紫の桜

れぐまき

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三分咲き

16.5

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紫の上から文が届いた

必要以上に長いそれに愛おしさを感じながら目を通す

無事を喜ぶ内容をから始まり
私の女房達も彼女の元で私の帰りを待つという事
頭の君がさっそく夕霧を連れて見舞いに来たこと
そして―・・・


「なっ!」


そこに書かれていた言葉に思わず声をあげた
惟光たちが不思議そうに見てくるがそれを気にしている余裕はない

先ほどの文面をもう一度読み返す

遠まわしに書かれてはいるが、これは…


「子が、出来たと・・・?」


そういえばここ数日間の彼女は何処か様子がおかしかった気がする

顔色も優れなかったし、食べ物に近寄る事をそれとなく拒否していた
好んでいた香を焚き染める所も見ていない
思い返せば他にもいろいろ兆しがあった


なのに何故気づかなかった?


あれほど彼女の事を考えていたにもかかわらず、何故こんな大切なことに気づかなかったのだ

自己嫌悪と共にすぐに私に知らせることをしなかった彼女にも怒りがこみ上げてくる


何故すぐに知らせてくれなかったのだ
知らせてくれれば・・・


そこまで考えてはっとした


・・・何が出来たというのだろうか

彼女を愛している事にすら気が付かず帝の寵妃である朧月夜と関係を持ち、それを咎められ
春宮や藤壺の宮に危害が及ぶことを恐れて肝心な愛する人を置いてここに来た私に、一体何が出来たというのだろうか・・・・・・


思い浮かぶのは出発直前に見た彼女

気高く美しい、凛とした姿で笑みを浮かべるその姿

あの笑みの裏に、どれほどの感情が隠されていたのか



「紫の上・・・」



呟いた愛しい人の名は、冷たい空気と波の音に溶けていった
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