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第1章 邪龍との邂逅
1ー9 邪龍の迷宮④
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邪龍の迷宮の第1階層を進む華麗なる英雄は、迫りくるバウンド・ボールやローリング・ボールを撃破し、順調に攻略していた。幸い、ミノタウロスのようなモンスターは出現しなかったため、戦闘はエルフェリオンとゼイナスがメインとなっている。
「ゼイナス、任せたぞ!」
エルフェリオンは回転突撃してくるローリング・ボールを回避し、後方のゼイナスに声をかける。
「おぅ、任せろや!」
野球のバットでも持つかのような構え方をしたゼイナスが転がってくるモンスターを見据える。
「ふんぬ!」
ゼイナスが振り抜いた大戦斧はローリング・ボールを真っ二つに斬り裂く。
「ロロォッ!」
悲鳴をあげて霧消するローリング・ボールを視界の端に捉えたエルフェリオンが前方に視線を戻す。
廊下の壁を利用して左右に素早く跳ねながら2体のバウンド・ボールが接近してくる。
「へっ……そんな子供だましで俺を殺れるとでも思ってるのか?」
エルフェリオンが、バウンド・ボールの動きを観察し、タイミングを合わせて揮ったダガーが片方のバウンド・ボールを斬る。さらに残ったバウンド・ボールにロングソードの斬撃を入れる。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロッ
「おっと!」
エルフェリオンは、廊下の奥から転がってきたローリング・ボールを跳躍して躱す。
「おっしゃあ、このゼイナス様が成敗してやるぜ!」
エルフェリオンの足元を通過して、そのまま突進してくるローリング・ボールに怯むことはくゼイナスは大戦斧を振り上げる。
「おらぁぁ!」
ローリング・ボールが攻撃範囲に入った直後、ゼイナスの大戦斧がローリング・ボールを真っ二つに斬り裂く。
パチパチパチパチパチパチ……
両手を叩く乾いた音が廊下に響く。にこやかな笑顔を見せたギゼムが二人に惜しみない拍手を送る。
「大したものじゃないか。もう、バウンド・ボールやローリング・ボールじゃ相手にならないみたいだね。君たちの実力なら次の階層でも充分に通用するはず。第2階層へ進もう!」
「そういえば、あんたらはこの迷宮を調査したんだったな。どこまで攻略しているんだ?」
エルフェリオンは、ゆっくりとした足取りで近付いてくるギゼムに問う。
「実はね、この邪龍の迷宮は世界中に点在する迷宮のなかではそれほど広いほうではないんだ。というより、狭いほうだといったほうがいいかもしれない。現在のところ、一般的には邪龍の迷宮は第2階層までとされている」
「ところが、未踏エリアが存在することがわかった、と」
エルフェリオンが続けた言葉をギゼムは首を縦に動かすことで肯定する。
「ある情報筋から得た情報なんだ。それで、僕とルドアで邪龍の迷宮に潜入していろいろ調べたところ、第3階層への隠し階段を発見することはできた。それはよかったんだけどね、その奥の部屋が少々厄介でさ……」
「そこで、このゼイナス様の出番ってわけか!」
大戦斧の柄を肩に担いだゼイナスがニヤリと唇の端を吊り上げた。
「ご名答! ちなみに第2階層への階段はこの廊下の先だよ。さぁ、進もう」
エルフェリオンとゼイナスはギゼムに促されるかたちで廊下を進む。そして、ほどなくして第2階層への下り階段が現れた。
◎★☆◎
「第2階層にはどんなモンスターが出現するんだ?」
エルフェリオンは階段を下りながら後続のギゼムとルドアに訊く。
「バウンド・ボールやローリング・ボールに加えて、ゴブリンやジャイアントスネーク……あとはスライムとか出てきたな。まぁ、エルフェリオン君やゼイナス君なら問題ない相手だよ」
「だが、油断してつまらねぇ死に方なんぞするんじゃねぇぜ?」
「あははは……この二人なら大丈夫だと思うけど、油断大敵というのは僕も同意見だ。気を抜かないようにね」
「特にゼイナスはすぐに調子にのりやがるからな。危なっかしいんじゃねぇか?」
「んなっ! このゼイナス様のどこが危なっかしいってんだよ!?」
「全部に決まってんだろうが」
ルドアが当然だろうと言わんばかりに口角を上げる。
「野郎! 言わせておけば……」
「そうやって簡単に挑発にのるから危なっかしいんじゃないのか?」
隻眼の剣士に飛びかかろうと身構えたゼイナスにエルフェリオンが冷静に指摘する。
「ぐぬぬぬ……」
ぐうの音も出ずにワナワナと体を震わせるゼイナスにエルフェリオンは冷ややかな視線を投げかける。
「ふっ、さすがはエルフェリオン君だね……おっと、どうやら第2階層に着いたみたいだよ」
階段を下りきった先を指差すギゼム。そこには大きな扉があり、その前はちょっとした広間になっている。
「よし、あのスペースで小休止といこうか」
「あ? んなことしねぇでガンガンいこうぜ!」
ギゼムが出した提案にゼイナスが異を唱える。
「いや、ここら休息をとるべきだ。あの扉の先にはさらに強力なモンスターが徘徊しているからね。ときには休むことも重要だよ」
「けっ、さっき調子にのるなと忠告したばっかだというのにこれか……学習能力がねぇのか、おめぇはよ?」
「むっ……う、うるせぇ!!」
ルドアにバカにされたと感じたゼイナスが声を荒げてそっぽを向く。
「……とにかく休憩にしよう。これは華麗なる英雄のリーダーとしての命令だよ」
パーティーのリーダーであるギゼムに命令されては無視できず、ゼイナスはしぶしぶながら了解する。
そして、暫しの休息を終えた一行は扉を開けて邪龍の迷宮の第2階層へと足を踏み入れるのだった。
「ゼイナス、任せたぞ!」
エルフェリオンは回転突撃してくるローリング・ボールを回避し、後方のゼイナスに声をかける。
「おぅ、任せろや!」
野球のバットでも持つかのような構え方をしたゼイナスが転がってくるモンスターを見据える。
「ふんぬ!」
ゼイナスが振り抜いた大戦斧はローリング・ボールを真っ二つに斬り裂く。
「ロロォッ!」
悲鳴をあげて霧消するローリング・ボールを視界の端に捉えたエルフェリオンが前方に視線を戻す。
廊下の壁を利用して左右に素早く跳ねながら2体のバウンド・ボールが接近してくる。
「へっ……そんな子供だましで俺を殺れるとでも思ってるのか?」
エルフェリオンが、バウンド・ボールの動きを観察し、タイミングを合わせて揮ったダガーが片方のバウンド・ボールを斬る。さらに残ったバウンド・ボールにロングソードの斬撃を入れる。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロッ
「おっと!」
エルフェリオンは、廊下の奥から転がってきたローリング・ボールを跳躍して躱す。
「おっしゃあ、このゼイナス様が成敗してやるぜ!」
エルフェリオンの足元を通過して、そのまま突進してくるローリング・ボールに怯むことはくゼイナスは大戦斧を振り上げる。
「おらぁぁ!」
ローリング・ボールが攻撃範囲に入った直後、ゼイナスの大戦斧がローリング・ボールを真っ二つに斬り裂く。
パチパチパチパチパチパチ……
両手を叩く乾いた音が廊下に響く。にこやかな笑顔を見せたギゼムが二人に惜しみない拍手を送る。
「大したものじゃないか。もう、バウンド・ボールやローリング・ボールじゃ相手にならないみたいだね。君たちの実力なら次の階層でも充分に通用するはず。第2階層へ進もう!」
「そういえば、あんたらはこの迷宮を調査したんだったな。どこまで攻略しているんだ?」
エルフェリオンは、ゆっくりとした足取りで近付いてくるギゼムに問う。
「実はね、この邪龍の迷宮は世界中に点在する迷宮のなかではそれほど広いほうではないんだ。というより、狭いほうだといったほうがいいかもしれない。現在のところ、一般的には邪龍の迷宮は第2階層までとされている」
「ところが、未踏エリアが存在することがわかった、と」
エルフェリオンが続けた言葉をギゼムは首を縦に動かすことで肯定する。
「ある情報筋から得た情報なんだ。それで、僕とルドアで邪龍の迷宮に潜入していろいろ調べたところ、第3階層への隠し階段を発見することはできた。それはよかったんだけどね、その奥の部屋が少々厄介でさ……」
「そこで、このゼイナス様の出番ってわけか!」
大戦斧の柄を肩に担いだゼイナスがニヤリと唇の端を吊り上げた。
「ご名答! ちなみに第2階層への階段はこの廊下の先だよ。さぁ、進もう」
エルフェリオンとゼイナスはギゼムに促されるかたちで廊下を進む。そして、ほどなくして第2階層への下り階段が現れた。
◎★☆◎
「第2階層にはどんなモンスターが出現するんだ?」
エルフェリオンは階段を下りながら後続のギゼムとルドアに訊く。
「バウンド・ボールやローリング・ボールに加えて、ゴブリンやジャイアントスネーク……あとはスライムとか出てきたな。まぁ、エルフェリオン君やゼイナス君なら問題ない相手だよ」
「だが、油断してつまらねぇ死に方なんぞするんじゃねぇぜ?」
「あははは……この二人なら大丈夫だと思うけど、油断大敵というのは僕も同意見だ。気を抜かないようにね」
「特にゼイナスはすぐに調子にのりやがるからな。危なっかしいんじゃねぇか?」
「んなっ! このゼイナス様のどこが危なっかしいってんだよ!?」
「全部に決まってんだろうが」
ルドアが当然だろうと言わんばかりに口角を上げる。
「野郎! 言わせておけば……」
「そうやって簡単に挑発にのるから危なっかしいんじゃないのか?」
隻眼の剣士に飛びかかろうと身構えたゼイナスにエルフェリオンが冷静に指摘する。
「ぐぬぬぬ……」
ぐうの音も出ずにワナワナと体を震わせるゼイナスにエルフェリオンは冷ややかな視線を投げかける。
「ふっ、さすがはエルフェリオン君だね……おっと、どうやら第2階層に着いたみたいだよ」
階段を下りきった先を指差すギゼム。そこには大きな扉があり、その前はちょっとした広間になっている。
「よし、あのスペースで小休止といこうか」
「あ? んなことしねぇでガンガンいこうぜ!」
ギゼムが出した提案にゼイナスが異を唱える。
「いや、ここら休息をとるべきだ。あの扉の先にはさらに強力なモンスターが徘徊しているからね。ときには休むことも重要だよ」
「けっ、さっき調子にのるなと忠告したばっかだというのにこれか……学習能力がねぇのか、おめぇはよ?」
「むっ……う、うるせぇ!!」
ルドアにバカにされたと感じたゼイナスが声を荒げてそっぽを向く。
「……とにかく休憩にしよう。これは華麗なる英雄のリーダーとしての命令だよ」
パーティーのリーダーであるギゼムに命令されては無視できず、ゼイナスはしぶしぶながら了解する。
そして、暫しの休息を終えた一行は扉を開けて邪龍の迷宮の第2階層へと足を踏み入れるのだった。
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