【完結】コドクニアラズ ~淫らな『なんでも屋』~

ナツキ

文字の大きさ
62 / 102
7・依頼人⑦向井絢斗

コドクニアラズ

しおりを挟む
「お前、本当にあまねのとこ心配してるんだな」
とケントさんはあきれながら、寝転ぶ涼くんを起こした。

「お前を殴って悪かったよ」

「大丈夫ですよ~、あまねの、喘ぎ声聞けたし」

涼くん、一言多い。俺は脱がされた下着とスウェットを履いて、遅れて涼くんに近寄る。

「あとでもっとかわいい声聞かせてやろうか?  メスイキ覚えて、何度も何度もおねだりしてイき……」

「ケ、ケントさんっ、やめてよっ!!」
慌てて俺はケントさんの言葉を遮る。

「涼に聞かれて、めちゃくちゃ勃起してたじゃないか。あまねは人前の方が感じるんじゃないか?  侑李の時もだったよな」

「ケーンートさーん!!」
俺は怒りと羞恥で顔を赤らめながら、ケントさんに拳をお見舞いした。ポスッとダメージのない音がなり、ケントさんはクク、とのどで笑った。

「涼、夕食まで食べていけよ。帰り送ってやる」

「え、いいんですか?」

「話終わってないだろ。夕食の材料買ってくるから、それまで話しとけ」

おおっと?  いきなりの譲歩?
涼くんの人柄がわかってくれたのかな。

「ただし、あまねのスマホ通話状態にしとけ」

や、やっぱりね……。




ケントさんはよく食べる涼くんのために、夕食の買い出しに行った。

俺は通話状態のスマホのそばで、涼くんと話の続きをすることにした。

「んじゃ、『もや』の発現条件について、聞こうかな」

「うん」

土野恵美さんからの返事で、姉の牧村好恵さんがNo.13のブースを利用していたことがわかった。ケントさんからも、結城直哉さんがNo.13のブースを使ったという返事がきていた。
よって、このパソコンがなんらかの関係をしているということを、涼くんに説明した。

「じゃあ、今のところ強い殺意とか負の感情を持った人間が、No.13のブースのパソコンを使うと『もや』が発現する、ということだな。夏休みにあまり『もや』を見かけなかったのはパソコンの破損のせいだと」

「そうだね。他の条件もあるかもしれないけど」

「てか、防犯カメラの死角があるってなんだそりゃ。それ、壊した犯人は知ってたのかな」

「どうだろ」

「あやし~。なんでそんな配置にしたんだろ」
そうなのだ。cafeリコには不審な点がいくつもある。スタッフさんがいい人ばかりだから、疑いたくはなかった。だがおそらく、わざと映らないように防犯カメラを設置したのだ。1階に下りる階段にもカメラはついてないので、No.13を使った人は、ほとんど防犯カメラに映らない。透明人間になれるのだ。

「本社からの替えのパソコンが遅かったのは、なんか細工してたからかな」

「たぶん」

「本社ってことは、cafeリコってチェーン店だったの?」

「うん、直営店じゃなくて、フランチャイズ?かな。地域によって、名前違うはず」

「じゃあ、他の地域でも『もや』が発現してる……?  この会社が、『もや』をばらまいてる?」

「だよね~、そうなるよね……」
やっぱりこれは大きな問題なのか。俺は頭を抱えた。


「ここで、じじいの話になるんだけど」
俺は、この話をするのは気が重かった。

「出た、じじい。あまねがそんな風に言うなんて、珍しい」

「いや……ほんとクソじじいと言いたい」

「うわー!  なに?  どうした?」

「はあ。実はね、cafeリコって今年の4月から6月は改装工事してて、スタッフの人数があぶれてたんだ。それで、少し他のバイトをかけ持ちしてたんだけど」

「え、そうだったんだ?」

「寮母さんにバレるのも面倒だから、誰にも言ってなかった」

「届け、出さなきゃいけないもんなあ」

「そう、それ。……でまあ、それで、じじいに出会ってしまったんだけど」

「え、身体売ったの?」

「ちげーわ」

「だよね」

「もー詳しくは、今ははしょるけど、かくかくしかじかで、このじじいになんかカプセルを飲まされた」

「こっわー!」

「あとじじいに手の甲を舐められた」

「キモッ!!」

「そんで、じじい殴って逃げた」

「あ、あまねにしてはがんばったね?」

「じじいが、カプセルを『抗体』だと言ったんだ」

「ははあ、なるほど……」

「それが、このパソコンからのなにかを防いだのかなと思ってる」

「そっか。まあ、あまねに負の感情がなかったかもしれないしな?  それで『もや』が視えるようになったの?」

「たぶんね。あと……」

「うん」

「あと、これは涼くんにほんとーに謝らなきゃいけないことなんだけど、許してくれる?」

「え、それはわからないな」

「許してよ」

「まず話しなよ」

「やっぱやめる」
正直、言いたくない話なんだ。

「ここまで言ってるんだから話せよぉッ」

「怒んないでっ」
やっぱり言いたくない。

「怒んないから話せぇ~ッ」

涼くんは俺に襲いかかり、コチョコチョとくすぐり始めた。

「ぎゃっははっははっやめて、涼く、んっはは」

「言う気になった?」
涼くんはラグに転げた俺をニヤニヤしながら問う。

「はぁっ言います、すみません」

「よし」

涼くんは転げた俺を起こし、髪を撫でた。

「怒らないから」

「うん」

俺は、一度深呼吸した。

「……あのさ、コドクニアラズ、ていうプロジェクト名なんだけど」

「ん?  うん」

「実はね、アラズ先生の口ぐせからつけたわけじゃない」

「え、お前たちは1人にあらず、からじゃないの?」

「じゃ、ない」

「じゃあ、なにから?」

「じじいから」

「なんだよー、そのじじい!!  めっちゃ気になる。詳しく話してよ」

「いや詳しくって言ったって、俺もその時1回しか会ってないからなあ。まあとりあえずごめんね?」

「まじかー。オレ、アラズ先生好きなんだけどなあ」

「ちょうどアラズ先生の口ぐせがあったから、カモフラージュしてた」

「じゃあ、なんなわけ?」

「お前たちはコドクだ、からきてる」

「お前たちは孤独だ?  逆の意味?」

「涼くん、スマホでコドクって打ってみて」

「コドクね、待って」

涼くんは、テーブルに置いたスマホをポチポチと押し、検索画面でコドクと押した。

「え? 孤独じゃなくて、こっち?」

「そう、蠱毒」

「お前たちは蠱毒だ、を否定したくて、『コドクニアラズ』と名付けたんだ」


蠱毒、コドク。

古代中国において、呪術として使われた毒物である。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(2024.10.21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。 そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。 「一緒にコラボ配信、しない?」 顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。 これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。 ※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

処理中です...