102 / 224
第6章 新米冒険者の日々
6―13 遥かなる高み
しおりを挟む
ラナリとテシアの護衛依頼から数日。エルフェリオンとアルナは、冒険者ギルドに持ち込まれる雑用依頼をこなす日々を送っていた。
冒険者ギルドの演習場での実戦形式の自主訓練はエルフェリオンの日課となりつつあり、今ではティクの町のC級冒険者では相手にならなくなっている。この日もB級冒険者を相手に互角以上の戦いっぷりを披露していた。
「ふふふふ、戦闘能力だけをみれば充分にB級といえそうですね。あとは実績ですが、エルフェリオン君もアルナさんもギルドに持ち込まれる依頼を精力的にこなしていってくれてますので、近いうちにB級への昇格を果たせそうですね」
冒険者たちの自主訓練の様子を視察していたルアークがエルフェリオンに話しかける。
「あんたか。まだまだだ。今のままじゃ俺の目的は果たせねぇよ。ところで、あんたの冒険者ランクはどれくらいなんだよ?」
エルフェリオンは、ふと脳裏によぎった疑問をぶつける。
「今はギルドマスターをしておりますのでランクといったものはありませんが、現役のころはA級でした」
(ルアークほどの実力者でもA級なのか……俺の戦闘能力がB級相当だとしてもランクが一つ違えば雲泥の差だな)
エルフェリオンの心中を察したルアークがクスリと笑う。
「世の中は広いです。ボクなんかよりもずっと強い冒険者なんていくらでもいますよ。そして、エルフェリオン君だってすぐにボクを超えることになるでしょうね」
「……なぁ、龍滅の戦神って知ってるか?」
エルフェリオンからの唐突の質問にルアークは一拍おいて答える。
「もちろん知っています。というか、冒険者で龍滅の戦神を知らない者はいないというべきでしょうか。それがどうかしましたか?」
「……いや、ただちょっと気になっただけだ。ちなみにギゼムやルドアの冒険者ランクはどれくらいなんだ?」
真剣な眼差しを向けてくるエルフェリオンに、ルアークは「ふむ」と声を漏らして答える。
「直接面識はないので正確なことはわかりませんが、S級だと聞いた覚えがあります。彼らがB級冒険者だったころに邪龍の迷宮の未踏破エリアを発見して邪龍を倒したといわれています」
『おのれ……ワシがあの程度の小物に敗れるわけがなかろうが!』
ルアークの言葉にレヴィジアルは憤慨する。だが、それに答える者など誰ひとりいない。
「その邪龍討伐の際、ギゼム殿とルドア殿に憧れを抱き、同行を願い出たレバルフの若者二人が犠牲になったそうで、ルドア殿もギゼム殿も心を痛めたと聞きます」
(心を痛めただと? 自分たちが嵌めておいてよく言うぜ!)
ルアークは、エルフェリオンが無意識に握りしめた拳と翡翠色の瞳に宿った鋭い光を見逃さなかった。だが、彼はあえて何も問わない。
「そのS級が冒険者としては最高ランクなのか?」
「いいえ。その上にはSS級とSSS級が存在します。ですが、実質的にはSS級まで昇級できる者は全冒険者のなかでもほんの一握りであり、SSS級になれた者はいないとされています」
(ギゼムやルドアはS級か。やっぱ、今の俺じゃ太刀打ちできる相手じゃねぇのは間違いないな)
「おっ、いたいた!」
演習場へとやってきた男が、苦々しい思いで表情をゆがめるエルフェリオンに声をかけて近付いてきた。
冒険者ギルドの演習場での実戦形式の自主訓練はエルフェリオンの日課となりつつあり、今ではティクの町のC級冒険者では相手にならなくなっている。この日もB級冒険者を相手に互角以上の戦いっぷりを披露していた。
「ふふふふ、戦闘能力だけをみれば充分にB級といえそうですね。あとは実績ですが、エルフェリオン君もアルナさんもギルドに持ち込まれる依頼を精力的にこなしていってくれてますので、近いうちにB級への昇格を果たせそうですね」
冒険者たちの自主訓練の様子を視察していたルアークがエルフェリオンに話しかける。
「あんたか。まだまだだ。今のままじゃ俺の目的は果たせねぇよ。ところで、あんたの冒険者ランクはどれくらいなんだよ?」
エルフェリオンは、ふと脳裏によぎった疑問をぶつける。
「今はギルドマスターをしておりますのでランクといったものはありませんが、現役のころはA級でした」
(ルアークほどの実力者でもA級なのか……俺の戦闘能力がB級相当だとしてもランクが一つ違えば雲泥の差だな)
エルフェリオンの心中を察したルアークがクスリと笑う。
「世の中は広いです。ボクなんかよりもずっと強い冒険者なんていくらでもいますよ。そして、エルフェリオン君だってすぐにボクを超えることになるでしょうね」
「……なぁ、龍滅の戦神って知ってるか?」
エルフェリオンからの唐突の質問にルアークは一拍おいて答える。
「もちろん知っています。というか、冒険者で龍滅の戦神を知らない者はいないというべきでしょうか。それがどうかしましたか?」
「……いや、ただちょっと気になっただけだ。ちなみにギゼムやルドアの冒険者ランクはどれくらいなんだ?」
真剣な眼差しを向けてくるエルフェリオンに、ルアークは「ふむ」と声を漏らして答える。
「直接面識はないので正確なことはわかりませんが、S級だと聞いた覚えがあります。彼らがB級冒険者だったころに邪龍の迷宮の未踏破エリアを発見して邪龍を倒したといわれています」
『おのれ……ワシがあの程度の小物に敗れるわけがなかろうが!』
ルアークの言葉にレヴィジアルは憤慨する。だが、それに答える者など誰ひとりいない。
「その邪龍討伐の際、ギゼム殿とルドア殿に憧れを抱き、同行を願い出たレバルフの若者二人が犠牲になったそうで、ルドア殿もギゼム殿も心を痛めたと聞きます」
(心を痛めただと? 自分たちが嵌めておいてよく言うぜ!)
ルアークは、エルフェリオンが無意識に握りしめた拳と翡翠色の瞳に宿った鋭い光を見逃さなかった。だが、彼はあえて何も問わない。
「そのS級が冒険者としては最高ランクなのか?」
「いいえ。その上にはSS級とSSS級が存在します。ですが、実質的にはSS級まで昇級できる者は全冒険者のなかでもほんの一握りであり、SSS級になれた者はいないとされています」
(ギゼムやルドアはS級か。やっぱ、今の俺じゃ太刀打ちできる相手じゃねぇのは間違いないな)
「おっ、いたいた!」
演習場へとやってきた男が、苦々しい思いで表情をゆがめるエルフェリオンに声をかけて近付いてきた。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる