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第1章 邪龍との邂逅
1ー4 冒険への誘い
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エルフェリオンは不審人物を見るような眼で二人の男たちを見据える。
「すまない。突然来てしまって驚かせてしまったようだね。僕の名前はギゼム。冒険パーティの華麗なる英雄のリーダーをしているんだ。で、こっちが相棒の……」
金髪の青年はそこまで言うと、隣の眼帯の男を見る。
「ルドアだ」
金髪の青年ギゼムに促されるかたちで簡潔に返す眼帯の男ルドア。
「それで、俺を待ってた理由はなんだ?」
エルフェリオンに訪問の意図を訊かれたギゼムはニコリと笑う。
「実はね、僕たち華麗なる英雄は新たに仲間になってくれる人を探している。だけど、だれでといいというわけではない。知ってると思うけど、冒険者は危険な職業だ。それなりの実力と素質を持つ者でなければならない」
「……それで、俺に白羽の矢が立ったわけか?」
ギゼムが言わんとすることを予測してエルフェリオンが言う。それに対して金髪の青年ギゼムは首肯した。
「話が早くて助かるよ。街でエルフェリオン君の話を聞いてね。君なら僕たちと一緒に冒険できるんじゃないかと思ったわけさ。そして、それは君を一目見て確信になった。僕の直感が君には冒険者としての素質が充分にあると告げている。どうだろう?」
期待が込められた視線を向けられ、エルフェリオンは黙考する。
「冒険者、か。悪くない話ではあるが……」
「なにか問題があるのかい?」
思案するエルフェリオンにギゼムが訊く。
「俺はあんたらをよく知らないんでな。信用できるのかどうかだ」
エルフェリオンの言葉にギゼムは首を縦に動かす。
「たしかにエルフェリオン君の意見はもっともだね。だったら、こうしよう。仲間は二人ほしいんだ。ひとりはエルフェリオン君として、あとのひとりは君自身が決めてくれないか? 君が信用できると思う相手なら僕たちも信用しよう」
ギゼムからの提案にエルフェリオンは眉を顰める。
「初対面の俺のことをどうしてそこまで信用する?」
疑問を口にするエルフェリオンにギゼムは「ふふふ……」と笑う。
「簡単なことさ。人の信用を得たいなら、まずは自分が相手を信用しないとね」
ギゼムは当然だと言わんばかりに答える。しかし、それでもエルフェリオンは迷いを捨てきれない。
「おい、ギゼムがここまで言ってるんだぜ? なにが気にくわねぇってんだよ!?」
エルフェリオンの態度にルドアが声を荒げる。が、ギゼムはそれを制した。
「待たないか、ルドア。彼の身になって考えてみればしかたのないことだよ。初対面の者にいきなり仲間に誘われて二つ返事でオーケーとはいかないだろう。それに、さっきも言ったように冒険者は命懸けの仕事だから尚更だ。本当ならもっと時間をかけてじっくりと考えてもらいたいところなんだけど、僕たちにも事情があってそうもいかないんだ……」
「事情?」
エルフェリオンが復唱して問うとギゼムは頷く。
「この街の近くに迷宮が存在することは知ってるかい?」
「ああ、邪龍の迷宮って呼ばれてる所だな。しかし、あそこにはもう大した財宝は眠ってないらしいじゃないか?」
「そのとおり。一般的には冒険者たちが既に狩り尽くしたと言われているね。だけどね、僕たちはある情報を手に入れたんだ」
ギゼムがニヤリと口角を上げた。
「ある情報?」
聞き返すエルフェリオンにギゼムは声を小さくして答える。
「邪龍の迷宮には未踏エリアがあるという情報だ。僕とルドアはそれを確かめるために邪龍の迷宮を調査し、その裏付けもとっているからデマなんかじゃない。あとはライバルに先を越されないように早く財宝を手に入れるだけさ」
「……なら、どうして自分たちだけで未踏エリアに潜らない? 仲間を増やせば分け前が減るだろ」
エルフェリオンはギゼムの真意を確かめるように見つめる。
「鋭いね。正直に白状すれば、僕たちだけではリスクが高いようだったからさ。あと、そろそろ仲間を増やそうかとルドアと相談し合っていた頃合いだったというのもあるかな」
ギゼムはエルフェリオンを見つめ返して回答する。
「……いいだろう。あんたらの仲間になってやる。その代わりに分け前はきっちりもらうぜ」
「ありがとう! もちろん分け前のほうは均等に分けると約束するよ。となれば、あとひとりなんだけど、そこにいる人でいいのかな?」
ギゼムは建物の陰に向かって声をかけた。
「なんだ、バレてたのかよ。まっ、いいか。その話、乗らせてもらうぜ」
ギゼムに指摘され、男が建物の陰から姿を現した。
「すまない。突然来てしまって驚かせてしまったようだね。僕の名前はギゼム。冒険パーティの華麗なる英雄のリーダーをしているんだ。で、こっちが相棒の……」
金髪の青年はそこまで言うと、隣の眼帯の男を見る。
「ルドアだ」
金髪の青年ギゼムに促されるかたちで簡潔に返す眼帯の男ルドア。
「それで、俺を待ってた理由はなんだ?」
エルフェリオンに訪問の意図を訊かれたギゼムはニコリと笑う。
「実はね、僕たち華麗なる英雄は新たに仲間になってくれる人を探している。だけど、だれでといいというわけではない。知ってると思うけど、冒険者は危険な職業だ。それなりの実力と素質を持つ者でなければならない」
「……それで、俺に白羽の矢が立ったわけか?」
ギゼムが言わんとすることを予測してエルフェリオンが言う。それに対して金髪の青年ギゼムは首肯した。
「話が早くて助かるよ。街でエルフェリオン君の話を聞いてね。君なら僕たちと一緒に冒険できるんじゃないかと思ったわけさ。そして、それは君を一目見て確信になった。僕の直感が君には冒険者としての素質が充分にあると告げている。どうだろう?」
期待が込められた視線を向けられ、エルフェリオンは黙考する。
「冒険者、か。悪くない話ではあるが……」
「なにか問題があるのかい?」
思案するエルフェリオンにギゼムが訊く。
「俺はあんたらをよく知らないんでな。信用できるのかどうかだ」
エルフェリオンの言葉にギゼムは首を縦に動かす。
「たしかにエルフェリオン君の意見はもっともだね。だったら、こうしよう。仲間は二人ほしいんだ。ひとりはエルフェリオン君として、あとのひとりは君自身が決めてくれないか? 君が信用できると思う相手なら僕たちも信用しよう」
ギゼムからの提案にエルフェリオンは眉を顰める。
「初対面の俺のことをどうしてそこまで信用する?」
疑問を口にするエルフェリオンにギゼムは「ふふふ……」と笑う。
「簡単なことさ。人の信用を得たいなら、まずは自分が相手を信用しないとね」
ギゼムは当然だと言わんばかりに答える。しかし、それでもエルフェリオンは迷いを捨てきれない。
「おい、ギゼムがここまで言ってるんだぜ? なにが気にくわねぇってんだよ!?」
エルフェリオンの態度にルドアが声を荒げる。が、ギゼムはそれを制した。
「待たないか、ルドア。彼の身になって考えてみればしかたのないことだよ。初対面の者にいきなり仲間に誘われて二つ返事でオーケーとはいかないだろう。それに、さっきも言ったように冒険者は命懸けの仕事だから尚更だ。本当ならもっと時間をかけてじっくりと考えてもらいたいところなんだけど、僕たちにも事情があってそうもいかないんだ……」
「事情?」
エルフェリオンが復唱して問うとギゼムは頷く。
「この街の近くに迷宮が存在することは知ってるかい?」
「ああ、邪龍の迷宮って呼ばれてる所だな。しかし、あそこにはもう大した財宝は眠ってないらしいじゃないか?」
「そのとおり。一般的には冒険者たちが既に狩り尽くしたと言われているね。だけどね、僕たちはある情報を手に入れたんだ」
ギゼムがニヤリと口角を上げた。
「ある情報?」
聞き返すエルフェリオンにギゼムは声を小さくして答える。
「邪龍の迷宮には未踏エリアがあるという情報だ。僕とルドアはそれを確かめるために邪龍の迷宮を調査し、その裏付けもとっているからデマなんかじゃない。あとはライバルに先を越されないように早く財宝を手に入れるだけさ」
「……なら、どうして自分たちだけで未踏エリアに潜らない? 仲間を増やせば分け前が減るだろ」
エルフェリオンはギゼムの真意を確かめるように見つめる。
「鋭いね。正直に白状すれば、僕たちだけではリスクが高いようだったからさ。あと、そろそろ仲間を増やそうかとルドアと相談し合っていた頃合いだったというのもあるかな」
ギゼムはエルフェリオンを見つめ返して回答する。
「……いいだろう。あんたらの仲間になってやる。その代わりに分け前はきっちりもらうぜ」
「ありがとう! もちろん分け前のほうは均等に分けると約束するよ。となれば、あとひとりなんだけど、そこにいる人でいいのかな?」
ギゼムは建物の陰に向かって声をかけた。
「なんだ、バレてたのかよ。まっ、いいか。その話、乗らせてもらうぜ」
ギゼムに指摘され、男が建物の陰から姿を現した。
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