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第3章 5年後のレバルフ
3―10 ゲーブの野望
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「エルフェリオンがこのレバルフに戻ってきやがっただと?」
酒場ルコアールのバックヤードはゲーブが個人的に使用しているスペースである。大きなソファに腰を沈めたゲーブが報告にやってきた老人をギロリと睨む。
「あっしの記憶に間違いありません」
老人は5年前の記憶を呼び戻して断言する。
「しっかし、ゲーブの旦那に追い出されたあの野郎がどうして今さら戻ってきたんでしょうかね?」
老人は怪訝な表情で言う。事実無根の話ではあるが、現実としてエルフェリオンが帰ってくることがなく、ゲーブ自身が実力もあったため、その話を信じる者も少なくはなかった。
(どういうこった? 邪龍の餌になったんじゃなかったのか?)
ゲーブは脳裏に疑問符を浮かべていた。
5年前、流れ者だった彼は一攫千金を狙って邪龍の迷宮へと足を踏み入れた。そこで偶然にもルドアとギゼムの会話を聞き、その内容からエルフェリオンという人物が邪龍に生贄として捧げられたことを知る。その後、レバルフを訪れた際にエルフェリオンがスラムでは最強と目されているとの情報をつかんだ。ならば、そのエルフェリオンを倒したと公言したうえで裏稼業を請け負おうと一計を案じたのである。
むろん、レバルフの商人たちもいきなり現れた者の言うことを信用するはずはない。だが、ゲーブは元より腕っぷしの強い男だ。並の者など相手にもならないのはもちろん、豪商の護衛を務める者をも圧倒する実力を示せば、それなりの信用を得ることはできた。あとは、持ち込まれる闇の仕事を片付けていけばより大きな信用を得られる。
そうして、今ではレバルフへの通行許可証を持つまでになった。これは豪商や闇商人が公にはできないような仕事を依頼する際に呼び寄せるための物である。その通行許可証を偽造することで幾人かの部下に持たせた。こうしてレバルフの街に侵入させた者たちから様々な情報を仕入れることで人々の弱みなども握っている。
(せっかくここまでのし上がったきたんだ。今さらオイラの邪魔されてたまるかよ! いずれはこの街全体を支配してやるんだ!……ちょうどいいぜ。今度は本当にエルフェリオンをぶっ殺してやるまでだ!)
双眸に強烈な殺意をみなぎらせ、ゲーブはだれもいない窓の外を睨めつけた。
酒場ルコアールのバックヤードはゲーブが個人的に使用しているスペースである。大きなソファに腰を沈めたゲーブが報告にやってきた老人をギロリと睨む。
「あっしの記憶に間違いありません」
老人は5年前の記憶を呼び戻して断言する。
「しっかし、ゲーブの旦那に追い出されたあの野郎がどうして今さら戻ってきたんでしょうかね?」
老人は怪訝な表情で言う。事実無根の話ではあるが、現実としてエルフェリオンが帰ってくることがなく、ゲーブ自身が実力もあったため、その話を信じる者も少なくはなかった。
(どういうこった? 邪龍の餌になったんじゃなかったのか?)
ゲーブは脳裏に疑問符を浮かべていた。
5年前、流れ者だった彼は一攫千金を狙って邪龍の迷宮へと足を踏み入れた。そこで偶然にもルドアとギゼムの会話を聞き、その内容からエルフェリオンという人物が邪龍に生贄として捧げられたことを知る。その後、レバルフを訪れた際にエルフェリオンがスラムでは最強と目されているとの情報をつかんだ。ならば、そのエルフェリオンを倒したと公言したうえで裏稼業を請け負おうと一計を案じたのである。
むろん、レバルフの商人たちもいきなり現れた者の言うことを信用するはずはない。だが、ゲーブは元より腕っぷしの強い男だ。並の者など相手にもならないのはもちろん、豪商の護衛を務める者をも圧倒する実力を示せば、それなりの信用を得ることはできた。あとは、持ち込まれる闇の仕事を片付けていけばより大きな信用を得られる。
そうして、今ではレバルフへの通行許可証を持つまでになった。これは豪商や闇商人が公にはできないような仕事を依頼する際に呼び寄せるための物である。その通行許可証を偽造することで幾人かの部下に持たせた。こうしてレバルフの街に侵入させた者たちから様々な情報を仕入れることで人々の弱みなども握っている。
(せっかくここまでのし上がったきたんだ。今さらオイラの邪魔されてたまるかよ! いずれはこの街全体を支配してやるんだ!……ちょうどいいぜ。今度は本当にエルフェリオンをぶっ殺してやるまでだ!)
双眸に強烈な殺意をみなぎらせ、ゲーブはだれもいない窓の外を睨めつけた。
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