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第6章 新米冒険者の日々
6―3 ギルドマスター ルアーク
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ティクの町の冒険者ギルドにある一室。応接室に通されたエルフェリオンとアルナはソファに腰を沈めている。目の前のテーブルにはティーカップが置かれ、紅茶から立ち上る湯気と香りがエルフェリオンとアルナの鼻腔をくすぐっていた。
コンコン……カチャリ
ノックする音に続いて開けられた扉から現れたのは緑色の髪と瞳の青年だった。スラリとした細身の長身で、年齢は30代前半といったところである。服装は動きやすさを重視しており、ティーシャツにジーパンで腰のベルトからは長剣を収めた鞘が提げられている。
「はじめまして。ボクはティクの冒険者ギルドのギルドマスターをしている者で、ルアークといいます」
ルアークは軽く会釈してからエルフェリオンたちの対面のソファに腰を下ろす。
「ギルドマスターってわりには随分と腰が低いんだな?」
「ちょっと、相手はギルドマスターなんだから言葉遣いに……」
エルフェリオンの態度を諌めようとするアルナをルアークが制止する。
「いえいえ、ボクは気にしませんよ。それに、冒険者ギルドは冒険者さんの活動をサポートするのが仕事です。つまり、冒険者さんなくして我々の業務は成立しません。冒険者さんがあってこその冒険者ギルドだと考えています」
微笑しながら自らの考えを話すルアーク。
「ところで、お二人はジャイアントモールを討伐されたとお聞きしたのですが、間違いはありませんか?」
「いえ、実は……」
ルアークに訊かれたアルナは、共にジャイアントモールを討伐したハオウのことを話す。
「なるほど。つまり、お二人だけでジャイアントモールを討伐したわけではないというのですね?」
「はい」
ルアークに確認されてアルナは肯定する。
「だとしても、たった3人でジャイアントモールを討伐できたというのはすごいです。普通は複数のパーティーで共同戦線を張って討伐するものですからね」
『あの程度のモンスターに多勢で立ち向かわねばならぬとは、人間とは脆弱な生き物じゃのぉ』
(好き勝手言いやがる)
自分だけにしか聞こえないレヴィジアルの言葉に、エルフェリオンは内心で反論する。
「んで、そんなことを確かめるためだけに呼んだわけじゃねぇんだよな?」
エルフェリオンは本題に進むように促す。
「実は、お二人の実力を見込んで依頼したい件があるのです。しかし、その前にテストを実施したく思います」
「テストだと?」
不快感をあらわにするエルフェリオンに、ルアークはコクリと頷く。
「あなたがたを疑うようで、大変失礼なのは重々承知しております。ですが、だれにでも任せられるような案件ではないことをご理解いただきたい」
ルアークの毅然とした態度にエルフェリオンはフッと笑みをこぼす。
「さすがはギルドマスターだ。ただ相手の顔色を伺っているだけの奴とは違うか。まっ、それも当然といえば当然だがな」
「もぉ、エルフェリオンってば……」
エルフェリオンの隣でアルナが深いため息を吐く。
「それで、テストは受けてもらえますか? ギルドからの依頼の詳細はテストに合格してからお話しいたします。こちらにもいろいろと事情がありまして申し訳ありません」
「詳細を聞いてから断ることもできるのか?」
エルフェリオンに訊かれ、ルアークは少し困ったような表情をする。
「そう、ですね。なるべくは引き受けていただきたいのですが、どうしても無理だとおっしゃられるのであれば、しかたありません。しかし、依頼内容の一切について他言無用でお願いいたします」
回答するルアークの緑の瞳がアルナとエルフェリオンをじっと見つめる。
「わかりました。ねぇ、とりあえずはテストを受けてみましょうよ」
「しょうがねぇか。俺たちの目的を果たすためにも先立つものは必要だからな」
アルナとエルフェリオンはテストを受けることを決めた。
コンコン……カチャリ
ノックする音に続いて開けられた扉から現れたのは緑色の髪と瞳の青年だった。スラリとした細身の長身で、年齢は30代前半といったところである。服装は動きやすさを重視しており、ティーシャツにジーパンで腰のベルトからは長剣を収めた鞘が提げられている。
「はじめまして。ボクはティクの冒険者ギルドのギルドマスターをしている者で、ルアークといいます」
ルアークは軽く会釈してからエルフェリオンたちの対面のソファに腰を下ろす。
「ギルドマスターってわりには随分と腰が低いんだな?」
「ちょっと、相手はギルドマスターなんだから言葉遣いに……」
エルフェリオンの態度を諌めようとするアルナをルアークが制止する。
「いえいえ、ボクは気にしませんよ。それに、冒険者ギルドは冒険者さんの活動をサポートするのが仕事です。つまり、冒険者さんなくして我々の業務は成立しません。冒険者さんがあってこその冒険者ギルドだと考えています」
微笑しながら自らの考えを話すルアーク。
「ところで、お二人はジャイアントモールを討伐されたとお聞きしたのですが、間違いはありませんか?」
「いえ、実は……」
ルアークに訊かれたアルナは、共にジャイアントモールを討伐したハオウのことを話す。
「なるほど。つまり、お二人だけでジャイアントモールを討伐したわけではないというのですね?」
「はい」
ルアークに確認されてアルナは肯定する。
「だとしても、たった3人でジャイアントモールを討伐できたというのはすごいです。普通は複数のパーティーで共同戦線を張って討伐するものですからね」
『あの程度のモンスターに多勢で立ち向かわねばならぬとは、人間とは脆弱な生き物じゃのぉ』
(好き勝手言いやがる)
自分だけにしか聞こえないレヴィジアルの言葉に、エルフェリオンは内心で反論する。
「んで、そんなことを確かめるためだけに呼んだわけじゃねぇんだよな?」
エルフェリオンは本題に進むように促す。
「実は、お二人の実力を見込んで依頼したい件があるのです。しかし、その前にテストを実施したく思います」
「テストだと?」
不快感をあらわにするエルフェリオンに、ルアークはコクリと頷く。
「あなたがたを疑うようで、大変失礼なのは重々承知しております。ですが、だれにでも任せられるような案件ではないことをご理解いただきたい」
ルアークの毅然とした態度にエルフェリオンはフッと笑みをこぼす。
「さすがはギルドマスターだ。ただ相手の顔色を伺っているだけの奴とは違うか。まっ、それも当然といえば当然だがな」
「もぉ、エルフェリオンってば……」
エルフェリオンの隣でアルナが深いため息を吐く。
「それで、テストは受けてもらえますか? ギルドからの依頼の詳細はテストに合格してからお話しいたします。こちらにもいろいろと事情がありまして申し訳ありません」
「詳細を聞いてから断ることもできるのか?」
エルフェリオンに訊かれ、ルアークは少し困ったような表情をする。
「そう、ですね。なるべくは引き受けていただきたいのですが、どうしても無理だとおっしゃられるのであれば、しかたありません。しかし、依頼内容の一切について他言無用でお願いいたします」
回答するルアークの緑の瞳がアルナとエルフェリオンをじっと見つめる。
「わかりました。ねぇ、とりあえずはテストを受けてみましょうよ」
「しょうがねぇか。俺たちの目的を果たすためにも先立つものは必要だからな」
アルナとエルフェリオンはテストを受けることを決めた。
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