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第1章 邪龍との邂逅
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「ゼイナスじゃねぇかよ。盗み聞きとは悪趣味だな。それとも俺にボコられたのが悔しくてリベンジにでもきたか?」
姿を見せた茶色い短髪の青年にエルフェリオンが呆れたように言う。それは図星だったらしく、ゼイナスは苦虫を噛み潰したような顔をする。
「るせぇよ! んなことよりも今は冒険の話だろうが!」
ゼイナスは話題を逸らそうと強引に話を戻す。
「……ったく……」
エルフェリオンはため息をつきつつもギゼムたちに視線を向ける。
「彼を仲間に加えるということでいいのかな?」
ギゼムがエルフェリオンに確認するように問う。
「そうだな。まぁ、俺に比べりゃ弱っちいのは確かだが、ほかの連中よりは使い物になるだろ」
「んだとぉ、この野郎! このゼイナス様にまぐれで勝ったからって調子にのってんじゃねぇぞ!?」
「ほぉ~……そのまぐれが何度続いてんだ? おまえの連戦連敗だってことを忘れちまったか?」
「ぐぬっ……この!……」
ゼイナスは悔しさと怒りに全身をワナワナと震わせる。
「ま……まぁ、エルフェリオン君が彼を仲間に加えてもいいというなら僕たちはそれに従うよ。……えっと、ゼイナス君だっけ? 僕はギゼム、こっちは相棒のルドアだ。よろしくね」
エルフェリオンとゼイナスのやりとりに苦笑しながらも金髪の青年が名乗る。
「おぅ! このゼイナス様が仲間になりゃあ百人力だ!! 大船に乗ったつもりでいな!」
ゼイナスは自信たっぷりといった様子で答える。
「けっ、いつも俺にやられっぱなしのやつがよくも言えたものだぜ」
「んだとぉ! 上等だ! 今、ここで決着をつけてやろうかよ!? その代わり、邪龍の迷宮へ行く前に死んじまっても化けて出るんじゃねぇぞ!? ゼイナス様を本気にさせたことを後悔させてやらぁ!!」
そっぽを向くエルフェリオンにゼイナスは飛び掛からんばかりの勢いで捲し立てる。
「いい加減にしねぇか! そんなふざけた調子で迷宮に潜れるのか!?」
黙していたルドアが苛立ったように声を荒げた。ギゼムはその肩に手を置く。
「まぁまぁ、いいじゃないか。僕は彼らを仲間と認めるよ。そして、認めたからには信用もする。冒険者とはそんなものだろ?」
「……ちっ、わぁったよ!」
頭をガリガリと掻きながら吐き捨てるように言うルドア。
「決まりだね。邪龍の迷宮に潜るのは明後日にして、ふたりには支度金として10万コルバずつ渡しておくから準備しておいてくれ」
ギゼムはエルフェリオンとゼイナスに現金を手渡す。
「気前がよすぎるんじゃないか?」
これまで他人からの好意を受けてこなかったエルフェリオンにとってギゼムの行動はどうにも理解し難いものであった。
「ハハハハハ……君も相当に疑り深いみたいだね。でも、冒険者ならそれくらい慎重なほうがいいかな。このお金は、いわば将来有望な君たちへの先行投資だよ」
「へぇ……それで、俺たちが金を受け取ったままトンズラしたり、役に立たなかったりしたらどうする?」
「先行投資にはリスクは付き物だよ。ただ、僕はこれが無駄にならないことを確信している。君たちは必ず華麗なる英雄の大きな戦力になるはずだ。エルフェリオン君だって、冒険者として活躍する自信はあるんじゃないのかな?」
ギゼムに訊かれ、エルフェリオンは「さぁな」と短く答える。
「そんじゃあな! 明後日はこのゼイナス様の冒険者デビューってやつだ。大活躍を期待してろよ!!」
将来有望と評されて先行投資までされたゼイナスはすっかり気をよくし、ギゼムとルドアに声をかけて意気揚々と帰っていく。
「けっ、ヒヨッコが偉そうに!」
ルドアは不機嫌そうに呟くが、その隣ではギゼムが微笑を浮かべる。
「まぁまぁ、怒らない怒らない。彼だってきっと役に立ってくれるからさ」
「……まっ、ギゼムがそう言うなら信じるしかねぇか」
「ふふふふふ……それじゃ、僕たちも行こうか。それでは僕たちもこれで失礼させてもらうよ。明後日の朝、迎えにくるからゼイナス君にも伝えておいてくれるかい?」
「わかった」
エルフェリオンを勧誘するという目的を果たしたギゼムとルドアは立ち去る。こうして、スラム街の夜は更けていくのだった。
姿を見せた茶色い短髪の青年にエルフェリオンが呆れたように言う。それは図星だったらしく、ゼイナスは苦虫を噛み潰したような顔をする。
「るせぇよ! んなことよりも今は冒険の話だろうが!」
ゼイナスは話題を逸らそうと強引に話を戻す。
「……ったく……」
エルフェリオンはため息をつきつつもギゼムたちに視線を向ける。
「彼を仲間に加えるということでいいのかな?」
ギゼムがエルフェリオンに確認するように問う。
「そうだな。まぁ、俺に比べりゃ弱っちいのは確かだが、ほかの連中よりは使い物になるだろ」
「んだとぉ、この野郎! このゼイナス様にまぐれで勝ったからって調子にのってんじゃねぇぞ!?」
「ほぉ~……そのまぐれが何度続いてんだ? おまえの連戦連敗だってことを忘れちまったか?」
「ぐぬっ……この!……」
ゼイナスは悔しさと怒りに全身をワナワナと震わせる。
「ま……まぁ、エルフェリオン君が彼を仲間に加えてもいいというなら僕たちはそれに従うよ。……えっと、ゼイナス君だっけ? 僕はギゼム、こっちは相棒のルドアだ。よろしくね」
エルフェリオンとゼイナスのやりとりに苦笑しながらも金髪の青年が名乗る。
「おぅ! このゼイナス様が仲間になりゃあ百人力だ!! 大船に乗ったつもりでいな!」
ゼイナスは自信たっぷりといった様子で答える。
「けっ、いつも俺にやられっぱなしのやつがよくも言えたものだぜ」
「んだとぉ! 上等だ! 今、ここで決着をつけてやろうかよ!? その代わり、邪龍の迷宮へ行く前に死んじまっても化けて出るんじゃねぇぞ!? ゼイナス様を本気にさせたことを後悔させてやらぁ!!」
そっぽを向くエルフェリオンにゼイナスは飛び掛からんばかりの勢いで捲し立てる。
「いい加減にしねぇか! そんなふざけた調子で迷宮に潜れるのか!?」
黙していたルドアが苛立ったように声を荒げた。ギゼムはその肩に手を置く。
「まぁまぁ、いいじゃないか。僕は彼らを仲間と認めるよ。そして、認めたからには信用もする。冒険者とはそんなものだろ?」
「……ちっ、わぁったよ!」
頭をガリガリと掻きながら吐き捨てるように言うルドア。
「決まりだね。邪龍の迷宮に潜るのは明後日にして、ふたりには支度金として10万コルバずつ渡しておくから準備しておいてくれ」
ギゼムはエルフェリオンとゼイナスに現金を手渡す。
「気前がよすぎるんじゃないか?」
これまで他人からの好意を受けてこなかったエルフェリオンにとってギゼムの行動はどうにも理解し難いものであった。
「ハハハハハ……君も相当に疑り深いみたいだね。でも、冒険者ならそれくらい慎重なほうがいいかな。このお金は、いわば将来有望な君たちへの先行投資だよ」
「へぇ……それで、俺たちが金を受け取ったままトンズラしたり、役に立たなかったりしたらどうする?」
「先行投資にはリスクは付き物だよ。ただ、僕はこれが無駄にならないことを確信している。君たちは必ず華麗なる英雄の大きな戦力になるはずだ。エルフェリオン君だって、冒険者として活躍する自信はあるんじゃないのかな?」
ギゼムに訊かれ、エルフェリオンは「さぁな」と短く答える。
「そんじゃあな! 明後日はこのゼイナス様の冒険者デビューってやつだ。大活躍を期待してろよ!!」
将来有望と評されて先行投資までされたゼイナスはすっかり気をよくし、ギゼムとルドアに声をかけて意気揚々と帰っていく。
「けっ、ヒヨッコが偉そうに!」
ルドアは不機嫌そうに呟くが、その隣ではギゼムが微笑を浮かべる。
「まぁまぁ、怒らない怒らない。彼だってきっと役に立ってくれるからさ」
「……まっ、ギゼムがそう言うなら信じるしかねぇか」
「ふふふふふ……それじゃ、僕たちも行こうか。それでは僕たちもこれで失礼させてもらうよ。明後日の朝、迎えにくるからゼイナス君にも伝えておいてくれるかい?」
「わかった」
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