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第1章 邪龍との邂逅
1―2 エルフェリオンのお仕事①
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振り向いたエルフェリオンの視界が黒髪と銀色の瞳を持つ男を捉える。年齢は30代後半といったところだろうか。頭には包帯を巻いている。
「俺に何か用か、バキザ?」
エルフェリオンは顔見知りの男に返す。だが、頭部の包帯に関しては触れない。スラム街で暮らす住人にとって怪我などは日常茶飯事であり、命を落とさず動けるだけ幸運だったとも言える。
コクリと頷いたバキザが用件を告げる。
「ああ。また仕事を依頼したいんだ」
言って、財布から紙幣を取り出して差し出すバキザ。
「2万コルバ、か。ターゲットは?」
受け取ったエルフェリオンが依頼の詳細を訊く。
「オージムっていうやつだ。最近、清掃活動だとか称して何人かの取り巻きと一緒にスラムの連中を叩きのめしている野郎さ。……かくいうオレもやられちまってこのザマってわけだ」
バキザは自分の頭を指差す。
「つまりは仇討ちってわけか。まっ、いいさ。貰えるものさえ貰えれば相手がだれだろうがぶちのめしてやるよ」
「へへへ……エルフェリオンがやってくれるなら安心だ。これはやつらが狩り場と呼んでいる場所と連中の似顔絵だ」
エルフェリオンは、バキザが差し出した封筒を受け取って中身を確認する。
「了解だ。引き受けたからにはきっちり仇は取ってやるよ」
「ああ、よろしく頼んだぜ……って、どこへ行くんだ?」
立ち去るエルフェリオンにバキザが疑問を投げかける。
「ターゲットが動くのは日が落ちてからだろ? だったら、それまではゆっくりさせてもらうさ」
「そうか。あんたのことを疑うわけじゃねぇが、オージムのやつをボコったあとは目隠しをした状態で引き渡しちゃくれねぇか? 自分でも落とし前をつけねぇと気が収まらないんだ」
バキザからの要望にエルフェリオンは無言で片手を挙げて立ち去った。
◎★☆◎
寂れた公園の一角にあるベンチ。ボロボロのマントをまとったエルフェリオンがひとりで座っている。素顔をさらして警戒されることを考慮してフードを目深にかぶっていた。
(ここがターゲットが狩り場と呼んでいる公園だよな。さて、どうやっておびき寄せたものか……)
エルフェリオンは思考を巡らせる。このままベンチで待ち続けても現れるかどうかは疑わしいと考えたエルフェリオンは移動することを選択する。あらかじめ拾っておいた木の棒を杖代わりにして、足を痛めているかのような歩き方で人気のないほうへと向かう。
ただでさえ訪れる者が少ない公園だ。夜更けともなれば人影など滅多に見かけない。悪事を働く者にとっては格好の場所と時間帯である。
(ようやくお出ましか。俺の演技力も捨てたものじゃないな)
前方に三人、後方に二人の男が現れ、悪意を宿した眼で、ボロマントをまとったエルフェリオンを見る。それに対して、エルフェリオンは狙いどおりに事が運んだことに笑んだ。
「俺に何か用か、バキザ?」
エルフェリオンは顔見知りの男に返す。だが、頭部の包帯に関しては触れない。スラム街で暮らす住人にとって怪我などは日常茶飯事であり、命を落とさず動けるだけ幸運だったとも言える。
コクリと頷いたバキザが用件を告げる。
「ああ。また仕事を依頼したいんだ」
言って、財布から紙幣を取り出して差し出すバキザ。
「2万コルバ、か。ターゲットは?」
受け取ったエルフェリオンが依頼の詳細を訊く。
「オージムっていうやつだ。最近、清掃活動だとか称して何人かの取り巻きと一緒にスラムの連中を叩きのめしている野郎さ。……かくいうオレもやられちまってこのザマってわけだ」
バキザは自分の頭を指差す。
「つまりは仇討ちってわけか。まっ、いいさ。貰えるものさえ貰えれば相手がだれだろうがぶちのめしてやるよ」
「へへへ……エルフェリオンがやってくれるなら安心だ。これはやつらが狩り場と呼んでいる場所と連中の似顔絵だ」
エルフェリオンは、バキザが差し出した封筒を受け取って中身を確認する。
「了解だ。引き受けたからにはきっちり仇は取ってやるよ」
「ああ、よろしく頼んだぜ……って、どこへ行くんだ?」
立ち去るエルフェリオンにバキザが疑問を投げかける。
「ターゲットが動くのは日が落ちてからだろ? だったら、それまではゆっくりさせてもらうさ」
「そうか。あんたのことを疑うわけじゃねぇが、オージムのやつをボコったあとは目隠しをした状態で引き渡しちゃくれねぇか? 自分でも落とし前をつけねぇと気が収まらないんだ」
バキザからの要望にエルフェリオンは無言で片手を挙げて立ち去った。
◎★☆◎
寂れた公園の一角にあるベンチ。ボロボロのマントをまとったエルフェリオンがひとりで座っている。素顔をさらして警戒されることを考慮してフードを目深にかぶっていた。
(ここがターゲットが狩り場と呼んでいる公園だよな。さて、どうやっておびき寄せたものか……)
エルフェリオンは思考を巡らせる。このままベンチで待ち続けても現れるかどうかは疑わしいと考えたエルフェリオンは移動することを選択する。あらかじめ拾っておいた木の棒を杖代わりにして、足を痛めているかのような歩き方で人気のないほうへと向かう。
ただでさえ訪れる者が少ない公園だ。夜更けともなれば人影など滅多に見かけない。悪事を働く者にとっては格好の場所と時間帯である。
(ようやくお出ましか。俺の演技力も捨てたものじゃないな)
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