【完結】コドクニアラズ ~淫らな『なんでも屋』~

ナツキ

文字の大きさ
23 / 102
4・依頼人⑥土野恵美

ケントさんに、土野家のお家騒動を語る

しおりを挟む
cafeリコで働いているバイトは、ほとんどが女の子だ。

ここではみんな名前で呼んでいて、俺も「あまねくん」と呼ばれている。

先日一ノ瀬が、あー、……涼くんが、名前で呼んでほしいと言ってきた。

実は俺は名前で呼ぶのがあまり得意ではなかったのだが、cafeリコに来てから呼べるようになった。 

土野恵美さんというフリーターがいる。27才の独身で、昼間はここで働いて、夜にホステスさんをしているそうだ。お金を貯めるためにがんばっていると聞いた。彼女が、俺が名前で呼ぶようになったきっかけであり、今回の依頼人だ。

依頼人⑥土野恵美

母が、子供4人のうち誰かから命を狙われているという。それを赤の他人の視点から見てほしい。との依頼。

なんだ、この金田一みたいな依頼は。俺が行ったら、次々に人が死んでいくんじゃないか?

と、ドキドキしながら週末、涼くんといっしょに土野家へお邪魔した。

「あまね、顔みたらわかるんじゃないの?」

「ばっちし『もや』視える」

「チートぉ」

涼くんとこそこそおしゃべりしながら、広い日本家屋を案内された。

「私の母親の、土野恵子です」

「こんにちは、今日は庭園の写真撮影にご協力いただき、ありがとうございます」
と挨拶をした。

恵子さんは青白い顔で俺たちを見つめていたが、どうも心ここにあらずの面もちだった。
「食中毒でね、回復したばかりなの」
と恵美さんが教えてくれた。


20畳はありそうな広い和室に案内され、テーブルで恵美さんが家系図を書いてくれた。
父が他界し、母・恵子の子供
1番上の長女が、好恵(コノエ)、
2番目が、香奈恵(カナエ)、
3番目が、三恵(ミエ)、
末っ子が恵美(エミ)さんだった。

「皆さん『恵』の文字が使われてるんですね」

「オレの家系もそういうのあるわー、うちは海に面した宿屋の息子で、みんな名前にサンズイついてるんす」

「え、そうなんだ」
俺も初耳だった。

「天音くんのとこは、お父さんの名前継がずにお母さんがつけちゃったんだよね?」
と、恵美さんは俺が涼くんに内緒にしていたことを、さらっと言ってしまった。

「あ、そうなの?」
涼くんは、さほど気にしてない素振りを見せた。
でも、もういいか、話してしまおう。

「親父が婿養子みたいで。当時、母の方が強かったみたいです。親父の名前継げば、壮一って名前になってたかも」

「へえー」

そこへ、ガラッと扉を開けて長女さんが入ってきた。

「あんたも、本当は虎太朗だったけど必死に止めてあげたんだからね」

と、これまた今度は長女さんが恵美さんの秘密を暴露してしまった。

女の人って、なんでこんなにおしゃべりなんだろう……。

「あ、そうなんすね~」
涼くんは驚くことなく、好恵さんに微笑んだ。

さすがだ、涼くん。

「お茶いだだきまーす。好恵さんはこの家にお住まいなんすか?」
恵美さんは恥ずかしそうに顔を赤らめたが、涼くんは話をそらせてくれたのでホッとしていた。

「そう、父が去年他界してからね、もう1年くらいかな」

「庭にいたのはお子さんですか?」

「そ。10才の蓮と、7才の結愛」

「オレの甥っ子はまだ3才なんすけど、けっこー戦いごっことか好きで。蓮くんぐらいだとどんな遊び好きなんですか?」

「けっこう本が好きな子でね、今は未確認生物とか最強生物とか、そんな本ばっかり読んでるよ。友達はゲームばっかだね。公園集まっても、みんなでスイッチしてる」

「わー、イマドキ~」

涼くんが楽しく会話をしてくれてるので、俺は恵美さんと『庭園の写真』を取りに行くことにした。



「こんにちは」
適当にカメラを構えながら、蓮くんと結愛ちゃんに声をかけた。

「こんにちはー。それカメラ?」

「そうだよ。ボタン押してみる?」

「やるやる~」

「あー。僕もやりたい」

「いいよ。交代で撮ろう」

広い庭を撮影と称して散策しながら、それとなく結愛ちゃんに家族のことを聞いてみた。

「結愛ちゃん、おばあちゃん具合悪いんだってね」

「この前まで寝てたよ~。おじいちゃんのときは、そのまま死んじゃった」

「おじいちゃんも死んじゃったんだ?」

「みんな、元気だったのにね~て言ってたからなんで死んだのかわかんなーい。ごはん食べたからかなぁ」

「ごはん?」

「みんなでごはん食べると死んじゃうのかなぁ」

「そうなの?  蓮くん、知ってる?」

「んー?  みんなで毎月ごはん食べる日あるけど、そのこと?  そういや、おじいちゃんもごはん食べる日だったっけ?」

「そうだよ、おばあちゃんもおじいちゃんも、ごはん食べる日だったよ。お母さんが味噌汁━━あ、これはしゃべったらダメって言われてたんだ」

2人とも食中毒?  ごはんに毒を混ぜたのだろうか……?














「━━━ていうことがあったんですよ」

俺は土野家に訪問後、cafeリコでバイトをし、夜になってケントさんのうちに来ていた。

風呂場に直行を命じられ、脱衣所にいるケントさんとおしゃべりしながら、今、湯船に浸からせてもらっている。

「依頼したのは土野恵美さん?  なのに、母が子供4人から狙われてるって言うのはどうしてだ?  恵美さんも子供なんだろう?」

「母親の恵子さんが、回復した頃に恵美さんにそうやって言ったみたいです。食事を作った4人のうちの誰かが毒を入れたんだって。恵美さんは自分じゃないから、困って俺に相談したんじゃないかな」

「まあーはしょって話してるんだろうけど、今の内容だと毒を入れたのは長女の好恵さんなんだろ」

「そう、そうなんです。さすがケントさんですねッ」
俺は話を聞いてくれたことが嬉しくて、テンション上げて喜んだ。

ケントさんはハアー、とため息をついた。

「なあー、お前、風呂長い。尻出せよ。中キレイにしてやるから」




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(2024.10.21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。 そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。 「一緒にコラボ配信、しない?」 顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。 これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。 ※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

処理中です...