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第6章 新米冒険者の日々
6―9 アルナの決意
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「ん?」
宿屋に戻ってきたエルフェリオンは、部屋の前で待っていたアルナに気付いて足を止める。時刻は門限ギリギリの23時前だ。
「どうした? 何か用か?」
エルフェリオンが訊く。アルナは暫しの沈黙のあと、決意したように顔を上げる。
「あたしも戦うわ! だって、このまま泣き寝入りなんて悔しすぎるもの」
アルナの固い決意にエルフェリオンはフッと笑みをこぼす。
「なら、さっさと寝るんだな。放浪者のランクをさっさと上げなきゃ話にもならねぇ」
「言われなくても寝るわよ。あんたにあたしの決断を伝えようと思って待ってたんじゃない。そもそも、こんな時間までどこに行ってたわけ?」
「冒険者ギルドだ。あそこの演習場を使って訓練でもできねぇかと思ってさ」
「なるほどね。それで、思うような成果はあったの?」
アルナに訊かれてエルフェリオンは首を横に振る。
「自分の未熟さを思い知らされたぜ。まずはルアークに俺たちの実力を認めさせてやる。それくらい軽くできねぇと、あいつらには絶対に勝てねぇからな」
エルフェリオンからの返答にアルナは納得したように頷く。
「そっか。そういう事だったのね」
「そういう事だったって、なにがだよ?」
アルナはクスリと笑って続ける。
「あんたがルアークさんの提案に素直に乗ったのもそうだけど、テストに落ちたあとも真面目に冒険者ランクを上げるなんて意外な気がしてたの。あんたのことだから、こんなところで立ち止まってるわけにはいかない、とか言い出しそうじゃない。でも、ちゃんと考えてたのね。見直したわ」
「随分と失礼なことを言ってくれるじゃねぇかよ」
「あら、褒めてあげてるんでしょ」
「言ってろ」
互いに微笑む二人。
「さぁて、そうと決まれば明日からは依頼をガンガンこなしていくぞ」
「あ~ら、初日はあたしの勝ちだったのをもう忘れたのかしら?」
「ぐっ……」
ドヤ顔でエルフェリオンを見るアルナ。言葉を詰まらせた青髪の青年は不快感を顔面に張り付かせる。が、すぐにいつもの不敵な笑みを浮かべた。
「初日くらいは花を持たせてやっただけさ。明日からは俺が勝たせてもらうぜ」
「ふ~ん、お優しいことね。どうもありがとう。でも、その言い訳はもう通じないわよ? 新しい言い訳でも考えておいたほうがいいんじゃないのかしらぁ?」
アルナも負けてはいない。二人は深夜の廊下でバチバチと火花を散らす。
「上等だ。俺が先に冒険者ランクが上がっても僻むなよ?」
「それはこっちのセリフよ。そうと決まればもう寝るわ」
アルナは自室の部屋の扉に手をかけて入っていく。その姿にエルフェリオンはフンと鼻を鳴らすのだった。
宿屋に戻ってきたエルフェリオンは、部屋の前で待っていたアルナに気付いて足を止める。時刻は門限ギリギリの23時前だ。
「どうした? 何か用か?」
エルフェリオンが訊く。アルナは暫しの沈黙のあと、決意したように顔を上げる。
「あたしも戦うわ! だって、このまま泣き寝入りなんて悔しすぎるもの」
アルナの固い決意にエルフェリオンはフッと笑みをこぼす。
「なら、さっさと寝るんだな。放浪者のランクをさっさと上げなきゃ話にもならねぇ」
「言われなくても寝るわよ。あんたにあたしの決断を伝えようと思って待ってたんじゃない。そもそも、こんな時間までどこに行ってたわけ?」
「冒険者ギルドだ。あそこの演習場を使って訓練でもできねぇかと思ってさ」
「なるほどね。それで、思うような成果はあったの?」
アルナに訊かれてエルフェリオンは首を横に振る。
「自分の未熟さを思い知らされたぜ。まずはルアークに俺たちの実力を認めさせてやる。それくらい軽くできねぇと、あいつらには絶対に勝てねぇからな」
エルフェリオンからの返答にアルナは納得したように頷く。
「そっか。そういう事だったのね」
「そういう事だったって、なにがだよ?」
アルナはクスリと笑って続ける。
「あんたがルアークさんの提案に素直に乗ったのもそうだけど、テストに落ちたあとも真面目に冒険者ランクを上げるなんて意外な気がしてたの。あんたのことだから、こんなところで立ち止まってるわけにはいかない、とか言い出しそうじゃない。でも、ちゃんと考えてたのね。見直したわ」
「随分と失礼なことを言ってくれるじゃねぇかよ」
「あら、褒めてあげてるんでしょ」
「言ってろ」
互いに微笑む二人。
「さぁて、そうと決まれば明日からは依頼をガンガンこなしていくぞ」
「あ~ら、初日はあたしの勝ちだったのをもう忘れたのかしら?」
「ぐっ……」
ドヤ顔でエルフェリオンを見るアルナ。言葉を詰まらせた青髪の青年は不快感を顔面に張り付かせる。が、すぐにいつもの不敵な笑みを浮かべた。
「初日くらいは花を持たせてやっただけさ。明日からは俺が勝たせてもらうぜ」
「ふ~ん、お優しいことね。どうもありがとう。でも、その言い訳はもう通じないわよ? 新しい言い訳でも考えておいたほうがいいんじゃないのかしらぁ?」
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