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第11章 レッドレオとブルータイガー
11―6 さらわれたテシア
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「さぁて、テシアはどこにいるのか吐いてもらおうか? 一応は忠告しておくが、黙秘は身のためにならないぜ?」
エメラルドグリーンの瞳が鋭い眼光を宿す。
「わかっとるわい。テシアはわしの別宅に監禁しておる。むろん、危害は加えとらん」
オグリスは力なく答える。
「そんじゃあ、その別宅とやらに案内しろ。これもわかっているだろうが妙な真似はするなよ?」
エルフェリオンに釘を差されたオグリスは黙って歩きだした。
◎★☆◎
エルフェリオンたちを連れて先導してきたオグリスは、貧民街の中央付近にある陋屋だった。
「ここがあんたの別宅か? それにしては随分と見すぼらしいんじゃないか?」
怪訝な表情を浮かべて疑問を口にするエルフェリオンに、オグリスに代わりラナリが答える。
「たしかにここは父の隠れ家です。何度か訪れた記憶がありますから。外観はこれでも中はちゃんとしているはず」
ラナリの証言にエルフェリオンはひとまず信用する。が、邪龍槍は引っ込めない。
「そうか。だったら、さっさと中へ入ってテシアがいる部屋まで案内しろよ」
未だ警戒心を緩める気配を全く見せないエルフェリオンにオグリスは観念したように肩を落とす。
「くっ、ラナリを上手く使ってティクを牛耳ようというわしの野望もここまでか!」
ゴンッ
「ぬがっ!」
「実の娘を道具みたいに使ってんじゃないわよ」
アルナは、愚痴りつつも前を歩くオグリスの後頭部を聖杖で小突く。
「……ぬぅぅぅっ、調子に乗りおってぇぇ……」
アルナを恨めしそうに睨むオグリスだが、それ以上のことをすることができず、諦めて前方に視線を戻す。
「ほれ、この部屋じゃ。さっさと入って勝手に連れて行くがよい! これで文句ないじゃろうが」
オグリスは懐から取り出した鍵を鍵穴に挿し込み、解錠して開ける。
「テシア!!」
ラナリが部屋へと駆け込もうとする。だが、エルフェリオンはそれを手をかざして制止する。
「エルフェリオンさん!?」
エルフェリオンの行動の意味がわからず、困惑した表情をするラナリ。
「そう慌てるなよ」
言いつつ、エルフェリオンは扉脇の壁にもたれかかっていたオグリスの襟首を掴む。
「おいこら、この子供、なにをする!?」
オグリスはエルフェリオンから逃れようとするが、それもうまくいかない。
「なにをするかだって? んなの決まってんだろ。あんたが先に入るんだよ」
エルフェリオンはジタバタと暴れるオグリスを室内へと放り込む。
バンッ
「ひぃぃぃぃやぁぁぁぁっ!!」
エルフェリオンによって投げ込まれた瞬間、足元の床が開いて悲鳴をあげながら落下していくオグリス。
「最低ね、あいつ……」
アルナはオグリスが落下した穴を見つめて呟く。その隣ではラナリが盛大なため息をついていた。
「んじゃ、俺たちも入るとするか」
念の為に警戒しながら、エルフェリオンが先行して部屋へと入る。
「テシア!? どこなの、返事をして!! テシア!!?」
続いてアルナとともに入ってきたラナリは、愛娘の姿がないことに狼狽する。
「これは……」
アルナは壁に貼られた一枚の紙に目を留めて表情を険しくする。
「……ちっ、くだらねぇ罠を張ってたわりに、あっさりとさらわれてるじゃねぇかよ」
アルナの手の中にあるその紙に視線を落としたエルフェリオンが舌打ちする。
《テシアは返してもらう。文句があるならば地下街へ来い。ブルータイガー ルーニアン》
「あの~、このルーニアンってもしかして?」
アルナがラナリに訊く。
「……テシアの父親です……」
答えたラナリは申し訳なさそうに頭を下げた。
エメラルドグリーンの瞳が鋭い眼光を宿す。
「わかっとるわい。テシアはわしの別宅に監禁しておる。むろん、危害は加えとらん」
オグリスは力なく答える。
「そんじゃあ、その別宅とやらに案内しろ。これもわかっているだろうが妙な真似はするなよ?」
エルフェリオンに釘を差されたオグリスは黙って歩きだした。
◎★☆◎
エルフェリオンたちを連れて先導してきたオグリスは、貧民街の中央付近にある陋屋だった。
「ここがあんたの別宅か? それにしては随分と見すぼらしいんじゃないか?」
怪訝な表情を浮かべて疑問を口にするエルフェリオンに、オグリスに代わりラナリが答える。
「たしかにここは父の隠れ家です。何度か訪れた記憶がありますから。外観はこれでも中はちゃんとしているはず」
ラナリの証言にエルフェリオンはひとまず信用する。が、邪龍槍は引っ込めない。
「そうか。だったら、さっさと中へ入ってテシアがいる部屋まで案内しろよ」
未だ警戒心を緩める気配を全く見せないエルフェリオンにオグリスは観念したように肩を落とす。
「くっ、ラナリを上手く使ってティクを牛耳ようというわしの野望もここまでか!」
ゴンッ
「ぬがっ!」
「実の娘を道具みたいに使ってんじゃないわよ」
アルナは、愚痴りつつも前を歩くオグリスの後頭部を聖杖で小突く。
「……ぬぅぅぅっ、調子に乗りおってぇぇ……」
アルナを恨めしそうに睨むオグリスだが、それ以上のことをすることができず、諦めて前方に視線を戻す。
「ほれ、この部屋じゃ。さっさと入って勝手に連れて行くがよい! これで文句ないじゃろうが」
オグリスは懐から取り出した鍵を鍵穴に挿し込み、解錠して開ける。
「テシア!!」
ラナリが部屋へと駆け込もうとする。だが、エルフェリオンはそれを手をかざして制止する。
「エルフェリオンさん!?」
エルフェリオンの行動の意味がわからず、困惑した表情をするラナリ。
「そう慌てるなよ」
言いつつ、エルフェリオンは扉脇の壁にもたれかかっていたオグリスの襟首を掴む。
「おいこら、この子供、なにをする!?」
オグリスはエルフェリオンから逃れようとするが、それもうまくいかない。
「なにをするかだって? んなの決まってんだろ。あんたが先に入るんだよ」
エルフェリオンはジタバタと暴れるオグリスを室内へと放り込む。
バンッ
「ひぃぃぃぃやぁぁぁぁっ!!」
エルフェリオンによって投げ込まれた瞬間、足元の床が開いて悲鳴をあげながら落下していくオグリス。
「最低ね、あいつ……」
アルナはオグリスが落下した穴を見つめて呟く。その隣ではラナリが盛大なため息をついていた。
「んじゃ、俺たちも入るとするか」
念の為に警戒しながら、エルフェリオンが先行して部屋へと入る。
「テシア!? どこなの、返事をして!! テシア!!?」
続いてアルナとともに入ってきたラナリは、愛娘の姿がないことに狼狽する。
「これは……」
アルナは壁に貼られた一枚の紙に目を留めて表情を険しくする。
「……ちっ、くだらねぇ罠を張ってたわりに、あっさりとさらわれてるじゃねぇかよ」
アルナの手の中にあるその紙に視線を落としたエルフェリオンが舌打ちする。
《テシアは返してもらう。文句があるならば地下街へ来い。ブルータイガー ルーニアン》
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