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第3章 5年後のレバルフ
3―4 レバルフにうごめく影
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「そこのおまえ! まさか、もしかして……エルフェリオンか!?」
レバルフのスラム街へと久方ぶりに帰還したエルフェリオンを見つけた男が駆け寄ってくる。
「ん? なんだ、ルートンか」
振り向いた青髪の青年は特になんの感情もなく応える。男の年齢は40過ぎといったところで、ブラウンの短髪と瞳をしている。鍛え抜かれた体躯の上半身にはピチピチのシャツを1枚だけ着ている。
「知り合いなの?」
「まぁな。スラムの住人のひとりだ」
「ふぅん」
答えたエルフェリオンにアルナは素っ気なく返す。
「なんだじゃないだろ! 何年もいなくなりやがって!!」
ルートンはエルフェリオンの眼前までくると怒鳴りつけて両肩をつかむ。
「うっせぇな。こっちにもいろいろとあんだよ」
うっとうしそうに顔を顰めたエルフェリオンが肩をつかんでいる手を払い除ける。
「まぁ、ここで立ち話も、だな。とりあえずついてきてくれ」
ルートンは「絶対に逃がさないぞ!」と言わんばかりにエルフェリオンの手を引っ張って足早にスラム街を歩く。
「おいおい、なんなんだよ?……わかったから、そんなに引っ張るな」
エルフェリオンは迷惑そうに腕を振りほどいて、しぶしぶながらルートンのあとに続く。
「ちょっと、どこへ行くのよ?」
「さぁな。ついていけばわかるだろ」
「あのねぇ……そもそも、どうしてスラム街に来たわけ?」
アルナは呆れつつも疑問をぶつける。
「どうしてって……そりゃ、住処がスラムにあるからだが?」
「へ? それじゃ、レバルフの実業家の身辺警護に就いていたお兄ちゃんと、スラム街のあんたがどういう経緯で知り合ったの!?」
目を丸くして訊くアルナにエルフェリオンは目が点になる。
「なに言ってんだ? ゼイナスが実業家の身辺警護? ジョークにしてもセンスを疑いたくなるぜ」
「ジョークなんかじゃないわよ! だって、お兄ちゃんからの手紙に書いてあったんだからね!」
ムキになって語気を強めるアルナにエルフェリオンは「くくくくく……」と喉を鳴らす。
「なによ!?」
怪訝な表情で青髪の青年を睨みつけるアルナ。
「あいつは俺と同じスラム育ちだぜ? ゼイナスのやつ、妹相手にカッコつけすぎだろ」
「あ……あたしは、今日あったばかりのあんたよりお兄ちゃんを信用する!」
アルナはなおもゼイナスを信じることを選択する。が、エルフェリオンは哀れみを溶かし込んだ生温かい視線を向ける。
「あぁ……うん、そうか……それならそれでいいんじゃないか?」
「な、なによ、その憐れんだような目は!?」
「べっつに~……」
「……なによ、言いたいことがあるなら……」
「おい、いい加減にしてくれないか? 頼むからあんまり騒がないでくれ」
言い合いをする二人にルートンが割って入る。
「あん? それはどういう意味だ? スラムでは静かにしろなんて決まりはなかったはずだぜ?」
エルフェリオンに訊かれ、ルートンは頭をガリガリと掻く。
「おまえがいない間に面倒なことがあったんだ。とりあえず、その事も含めて説明してやるからおとなしくついてきてくれ」
「……しょうがねぇな……」
エルフェリオンは、スラム街の路地に素早く視線を走らせてルートンの言葉に従うことにした。
◎★☆◎
エルフェリオンが一瞬だけ視線を向けた路地。膝を抱えてうずくまっていた老人が、ルートンたちが通り過ぎるのを待ってる立ち上がる。
「あやつ、エルフェリオンか。まさか生きていたとは……じゃが、これは金を得るチャンスかもしれんのぉ」
老人は卑しく笑んでどこかへと歩きだした。
レバルフのスラム街へと久方ぶりに帰還したエルフェリオンを見つけた男が駆け寄ってくる。
「ん? なんだ、ルートンか」
振り向いた青髪の青年は特になんの感情もなく応える。男の年齢は40過ぎといったところで、ブラウンの短髪と瞳をしている。鍛え抜かれた体躯の上半身にはピチピチのシャツを1枚だけ着ている。
「知り合いなの?」
「まぁな。スラムの住人のひとりだ」
「ふぅん」
答えたエルフェリオンにアルナは素っ気なく返す。
「なんだじゃないだろ! 何年もいなくなりやがって!!」
ルートンはエルフェリオンの眼前までくると怒鳴りつけて両肩をつかむ。
「うっせぇな。こっちにもいろいろとあんだよ」
うっとうしそうに顔を顰めたエルフェリオンが肩をつかんでいる手を払い除ける。
「まぁ、ここで立ち話も、だな。とりあえずついてきてくれ」
ルートンは「絶対に逃がさないぞ!」と言わんばかりにエルフェリオンの手を引っ張って足早にスラム街を歩く。
「おいおい、なんなんだよ?……わかったから、そんなに引っ張るな」
エルフェリオンは迷惑そうに腕を振りほどいて、しぶしぶながらルートンのあとに続く。
「ちょっと、どこへ行くのよ?」
「さぁな。ついていけばわかるだろ」
「あのねぇ……そもそも、どうしてスラム街に来たわけ?」
アルナは呆れつつも疑問をぶつける。
「どうしてって……そりゃ、住処がスラムにあるからだが?」
「へ? それじゃ、レバルフの実業家の身辺警護に就いていたお兄ちゃんと、スラム街のあんたがどういう経緯で知り合ったの!?」
目を丸くして訊くアルナにエルフェリオンは目が点になる。
「なに言ってんだ? ゼイナスが実業家の身辺警護? ジョークにしてもセンスを疑いたくなるぜ」
「ジョークなんかじゃないわよ! だって、お兄ちゃんからの手紙に書いてあったんだからね!」
ムキになって語気を強めるアルナにエルフェリオンは「くくくくく……」と喉を鳴らす。
「なによ!?」
怪訝な表情で青髪の青年を睨みつけるアルナ。
「あいつは俺と同じスラム育ちだぜ? ゼイナスのやつ、妹相手にカッコつけすぎだろ」
「あ……あたしは、今日あったばかりのあんたよりお兄ちゃんを信用する!」
アルナはなおもゼイナスを信じることを選択する。が、エルフェリオンは哀れみを溶かし込んだ生温かい視線を向ける。
「あぁ……うん、そうか……それならそれでいいんじゃないか?」
「な、なによ、その憐れんだような目は!?」
「べっつに~……」
「……なによ、言いたいことがあるなら……」
「おい、いい加減にしてくれないか? 頼むからあんまり騒がないでくれ」
言い合いをする二人にルートンが割って入る。
「あん? それはどういう意味だ? スラムでは静かにしろなんて決まりはなかったはずだぜ?」
エルフェリオンに訊かれ、ルートンは頭をガリガリと掻く。
「おまえがいない間に面倒なことがあったんだ。とりあえず、その事も含めて説明してやるからおとなしくついてきてくれ」
「……しょうがねぇな……」
エルフェリオンは、スラム街の路地に素早く視線を走らせてルートンの言葉に従うことにした。
◎★☆◎
エルフェリオンが一瞬だけ視線を向けた路地。膝を抱えてうずくまっていた老人が、ルートンたちが通り過ぎるのを待ってる立ち上がる。
「あやつ、エルフェリオンか。まさか生きていたとは……じゃが、これは金を得るチャンスかもしれんのぉ」
老人は卑しく笑んでどこかへと歩きだした。
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