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4・依頼人⑥土野恵美
ケントさんに、土野家のお家騒動を語る
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cafeリコで働いているバイトは、ほとんどが女の子だ。
ここではみんな名前で呼んでいて、俺も「あまねくん」と呼ばれている。
先日一ノ瀬が、あー、……涼くんが、名前で呼んでほしいと言ってきた。
実は俺は名前で呼ぶのがあまり得意ではなかったのだが、cafeリコに来てから呼べるようになった。
土野恵美さんというフリーターがいる。27才の独身で、昼間はここで働いて、夜にホステスさんをしているそうだ。お金を貯めるためにがんばっていると聞いた。彼女が、俺が名前で呼ぶようになったきっかけであり、今回の依頼人だ。
依頼人⑥土野恵美
母が、子供4人のうち誰かから命を狙われているという。それを赤の他人の視点から見てほしい。との依頼。
なんだ、この金田一みたいな依頼は。俺が行ったら、次々に人が死んでいくんじゃないか?
と、ドキドキしながら週末、涼くんといっしょに土野家へお邪魔した。
「あまね、顔みたらわかるんじゃないの?」
「ばっちし『もや』視える」
「チートぉ」
涼くんとこそこそおしゃべりしながら、広い日本家屋を案内された。
「私の母親の、土野恵子です」
「こんにちは、今日は庭園の写真撮影にご協力いただき、ありがとうございます」
と挨拶をした。
恵子さんは青白い顔で俺たちを見つめていたが、どうも心ここにあらずの面もちだった。
「食中毒でね、回復したばかりなの」
と恵美さんが教えてくれた。
20畳はありそうな広い和室に案内され、テーブルで恵美さんが家系図を書いてくれた。
父が他界し、母・恵子の子供
1番上の長女が、好恵(コノエ)、
2番目が、香奈恵(カナエ)、
3番目が、三恵(ミエ)、
末っ子が恵美(エミ)さんだった。
「皆さん『恵』の文字が使われてるんですね」
「オレの家系もそういうのあるわー、うちは海に面した宿屋の息子で、みんな名前にサンズイついてるんす」
「え、そうなんだ」
俺も初耳だった。
「天音くんのとこは、お父さんの名前継がずにお母さんがつけちゃったんだよね?」
と、恵美さんは俺が涼くんに内緒にしていたことを、さらっと言ってしまった。
「あ、そうなの?」
涼くんは、さほど気にしてない素振りを見せた。
でも、もういいか、話してしまおう。
「親父が婿養子みたいで。当時、母の方が強かったみたいです。親父の名前継げば、壮一って名前になってたかも」
「へえー」
そこへ、ガラッと扉を開けて長女さんが入ってきた。
「あんたも、本当は虎太朗だったけど必死に止めてあげたんだからね」
と、これまた今度は長女さんが恵美さんの秘密を暴露してしまった。
女の人って、なんでこんなにおしゃべりなんだろう……。
「あ、そうなんすね~」
涼くんは驚くことなく、好恵さんに微笑んだ。
さすがだ、涼くん。
「お茶いだだきまーす。好恵さんはこの家にお住まいなんすか?」
恵美さんは恥ずかしそうに顔を赤らめたが、涼くんは話をそらせてくれたのでホッとしていた。
「そう、父が去年他界してからね、もう1年くらいかな」
「庭にいたのはお子さんですか?」
「そ。10才の蓮と、7才の結愛」
「オレの甥っ子はまだ3才なんすけど、けっこー戦いごっことか好きで。蓮くんぐらいだとどんな遊び好きなんですか?」
「けっこう本が好きな子でね、今は未確認生物とか最強生物とか、そんな本ばっかり読んでるよ。友達はゲームばっかだね。公園集まっても、みんなでスイッチしてる」
「わー、イマドキ~」
涼くんが楽しく会話をしてくれてるので、俺は恵美さんと『庭園の写真』を取りに行くことにした。
「こんにちは」
適当にカメラを構えながら、蓮くんと結愛ちゃんに声をかけた。
「こんにちはー。それカメラ?」
「そうだよ。ボタン押してみる?」
「やるやる~」
「あー。僕もやりたい」
「いいよ。交代で撮ろう」
広い庭を撮影と称して散策しながら、それとなく結愛ちゃんに家族のことを聞いてみた。
「結愛ちゃん、おばあちゃん具合悪いんだってね」
「この前まで寝てたよ~。おじいちゃんのときは、そのまま死んじゃった」
「おじいちゃんも死んじゃったんだ?」
「みんな、元気だったのにね~て言ってたからなんで死んだのかわかんなーい。ごはん食べたからかなぁ」
「ごはん?」
「みんなでごはん食べると死んじゃうのかなぁ」
「そうなの? 蓮くん、知ってる?」
「んー? みんなで毎月ごはん食べる日あるけど、そのこと? そういや、おじいちゃんもごはん食べる日だったっけ?」
「そうだよ、おばあちゃんもおじいちゃんも、ごはん食べる日だったよ。お母さんが味噌汁━━あ、これはしゃべったらダメって言われてたんだ」
2人とも食中毒? ごはんに毒を混ぜたのだろうか……?
「━━━ていうことがあったんですよ」
俺は土野家に訪問後、cafeリコでバイトをし、夜になってケントさんのうちに来ていた。
風呂場に直行を命じられ、脱衣所にいるケントさんとおしゃべりしながら、今、湯船に浸からせてもらっている。
「依頼したのは土野恵美さん? なのに、母が子供4人から狙われてるって言うのはどうしてだ? 恵美さんも子供なんだろう?」
「母親の恵子さんが、回復した頃に恵美さんにそうやって言ったみたいです。食事を作った4人のうちの誰かが毒を入れたんだって。恵美さんは自分じゃないから、困って俺に相談したんじゃないかな」
「まあーはしょって話してるんだろうけど、今の内容だと毒を入れたのは長女の好恵さんなんだろ」
「そう、そうなんです。さすがケントさんですねッ」
俺は話を聞いてくれたことが嬉しくて、テンション上げて喜んだ。
ケントさんはハアー、とため息をついた。
「なあー、お前、風呂長い。尻出せよ。中キレイにしてやるから」
ここではみんな名前で呼んでいて、俺も「あまねくん」と呼ばれている。
先日一ノ瀬が、あー、……涼くんが、名前で呼んでほしいと言ってきた。
実は俺は名前で呼ぶのがあまり得意ではなかったのだが、cafeリコに来てから呼べるようになった。
土野恵美さんというフリーターがいる。27才の独身で、昼間はここで働いて、夜にホステスさんをしているそうだ。お金を貯めるためにがんばっていると聞いた。彼女が、俺が名前で呼ぶようになったきっかけであり、今回の依頼人だ。
依頼人⑥土野恵美
母が、子供4人のうち誰かから命を狙われているという。それを赤の他人の視点から見てほしい。との依頼。
なんだ、この金田一みたいな依頼は。俺が行ったら、次々に人が死んでいくんじゃないか?
と、ドキドキしながら週末、涼くんといっしょに土野家へお邪魔した。
「あまね、顔みたらわかるんじゃないの?」
「ばっちし『もや』視える」
「チートぉ」
涼くんとこそこそおしゃべりしながら、広い日本家屋を案内された。
「私の母親の、土野恵子です」
「こんにちは、今日は庭園の写真撮影にご協力いただき、ありがとうございます」
と挨拶をした。
恵子さんは青白い顔で俺たちを見つめていたが、どうも心ここにあらずの面もちだった。
「食中毒でね、回復したばかりなの」
と恵美さんが教えてくれた。
20畳はありそうな広い和室に案内され、テーブルで恵美さんが家系図を書いてくれた。
父が他界し、母・恵子の子供
1番上の長女が、好恵(コノエ)、
2番目が、香奈恵(カナエ)、
3番目が、三恵(ミエ)、
末っ子が恵美(エミ)さんだった。
「皆さん『恵』の文字が使われてるんですね」
「オレの家系もそういうのあるわー、うちは海に面した宿屋の息子で、みんな名前にサンズイついてるんす」
「え、そうなんだ」
俺も初耳だった。
「天音くんのとこは、お父さんの名前継がずにお母さんがつけちゃったんだよね?」
と、恵美さんは俺が涼くんに内緒にしていたことを、さらっと言ってしまった。
「あ、そうなの?」
涼くんは、さほど気にしてない素振りを見せた。
でも、もういいか、話してしまおう。
「親父が婿養子みたいで。当時、母の方が強かったみたいです。親父の名前継げば、壮一って名前になってたかも」
「へえー」
そこへ、ガラッと扉を開けて長女さんが入ってきた。
「あんたも、本当は虎太朗だったけど必死に止めてあげたんだからね」
と、これまた今度は長女さんが恵美さんの秘密を暴露してしまった。
女の人って、なんでこんなにおしゃべりなんだろう……。
「あ、そうなんすね~」
涼くんは驚くことなく、好恵さんに微笑んだ。
さすがだ、涼くん。
「お茶いだだきまーす。好恵さんはこの家にお住まいなんすか?」
恵美さんは恥ずかしそうに顔を赤らめたが、涼くんは話をそらせてくれたのでホッとしていた。
「そう、父が去年他界してからね、もう1年くらいかな」
「庭にいたのはお子さんですか?」
「そ。10才の蓮と、7才の結愛」
「オレの甥っ子はまだ3才なんすけど、けっこー戦いごっことか好きで。蓮くんぐらいだとどんな遊び好きなんですか?」
「けっこう本が好きな子でね、今は未確認生物とか最強生物とか、そんな本ばっかり読んでるよ。友達はゲームばっかだね。公園集まっても、みんなでスイッチしてる」
「わー、イマドキ~」
涼くんが楽しく会話をしてくれてるので、俺は恵美さんと『庭園の写真』を取りに行くことにした。
「こんにちは」
適当にカメラを構えながら、蓮くんと結愛ちゃんに声をかけた。
「こんにちはー。それカメラ?」
「そうだよ。ボタン押してみる?」
「やるやる~」
「あー。僕もやりたい」
「いいよ。交代で撮ろう」
広い庭を撮影と称して散策しながら、それとなく結愛ちゃんに家族のことを聞いてみた。
「結愛ちゃん、おばあちゃん具合悪いんだってね」
「この前まで寝てたよ~。おじいちゃんのときは、そのまま死んじゃった」
「おじいちゃんも死んじゃったんだ?」
「みんな、元気だったのにね~て言ってたからなんで死んだのかわかんなーい。ごはん食べたからかなぁ」
「ごはん?」
「みんなでごはん食べると死んじゃうのかなぁ」
「そうなの? 蓮くん、知ってる?」
「んー? みんなで毎月ごはん食べる日あるけど、そのこと? そういや、おじいちゃんもごはん食べる日だったっけ?」
「そうだよ、おばあちゃんもおじいちゃんも、ごはん食べる日だったよ。お母さんが味噌汁━━あ、これはしゃべったらダメって言われてたんだ」
2人とも食中毒? ごはんに毒を混ぜたのだろうか……?
「━━━ていうことがあったんですよ」
俺は土野家に訪問後、cafeリコでバイトをし、夜になってケントさんのうちに来ていた。
風呂場に直行を命じられ、脱衣所にいるケントさんとおしゃべりしながら、今、湯船に浸からせてもらっている。
「依頼したのは土野恵美さん? なのに、母が子供4人から狙われてるって言うのはどうしてだ? 恵美さんも子供なんだろう?」
「母親の恵子さんが、回復した頃に恵美さんにそうやって言ったみたいです。食事を作った4人のうちの誰かが毒を入れたんだって。恵美さんは自分じゃないから、困って俺に相談したんじゃないかな」
「まあーはしょって話してるんだろうけど、今の内容だと毒を入れたのは長女の好恵さんなんだろ」
「そう、そうなんです。さすがケントさんですねッ」
俺は話を聞いてくれたことが嬉しくて、テンション上げて喜んだ。
ケントさんはハアー、とため息をついた。
「なあー、お前、風呂長い。尻出せよ。中キレイにしてやるから」
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