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第6章 新米冒険者の日々
6―10 ザラギス、発つ
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翌日。朝食をすませたエルフェリオンとアルナは揃って冒険者ギルドに顔を出す。
「おぉい、エルフェリオン!」
ギルド内の飲食スペースの一角から大声がかかる。聞き覚えのあるそれに反応したエルフェリオンが視線を流す。そこには黒髪とオレンジ色の瞳を持った巨漢が太い腕を上げていた。
「だれ?」
アルナにとっては見覚えのない顔であったため、隣の相棒に訊く。
「B級冒険者のザラギスだ。俺の最初の通過点といったところだな」
「おいこら! だれが通過点だ!?」
ザラギスはエルフェリオンの呟きに反論する。
「うそ! どうして聞こえるの!?」
驚嘆の声を発したアルナにザラギスはニッと笑む。
「読唇術だ。冒険者ならできておいたほうがなにかと便利だぞ」
壁に立て掛けてあった大鎚を持って席を立ち、ズカズカと近付いてきたザラギスがエルフェリオンの肩に手を置く。
「朝早くから依頼を受けにきたのか? 感心感心! その調子で頑張れよ、新人!!」
ガハハと豪快な笑い声をあげ、エルフェリオンの背中を不遠慮にバンバンと叩く。
「さぁて。オラは一足先に行くとするか」
「仕事か?」
「ああ、討伐依頼だ。つっても相手はモンスターじゃねぇぞ。なんでも狼の群れがバフュム村って所に現れたらしくてよ。そんで、家畜を喰らってるから駆除してほしいそうだ」
「その村には冒険者ギルドはないんですか?」
アルナの質問にザラギスは「うーん」と唸る。
「それなんだよなぁ。たしかにバフュム村にも冒険者ギルドはあるんだがよ、普段は農作業や家事の手伝いといった雑用依頼ばかりでな。だから、今回のような討伐依頼にはどうにも不慣れなんだそうだ。そんで、こっちに応援要請がきたってわけさ」
「その村にだってB級冒険者はいるだろ?」
ザラギスが返した答えにエルフェリオンが疑問を口にする。
「いるにはいるが、普段から雑用ばかりで数をこなしただけのB級じゃどうにもならねぇだろ。流れの冒険者なら対処できるやつもいるが、そういった連中はそんな村には寄り付かないからな」
「それで、あんたが行くわけか」
「ああ。ギルドマスターから直々に頼まれちゃ断れないからな」
「ルアークからだと? それじゃ、あいつが俺たちをテストしたのは……」
エルフェリオンが言い終わる前にザラギスは「いや」と否定する。
「それとは別件だ。しかし、うちのギルドとしても応援要請に応えたからには失敗しちゃ面目丸つぶれだからな。確実に達成できる実力者としてオラに白羽の矢が立ったってことさ」
ザラギスの言葉にエルフェリオンは納得する。たしかに、彼の戦闘能力ならば狼に遅れを取ることはないように思われた。
「とはいえだ。数日間は帰ってこれないかもしれん。それまでせいぜい精進しておくことだな!」
最後にニカッと笑い、ザラギスはギルドを出ていくのだった。
「おぉい、エルフェリオン!」
ギルド内の飲食スペースの一角から大声がかかる。聞き覚えのあるそれに反応したエルフェリオンが視線を流す。そこには黒髪とオレンジ色の瞳を持った巨漢が太い腕を上げていた。
「だれ?」
アルナにとっては見覚えのない顔であったため、隣の相棒に訊く。
「B級冒険者のザラギスだ。俺の最初の通過点といったところだな」
「おいこら! だれが通過点だ!?」
ザラギスはエルフェリオンの呟きに反論する。
「うそ! どうして聞こえるの!?」
驚嘆の声を発したアルナにザラギスはニッと笑む。
「読唇術だ。冒険者ならできておいたほうがなにかと便利だぞ」
壁に立て掛けてあった大鎚を持って席を立ち、ズカズカと近付いてきたザラギスがエルフェリオンの肩に手を置く。
「朝早くから依頼を受けにきたのか? 感心感心! その調子で頑張れよ、新人!!」
ガハハと豪快な笑い声をあげ、エルフェリオンの背中を不遠慮にバンバンと叩く。
「さぁて。オラは一足先に行くとするか」
「仕事か?」
「ああ、討伐依頼だ。つっても相手はモンスターじゃねぇぞ。なんでも狼の群れがバフュム村って所に現れたらしくてよ。そんで、家畜を喰らってるから駆除してほしいそうだ」
「その村には冒険者ギルドはないんですか?」
アルナの質問にザラギスは「うーん」と唸る。
「それなんだよなぁ。たしかにバフュム村にも冒険者ギルドはあるんだがよ、普段は農作業や家事の手伝いといった雑用依頼ばかりでな。だから、今回のような討伐依頼にはどうにも不慣れなんだそうだ。そんで、こっちに応援要請がきたってわけさ」
「その村にだってB級冒険者はいるだろ?」
ザラギスが返した答えにエルフェリオンが疑問を口にする。
「いるにはいるが、普段から雑用ばかりで数をこなしただけのB級じゃどうにもならねぇだろ。流れの冒険者なら対処できるやつもいるが、そういった連中はそんな村には寄り付かないからな」
「それで、あんたが行くわけか」
「ああ。ギルドマスターから直々に頼まれちゃ断れないからな」
「ルアークからだと? それじゃ、あいつが俺たちをテストしたのは……」
エルフェリオンが言い終わる前にザラギスは「いや」と否定する。
「それとは別件だ。しかし、うちのギルドとしても応援要請に応えたからには失敗しちゃ面目丸つぶれだからな。確実に達成できる実力者としてオラに白羽の矢が立ったってことさ」
ザラギスの言葉にエルフェリオンは納得する。たしかに、彼の戦闘能力ならば狼に遅れを取ることはないように思われた。
「とはいえだ。数日間は帰ってこれないかもしれん。それまでせいぜい精進しておくことだな!」
最後にニカッと笑い、ザラギスはギルドを出ていくのだった。
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