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第3章 5年後のレバルフ
3―11 エルフェリオンの決意
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ベグたちを迎え討った翌朝、ルートンの寝室を占拠したエルフェリオンが目覚めてベッドから下りたころにはすっかり明るくなっていた。窓から見える景色といってもゴミ山くらいであり、ただでさえ陰鬱とした気持ちを更に重くさせている。
「たく、アルナのやつ……」
木製の椅子に腰をおろし、テーブルに片肘をついたエルフェリオンが吐き捨てた。その時、扉が開いて本来の家主であるルートンが帰宅した。
「おっ、やっと目が覚めたのか。ほれ、朝飯だ」
ルートンがそう言って投げ渡したのは一切れのパンだった。次いで水の入った水筒も投げる。
それらをキャッチしたエルフェリオンはパンを一口かじって水筒の水を飲む。
「まぁ、その……おまえが詳しく話せねぇっつうんなら敢えて聞かないが、ゼイナスが死んだのには驚いたぜ。おまえほどではないにしろ、あいつもかなり強かったはずなんだがな。それに昨日の出来事だ。気味の悪い剣を使って戦うおまえは、オレの記憶にあったおまえより格段に強くなっていたぞ」
『ぬぅ……こやつまでわしを気味悪いとぬかすか』
信じ難いといった様子で言うルートンにレヴィジアルが殺意を抱く。だが、エルフェリオンと同化しているため何もできない。
「まっ、いろいろあったからな」
「おまえとゼイナスが揃っていなくなったのが、ついこの間のような気がするぜ……」
(俺にとっては本当にそうなんだが……)
エルフェリオンは、しみじみと語るルートンに心の中で相槌を打つ。
「ところで、これからどうするつもりなんだ?」
「旅に出る」
「旅だと!?」
ルートンは、予想もしていなかった返答に間の抜けた声をあげる。しかし、エルフェリオンはいたって真面目だった。
「なんだって、旅なんか?」
エルフェリオンはこれまで冒険や旅といったものには無関心であると思っていたルートンにとって、彼がなぜ旅を出る決意をしたのかは気になるところであった。
「……復讐だ」
憎悪を溶かし込んだ低い声で短く答えたエルフェリオンに対して、ルートンは息を呑む。
「……復讐って、相手はいったいだれなんだ?」
恐る恐る訊いたルートンをエルフェリオンのグリーンの瞳がじっと見つめる。
「俺とゼイナスを嵌めた奴らだ。その結果、ゼイナスは死んじまったわけだしな。報いを受けてもらう」
「本気、なんだな?」
「ああ、もちろんだ」
「……そうか。だが、気をつけろよ。無理はするな」
「サンキュー。けど、その前に……」
エルフェリオンはそこまで言うと席を立つ。
「おいおい、もう行くのか!?」
「いや、旅立つ前にやり残したことをすませておく」
「やり残したことだと? まさか、ゲーブたちをつぶすつもりなのか!?」
エルフェリオンはコクリと頷く。
「……まぁ、おまえならそう言うか」
「当然だ。俺を倒したなどと吹聴したことを後悔させてやらねぇとな」
それを聞いてルートンが口角をつり上げる。
「だったら、オレも参加させてもらうぜ! おまえにばかり任せるわけにゃいかねぇ。心配するな。足手まといになんぞなるかよ。なんたって、ゼイナスとは互角だったんだからな! ワハハハハハ!!」
エルフェリオンは、豪快に高笑いするルートンの前を素通りして表に出る。
「待て待て! オレを置いていくなっての!! それに、おまえはやつらの根城を知らねぇんじゃねぇのか?」
慌てて後を追いかけるルートンを尻目にエルフェリオンは歩みを止めない。
「ルコアールじゃねぇのか? このスラムでたまり場になりそうな場所といえばあそこだろ」
「むぐ……」
ズバリ言い当てられて言葉を詰まらせるルートン。
「ちょっと待ちな」
酒場ルコアールに向けて歩く二人に路地から声がかけられた。
「たく、アルナのやつ……」
木製の椅子に腰をおろし、テーブルに片肘をついたエルフェリオンが吐き捨てた。その時、扉が開いて本来の家主であるルートンが帰宅した。
「おっ、やっと目が覚めたのか。ほれ、朝飯だ」
ルートンがそう言って投げ渡したのは一切れのパンだった。次いで水の入った水筒も投げる。
それらをキャッチしたエルフェリオンはパンを一口かじって水筒の水を飲む。
「まぁ、その……おまえが詳しく話せねぇっつうんなら敢えて聞かないが、ゼイナスが死んだのには驚いたぜ。おまえほどではないにしろ、あいつもかなり強かったはずなんだがな。それに昨日の出来事だ。気味の悪い剣を使って戦うおまえは、オレの記憶にあったおまえより格段に強くなっていたぞ」
『ぬぅ……こやつまでわしを気味悪いとぬかすか』
信じ難いといった様子で言うルートンにレヴィジアルが殺意を抱く。だが、エルフェリオンと同化しているため何もできない。
「まっ、いろいろあったからな」
「おまえとゼイナスが揃っていなくなったのが、ついこの間のような気がするぜ……」
(俺にとっては本当にそうなんだが……)
エルフェリオンは、しみじみと語るルートンに心の中で相槌を打つ。
「ところで、これからどうするつもりなんだ?」
「旅に出る」
「旅だと!?」
ルートンは、予想もしていなかった返答に間の抜けた声をあげる。しかし、エルフェリオンはいたって真面目だった。
「なんだって、旅なんか?」
エルフェリオンはこれまで冒険や旅といったものには無関心であると思っていたルートンにとって、彼がなぜ旅を出る決意をしたのかは気になるところであった。
「……復讐だ」
憎悪を溶かし込んだ低い声で短く答えたエルフェリオンに対して、ルートンは息を呑む。
「……復讐って、相手はいったいだれなんだ?」
恐る恐る訊いたルートンをエルフェリオンのグリーンの瞳がじっと見つめる。
「俺とゼイナスを嵌めた奴らだ。その結果、ゼイナスは死んじまったわけだしな。報いを受けてもらう」
「本気、なんだな?」
「ああ、もちろんだ」
「……そうか。だが、気をつけろよ。無理はするな」
「サンキュー。けど、その前に……」
エルフェリオンはそこまで言うと席を立つ。
「おいおい、もう行くのか!?」
「いや、旅立つ前にやり残したことをすませておく」
「やり残したことだと? まさか、ゲーブたちをつぶすつもりなのか!?」
エルフェリオンはコクリと頷く。
「……まぁ、おまえならそう言うか」
「当然だ。俺を倒したなどと吹聴したことを後悔させてやらねぇとな」
それを聞いてルートンが口角をつり上げる。
「だったら、オレも参加させてもらうぜ! おまえにばかり任せるわけにゃいかねぇ。心配するな。足手まといになんぞなるかよ。なんたって、ゼイナスとは互角だったんだからな! ワハハハハハ!!」
エルフェリオンは、豪快に高笑いするルートンの前を素通りして表に出る。
「待て待て! オレを置いていくなっての!! それに、おまえはやつらの根城を知らねぇんじゃねぇのか?」
慌てて後を追いかけるルートンを尻目にエルフェリオンは歩みを止めない。
「ルコアールじゃねぇのか? このスラムでたまり場になりそうな場所といえばあそこだろ」
「むぐ……」
ズバリ言い当てられて言葉を詰まらせるルートン。
「ちょっと待ちな」
酒場ルコアールに向けて歩く二人に路地から声がかけられた。
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