瀬野の短編集「恋愛」

瀬野凜花

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梅雨明けは涙とともに

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 7月7日。
 織姫と彦星はかわいそうだと思う。日本では梅雨が明けていない地域がほとんどだ。

 学校で短冊に願いを書けと言われ、「ふうやが死にませんように」と書こうとしてやめた。
 私の願いはきっと叶わない。

 いつもの場所に行くと、ふうやの姿が見当たらなかった。
 木の下に座ろうとすると、雨とともに声が降ってきた。

「こっちこっち。登っておいでよ」

 ふうやは枝に座って足をぶらぶらさせ、手を振っていた。

 私は傘を閉じて木の幹に立てかけ、一番低い枝を掴んだ。
 葉の隙間から落ちてくる雨粒のことなんて気にせず、滑らないよう慎重に登っていく。ふうやの一つ下の枝に向かい合って腰かけると、ふうやは嬉しそうに笑った。

「いよいよ明日だよ」

 ふうやは木の隙間から海を見た。

「やっと、役目が果たせる」

 涙が込み上げてくる。どうしてふうやが死ななきゃいけないの。

「……どうして」

 もう言わない方がいいと我慢していたのに、言葉が口を突いて溢れてしまった。

「嫌だよ。嫌なの。死んじゃ嫌」

 駄々っ子のように繰り返す。頬を伝う水滴は雨だから。泣いてなんかない。

「好きなの」

 勢いで口にした言葉に驚いた。
 告白するつもりはなかったのに。

 ふうやが愛おしいものを見る目で私を見つめる。雨に濡れ、顔を歪める今の私は不細工なはずなのに。

 ふうやが私の座っている枝に足をかけた。二人分の体重がかかって枝がみしりと軋む。
 肩に手を置かれる。
 ゆっくりとふうやの顔が近付いてきて、静かに目を閉じた。
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