悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

本編

18

とっさの出来事に私も殿下も、そして周囲の生徒たちも…皆が一瞬フリーズした
そんな中、水色を纏った小さな人影が視界をよぎる

「やっと会えた！
アリス、入学してからずっとアルベルトとお話ししてみたかったの！」

そう言いながら殿下の腕に抱きつく水色の髪の少女

殿下を呼び捨てにした上に敬語も使わず、公爵令嬢であり婚約者である私を無視して、目の前で腕に絡み付くとは…なかなか強烈である
殿下の様子を伺うと、彼も驚いているのだろう
得たいの知れないものを見るように大きく目を見開いて彼女を凝視していた

固まってるわ…
おかわいそうに…
まぁ、当たり前よね
他人に呼び捨てにされたことも、こんな口の聞き方されたことも、いきなり絡み付かれることも、ほぼないでしょうし…

「…なんですの？あの方」
「アルベルト様を呼び捨て…？」
「あんなにベタベタと…はしたない」

殿下に同情していると、周囲のヒソヒソとした声が耳に届く

あ…そうだったわ
あまりの衝撃で遅れてしまったけれど、これは注意しなくては…
見過ごしては周囲に示しがつかないもの
出会いイベントを邪魔する気はなかったけれど、これではそうも言ってられないわ

動揺を押し隠し、すっと厳しい表情を顔にはりつけて口を開いた

「貴女、何をしているの？」

声をかけると殿下に向けていたキラキラとした笑顔はどこへやら
ものすごく嫌そうな顔を向けられる

「何？アリスは今、アルベルトと話してるんだけど？」
「…殿下を敬称もつけずに呼ぶのはお止めなさい
それに少し離れなさいな。未婚の女性が殿方に抱きつくなど…はしたないわよ」
「うっさいわね…アリスはいいの。特別なんだもの
ね？アルベルト、そうでしょ？」

そう言ってさらに殿下にすりより、上目遣いに彼を見上げる
私が重ねて注意しようと再び口を開きかけたところで、固まっていた殿下が我にかえったらしく抱きつかれていた自身の腕を引き抜いて少女から距離をとった

「君は…？」

殿下が尋ねると彼女は満面の笑みを浮かべる

「アリスよ。アリス・ホワード！
とりあえずお友だちになりましょう！」

笑顔のまま殿下に向かって手を差し出す少女に頭が痛くなる

…これがヒロイン？
流石に酷すぎない？
え…？ゲームのヒロインってこんなに滅茶苦茶だったかしら…