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第1章 邪龍との邂逅
1ー8 邪龍の迷宮③
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ドシン……ドシン……
ゆっくりとした歩調を刻む重い足音が巨大な何かの接近を伝える。
「で、でけぇ!!」
ゼイナスが驚嘆した。現れたのは全長4メートルほどの巨体のモンスターだ。頭部と下半身は牛、胴体は人間の姿をしている。その太く逞しい右腕には斧がしっかりと握られていた。
「ミノタウロス、か」
愛用のハルバートを構えたギゼムが呟く。
「こいつは、おめぇらみてぇなヒヨッコにはまだ無理だろうぜ」
ルドアはエルフェリオンとゼイナスにチラリと視線を流す。
「グモォォォォォッ!!」
華麗なる英雄を威嚇するかのように咆哮したミノタウロスがギゼムに突進する。
「バインド・チェーン!!」
ミノタウロスの体当たりを軽やかな動きで難なく躱してみせたギゼムが魔術名の詠唱する。刹那、床から伸びた魔力の鎖がミノタウロスの両腕に絡みつく。
「ゴァァァァァァァァッ!!」
ミノタウロスは鎖を引き千切らんとばかりに暴れる。しかし、魔力によって作り出された鎖を切ることはできない。
「ルドア!」
「おぅ!」
ギゼムに名を呼ばれて短く答えた隻眼の剣士は腰を落として片手長剣を水平に構える。
「闘気戦術・飛閃!」
ルドアは闘気を纏わせた片手剣を振り抜く。それによって生じた斬撃波がミノタウロスに迫る。ミノタウロスは逃れようと身をよじる。
ザシュッ……ボトッ……
切断されたミノタウロスの左腕がおびただしい量の血液とともに床に落ちる。
「モギャァァァァァァッ!!!」
ミノタウロスの絶叫は空気が激しく振動させた。一帯に血の匂いが充満する。
「ちっ、胴体を切断してやるつもりだったってのによ」
舌打ちしたルドアが片手剣を構え直す。
「モガァァァァァッ!」
ようやく魔力の鎖を振りほどいたミノタウロスが握りしめた斧を振り上げた。その双眸は怒りを宿して血走っている。
「馬鹿力だけで戦いに勝利できるわけではないということを教えてあげよう。くらえ、闘気戦術・斬閃!」
駆け出したギゼムは愛用のハルバートに闘気を纏わせ、その鋭い斧状の刃でミノタウロスに残された右腕を一撃で斬り落とす。
「モギャァァァァァァッ!!!」
ミノタウロスの苦痛の絶叫が再び廊下の空気を震わせた。
「ルドア!」
「わかってる! いくぞ!!」
ギゼムとルドアが自分の得物に闘気を纏わせ、ミノタウロスに飛びかかる。
「「闘気戦術・斬閃!」」
ミノタウロスの両脇に陣取ったギゼムとルドアが同時に斜めに斬り上げた。
「モグワァァァァァァァァッ!!!!!」
腹部をXの形に斬りつけられて致命傷を負ったミノタウロスは、喉が張り裂けんばかりの声量で叫ぶ。が、そのまま床に倒れた。
「さっ、これで片付いた。先に進もうか」
あっという間に巨大な敵を撃破したギゼムはまるで何事もなかったかのように言い、離れて見学していたエルフェリオンとゼイナスを見やり、その間にルドアが魔石を回収しておく。
「どうだったかな、僕たちの戦いぶりは?」
ハルバートに付着した血を振り落としながら訊くギゼム。
「……すごい……」
予想を遥かに超える実力を持つ二人に圧倒されながらもエルフェリオンはどうにか短い感想をしぼり出す。
「アハハハ……そんなに驚くほどのことでもないよ。君たちだってこれくらいはできるようになるさ。さて、まだ邪龍の迷宮に潜ったばかりだよ。二人とも、頑張ってくれたまえ」
ギゼムは爽やかな笑顔を見せた。
ゆっくりとした歩調を刻む重い足音が巨大な何かの接近を伝える。
「で、でけぇ!!」
ゼイナスが驚嘆した。現れたのは全長4メートルほどの巨体のモンスターだ。頭部と下半身は牛、胴体は人間の姿をしている。その太く逞しい右腕には斧がしっかりと握られていた。
「ミノタウロス、か」
愛用のハルバートを構えたギゼムが呟く。
「こいつは、おめぇらみてぇなヒヨッコにはまだ無理だろうぜ」
ルドアはエルフェリオンとゼイナスにチラリと視線を流す。
「グモォォォォォッ!!」
華麗なる英雄を威嚇するかのように咆哮したミノタウロスがギゼムに突進する。
「バインド・チェーン!!」
ミノタウロスの体当たりを軽やかな動きで難なく躱してみせたギゼムが魔術名の詠唱する。刹那、床から伸びた魔力の鎖がミノタウロスの両腕に絡みつく。
「ゴァァァァァァァァッ!!」
ミノタウロスは鎖を引き千切らんとばかりに暴れる。しかし、魔力によって作り出された鎖を切ることはできない。
「ルドア!」
「おぅ!」
ギゼムに名を呼ばれて短く答えた隻眼の剣士は腰を落として片手長剣を水平に構える。
「闘気戦術・飛閃!」
ルドアは闘気を纏わせた片手剣を振り抜く。それによって生じた斬撃波がミノタウロスに迫る。ミノタウロスは逃れようと身をよじる。
ザシュッ……ボトッ……
切断されたミノタウロスの左腕がおびただしい量の血液とともに床に落ちる。
「モギャァァァァァァッ!!!」
ミノタウロスの絶叫は空気が激しく振動させた。一帯に血の匂いが充満する。
「ちっ、胴体を切断してやるつもりだったってのによ」
舌打ちしたルドアが片手剣を構え直す。
「モガァァァァァッ!」
ようやく魔力の鎖を振りほどいたミノタウロスが握りしめた斧を振り上げた。その双眸は怒りを宿して血走っている。
「馬鹿力だけで戦いに勝利できるわけではないということを教えてあげよう。くらえ、闘気戦術・斬閃!」
駆け出したギゼムは愛用のハルバートに闘気を纏わせ、その鋭い斧状の刃でミノタウロスに残された右腕を一撃で斬り落とす。
「モギャァァァァァァッ!!!」
ミノタウロスの苦痛の絶叫が再び廊下の空気を震わせた。
「ルドア!」
「わかってる! いくぞ!!」
ギゼムとルドアが自分の得物に闘気を纏わせ、ミノタウロスに飛びかかる。
「「闘気戦術・斬閃!」」
ミノタウロスの両脇に陣取ったギゼムとルドアが同時に斜めに斬り上げた。
「モグワァァァァァァァァッ!!!!!」
腹部をXの形に斬りつけられて致命傷を負ったミノタウロスは、喉が張り裂けんばかりの声量で叫ぶ。が、そのまま床に倒れた。
「さっ、これで片付いた。先に進もうか」
あっという間に巨大な敵を撃破したギゼムはまるで何事もなかったかのように言い、離れて見学していたエルフェリオンとゼイナスを見やり、その間にルドアが魔石を回収しておく。
「どうだったかな、僕たちの戦いぶりは?」
ハルバートに付着した血を振り落としながら訊くギゼム。
「……すごい……」
予想を遥かに超える実力を持つ二人に圧倒されながらもエルフェリオンはどうにか短い感想をしぼり出す。
「アハハハ……そんなに驚くほどのことでもないよ。君たちだってこれくらいはできるようになるさ。さて、まだ邪龍の迷宮に潜ったばかりだよ。二人とも、頑張ってくれたまえ」
ギゼムは爽やかな笑顔を見せた。
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