の技とはちがうが、いろいろと理にかなっている」
「おそれいります」
俊哉は再び頭を下げた。
腕に覚えはあったものの、そうした技術云々より、純粋に人を全力で救うという、いわば医術の原点に触れた気がした。
その体験をさせてもらったこと、この場を快く貸してくれた一同に、力いっぱい手を握って一人ひとり礼を述べて回りたいくらいの心境だった。
「おつかれさまです」
外に出た俊哉に、紅乃が興奮気味に声をかけてくる。
「すごい、すごい手際でした。驚きました」
新しい技の数々を見せられて、いてもたってもいられない、という様子だ。
「ぼく、いや私も、こんな風に医刀が使えるようになりたいです!」
「なれるさ。一緒に頑張ろう」
「ほんとですか? すごい。すごいや!」
(素直な若者だな)
思わずほおが緩むのを感じた。素直で、まっすぐな若者だ。
きっと熱心に取り組むだろうし、結果もついてくるだろう。
この若者を医師として育ててみたい、という願望がわいてくる。
(どんなふうに化けるか、楽しみだな)
できること。やること。やらねばならないこと。
いろいろな発見があり、展望がある。もちろん、明るい題材ばかりではない。
だがどれも、対決しがいのある題材に思えた。
ひとつ見えるごとに、すべきことがみっつくらい湧いてくる。
(ぜいたくな悩みだ)
そして今の最優先は、しのぎだ。
彼女の容態を確かめに、俊哉は奥に向かった。
0
あなたにおすすめの小説
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる