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第10章 元処刑場の戦い
10―9 ジャイガスの願い
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「手荒な真似をしてすまないね。実は君たちを試させてもらったのだ」
ジャイガスは、霊気を使って家具を元の位置に戻しながら謝罪する。だが、戦闘において破壊された本棚などはそのまま放置されている。
「まぁ、立ち話もなんだ。座りなさい」
先刻までの殺気はどこへやら。すっかり穏やかになったジャイガスが床に腰を落とし、エルフェリオンとアルナには破壊を免れた椅子を勧める。
『さてさて、なにを企んでおるかのぉ? 油断させておいたところをいきなり金縛り、かのぉ?』
レヴィジアルは疑念を口にする。アルナもどうしたものかと困惑している様子だ。そんななか、エルフェリオンだけはフッと笑う。
邪龍武具をしまうとジャイガスの対面の椅子に座る。
「エルフェリオン?」
聖杖を構えたままのアルナがパートナーの大胆な行動に声をあげる。
「俺だって、このおっさんのことを信用したわけじゃねぇよ。もしも、妙な真似をしやがったら斬る。だが、最後に話くらいは聞いてやるさ」
武器をしまい、先ほどまで死闘を繰り広げていた相手の前に座る青年の大胆さには、ジャイガスも驚いたような表情を見せていた。
「あん? おまえが座るように言ったんだろうが。なにを驚いてんだ?」
エメラルドグリーンの瞳にゴーストを映して言うエルフェリオンに、ジャイガスが声をあげて笑う。
「わはははははははは! たしかにそうだな。しかし、着席を促しておいて言えたことではないが、君も相当な変わり者だな?」
「けっ、大声をあげて笑うゴーストに言われたかねぇな」
『こやつら、バカ者同士かのぉ?』
エルフェリオンの内で邪龍が呆れたように呟く。
「それで、なんの話をするつもりなのよ?」
アルナは、着席はせずに聖杖を構えたままで訊く。
「ふむ、そうだな……さっきも言ったが、君たちを試させてもらったのだ。あいつを止めるだけの力を持っているかどうかを、ね」
「あいつって、だれのことだ? 勿体振らずに言えよ」
エルフェリオンに促されてジャイガスは一拍置いて話し始める。
「あいつとは、この処刑場で処刑執行人を務めていたマイザムという者だ。そして、私を含めた処刑場の者を皆殺しにした張本人でもある」
ジャイガスからもたらされた情報にアルナは絶句する。
「そいつはまだ生きてるのか?」
エルフェリオンは冷静に話を掘り下げる。
「……いや、この施設の者全員を殺害後に自決したようだ……」
重苦しい空気が支配する僅かな沈黙のあと、エルフェリオンが口を開く。
「そのマイザムってやつはどこにいる?」
「今もこの処刑場にいる。大斧を持ったスケルトンがマイザムだ」
ジャイガスから得た情報にエルフェリオンとアルナは互いに視線を交わす。断頭台に立っていたスケルトンはたしかに両手用大斧を手にしていた。
「……もしかして、君たちはマイザムを見たのかね?」
二人の様子から悟ったジャイガスが確認する。
「ああ、断頭台のところでな。だったら話は早い。俺たちの目的はこの施設にいるウォリアー級スケルトンの討伐だ。そのマイザムってやつがターゲットで間違いないだろう」
エルフェリオンが答えると、ジャイガスが首肯を返す。
「なるほど。それで、マイザムはどこへ?」
「裏口から施設内へ入ったから、たぶんまだ建物内のどこかじゃないかしら」
今度はアルナが答える。それを聞いたジャイガスは「ふむ……」と口元に手を当てる。
「……ならば、地下墓地にいるはずだ。1階から階段を降りていき、地下牢を抜けてさらに階段を降りた先にあるのが地下墓地だ。そこはマイザムが自決した場所でもある」
「そうか。そんじゃ、その地下墓地とやらへ行くとするか」
ターゲットの居場所に関して有力情報を得たエルフェリオンが席を立ち、部屋を出ようと歩き出す。
「冒険パーティ放浪者とかいったな。この私すらも超える能力を持つマイザムを倒すのは容易ではないだろう。しかし、どうかマイザムを倒し、助けてやってくれ!」
ジャイガスの切なる願いを背中に聞きながら、冒険パーティ放浪者は所長室をあとにした。
ジャイガスは、霊気を使って家具を元の位置に戻しながら謝罪する。だが、戦闘において破壊された本棚などはそのまま放置されている。
「まぁ、立ち話もなんだ。座りなさい」
先刻までの殺気はどこへやら。すっかり穏やかになったジャイガスが床に腰を落とし、エルフェリオンとアルナには破壊を免れた椅子を勧める。
『さてさて、なにを企んでおるかのぉ? 油断させておいたところをいきなり金縛り、かのぉ?』
レヴィジアルは疑念を口にする。アルナもどうしたものかと困惑している様子だ。そんななか、エルフェリオンだけはフッと笑う。
邪龍武具をしまうとジャイガスの対面の椅子に座る。
「エルフェリオン?」
聖杖を構えたままのアルナがパートナーの大胆な行動に声をあげる。
「俺だって、このおっさんのことを信用したわけじゃねぇよ。もしも、妙な真似をしやがったら斬る。だが、最後に話くらいは聞いてやるさ」
武器をしまい、先ほどまで死闘を繰り広げていた相手の前に座る青年の大胆さには、ジャイガスも驚いたような表情を見せていた。
「あん? おまえが座るように言ったんだろうが。なにを驚いてんだ?」
エメラルドグリーンの瞳にゴーストを映して言うエルフェリオンに、ジャイガスが声をあげて笑う。
「わはははははははは! たしかにそうだな。しかし、着席を促しておいて言えたことではないが、君も相当な変わり者だな?」
「けっ、大声をあげて笑うゴーストに言われたかねぇな」
『こやつら、バカ者同士かのぉ?』
エルフェリオンの内で邪龍が呆れたように呟く。
「それで、なんの話をするつもりなのよ?」
アルナは、着席はせずに聖杖を構えたままで訊く。
「ふむ、そうだな……さっきも言ったが、君たちを試させてもらったのだ。あいつを止めるだけの力を持っているかどうかを、ね」
「あいつって、だれのことだ? 勿体振らずに言えよ」
エルフェリオンに促されてジャイガスは一拍置いて話し始める。
「あいつとは、この処刑場で処刑執行人を務めていたマイザムという者だ。そして、私を含めた処刑場の者を皆殺しにした張本人でもある」
ジャイガスからもたらされた情報にアルナは絶句する。
「そいつはまだ生きてるのか?」
エルフェリオンは冷静に話を掘り下げる。
「……いや、この施設の者全員を殺害後に自決したようだ……」
重苦しい空気が支配する僅かな沈黙のあと、エルフェリオンが口を開く。
「そのマイザムってやつはどこにいる?」
「今もこの処刑場にいる。大斧を持ったスケルトンがマイザムだ」
ジャイガスから得た情報にエルフェリオンとアルナは互いに視線を交わす。断頭台に立っていたスケルトンはたしかに両手用大斧を手にしていた。
「……もしかして、君たちはマイザムを見たのかね?」
二人の様子から悟ったジャイガスが確認する。
「ああ、断頭台のところでな。だったら話は早い。俺たちの目的はこの施設にいるウォリアー級スケルトンの討伐だ。そのマイザムってやつがターゲットで間違いないだろう」
エルフェリオンが答えると、ジャイガスが首肯を返す。
「なるほど。それで、マイザムはどこへ?」
「裏口から施設内へ入ったから、たぶんまだ建物内のどこかじゃないかしら」
今度はアルナが答える。それを聞いたジャイガスは「ふむ……」と口元に手を当てる。
「……ならば、地下墓地にいるはずだ。1階から階段を降りていき、地下牢を抜けてさらに階段を降りた先にあるのが地下墓地だ。そこはマイザムが自決した場所でもある」
「そうか。そんじゃ、その地下墓地とやらへ行くとするか」
ターゲットの居場所に関して有力情報を得たエルフェリオンが席を立ち、部屋を出ようと歩き出す。
「冒険パーティ放浪者とかいったな。この私すらも超える能力を持つマイザムを倒すのは容易ではないだろう。しかし、どうかマイザムを倒し、助けてやってくれ!」
ジャイガスの切なる願いを背中に聞きながら、冒険パーティ放浪者は所長室をあとにした。
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