あなたの人生、なまくらですか?

桐坂数也

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女槍つかいと決闘、で調略。

2.相思

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稜水には戦士の訓練と、部隊の編成を。

鍛冶火には武器の製造と、特産品となる工芸品の試作を。

市場の青果卸の親父には、情報網の整備と情報の集積を。

紅乃には近代医療の教育とその拡散を。

もうひとつ、稜水には綿花を中心とした複合産業の構想も伝えてあった。

さらに勘定方には為替や交易などの金融を。


それぞれのアイディアを伝え、実行計画を作ってもらい、領主に進言してもらう。

そして、資金を捻出してもらう。

とは言え、それほど豊かな村ではない。資金にも限りがある。

どこにどれだけ配分するか。それをどう使うか。

優先順位と効率が問われる。調整の手腕が必要だった。



俊哉はそのための裏方に徹した。

功績を挙げ賞讃されるのは、それぞれの者たちでいい。じっさい、それに相当する苦労をするだろうし、それに見合った成果を挙げるはずだった。



「ご自分の功をひとに譲ってしまわれるなんて。おくゆかしいのでしょうけど、わたくしは残念ですわ。
どれも素晴らしいものばかりなのに」

功を誇らない俊哉を見て、しのぎはたいそう残念そうだった。歯がゆく思っているのかもしれなかった。

いまやすっかり傷も癒え、俊哉から夜ごとさまざまな構想を聞かされ、あらゆる草案を組み立てる話し相手になっているのが、他ならぬしのぎだ。

だからしのぎは、どの事業の本質もよく理解していた。利点も問題点も、あるいは俊哉より把握していたかもしれない。

毎夜間近で顔を付き合わせながら、むつごとのひとつすらないこの二人は、傍目にはどんな関係に見えるのだろうか。


少なくとも俊哉は、平静ではなかった。


目の前にいるのは、美しい少女。

見目うるわしく、聡明で、俊哉の言わんとすることをほぼ正確に理解できる、高い能力を持つ少女。

要約や、建白書の草案をまとめるのもうまく、また仕事を離れてもよく気が利いて、細やかな心配りを併せ持った少女。


惹かれるなというのが無理な注文というものだ。


俊哉の言に微笑み、驚き、うなずいて熱心に書きつけるこの少女は、自分のことをどう思っているのだろう。



それはしのぎも、同じだった。

目の前にいる、異世界からの来訪者は自分が知らないたくさんの事を知っている。

自分が思いもつかない事を次々と思いつき、説明し説得し、どんどんまとめて人を動かす。

かと言って決して上から目線ではなく、こんな自分を尊重して意見を訊いてくれたりもする。

話を聞いているだけでも楽しいし、役に立てるのはもっと嬉しい。

こんなに理知的で懐の深いこの人の瞳の奥には、いったいどんな思いがあるのだろう。

自分をどんな風に思ってくれているのだろう。



そう思いながら、間近に顔を付き合わせた二人の夜は更けてゆく。



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